3ピースバンドのThe Wisely Brothersが9月29日、東京・新代田FEVERで東名阪ツアー『Captain Sad Tour』のツアーファイナルをおこなった。ツアーは7月17日にリリースされたニューアルバム『Captain Sad』を引っ提げて、9月19日に愛知・名古屋Live & Lounge Vio、20日に大阪・心斎橋CONPASS、29日に東京・新代田FEVERで2(読み:ツー)とSpecial Favorite Musicを迎えて3マンでおこなうというもの。3組による個性豊かなステージで、訪れたオーディエンスを魅了した。ツアーファイナルとなったライブの模様を以下にレポートする。【取材=村上順一】

Special Favorite Music

『Captain Sad Tour』(撮影=松木宏祐)

 8月10日に兵庫・神戸のHOTEL KITANO CLUBで開催されたワークショップで制作されたというモビール(※木片や金属片などを糸や針金でつるし、それらがバランスを保ちながら、微妙に動くようにしたもの)が天井から吊るされ、壁にも装飾物を色々と貼り付けられ、彼女たちの温もりが伝わってくる。

 1組目は7人組バンドのSpecial Favorite Music。一般的なバンド編成に加えて、サックスやバイオリンというリード楽器を追加した編成だ。そこにサポートキーボードを加えた計8人で、カラフルなシティポップサウンドを聴かせてくれる大世帯バンド。

 オープニングを飾った「Magic Hour」から、ラビンユー(Vo)の透明感のある歌声が、幻想的な世界観を作り出し、レイドバックした穏やかな幕開け。

 メンバーそれぞれをフィーチャーしたインストを挟んで、新曲の「Avocado」、グルーヴィーな「Halation」では、久米雄介(Vo, Gt.)もギターを置き、ハンドマイクで身体を弾ませながら歌唱。常に演奏を楽しんでいる、音楽を楽しむ姿勢が随所に表れていた。ポップスからファンキーなサウンドまで幅広い音楽性で楽しませる。

 その曲調の幅広さに一役買っていると思われるのが、Yuta Furukawa(Sax,Flute)のサックスやフルート、haru(Vn)のバイオリンという、ギターだけではないリード楽器の豊富さもこのバンドの武器の一つ。そして、カラーがまったく異なるツインボーカルは、曲によってメインを交代し、一気に表情の違うバンドへと変貌する。

 ダンサブルなアップチューンから「Ceremony」や「Baby Baby」のようなメロウなナンバーまで、親しみやすい楽曲は、初見のオーディエンスをも惹き込んでいく。ラストの「World’ s Magic」まで、洗練されたサウンドでオーディエンスを楽しませた。

セットリスト

01.Magic Hour
02.Avocado
03.Halation
04.Ceremony
05.Royal Memories
06.Baby Baby
07.World’ s Magic

 2はボーカル、ギター、ベース、ドラムとシンプルな4ピース編成で聴かせるロックバンドだ。古舘佑太郎(Vo./Gt.)は「FALL FALL FALL」をエレキギターの弾き語りでライブはスタート。切なさを感じさせる歌が響くなか、そこにメンバーもステージに集結し、バンドサウンドへ流れていくアレンジ。そして、「東狂」や「LOVE FEELS LIKE WAR」などメロウな曲を中心に前半戦を展開。

 The Wisely Brothersとは3年振りの対バンだという。「The Wisely Brothersに引っ張られて、いつもとは違ったオープニングになってしまいました…」と、1曲目の「FALL FALL FALL」の入り方について話す古舘。

 そして、「後半からはいつも通りの2を見せる」と投げかけ、バンドの本性をさらけ出すかのように「ケプラー」を投下。オーバーヒート寸前の盛り上がりを見せたかと思いきや、次に演奏された「Family」で、ギアをまた1段上げ、感情を叩きつけるかのようなサウンドで、オーディエンスを煽情。

 バンドはライブが進むに連れて、荒々しさが増していく。紅一点のyucco(Dr.)のリミットを振り切ったパワフルなドラミングに、オーディエンスも身体を揺らし、アグレッシブなサウンドにボルテージは最高潮。

 ラストはメロディアスな中に激しさが混在する「フォーピース」を届け、衝動的なサウンドとグルーヴを我々に浴びせ、これ以上ない状態でトリのThe Wisely Brothersへとバトンを繋いだ。

セットリスト

01.FALL FALL FALL
02.東狂
03.LOVE FEELS LIKE WAR
04.LUCKY BOY
05.ロボット
06.ケプラー
07.Family
08.ルシファー
09.DAY BY DAY
10.フォーピース

The Wisely Brothers

真舘晴子(撮影=松木宏祐)

 オオトリを務めたのは3ピースバンドのThe Wisely Brothersだ。お馴染みのSEである、Karen O&The Kidsの「All Is Love (Where The Wild Things Are)」に乗って3人がステージに登場。オープニングナンバーとして選んだのは、芳醇なコーラスとR&Bテイストを感じさせる「テーブル」でスタート。この3人でしか出せない、個性的で独特なグルーヴは、心地よい揺らぎを与えてくれる。

 続いて届けられた「ナイトホーク」で真舘晴子(Gt.Vo)は、カウベルでリズムに彩りを加え、カラフルに楽曲の世界観を広げ、バスドラムとベースのコンビネーションに自然と体を揺らしてしまう。

和久利泉(撮影=松木宏祐)

 晴子は「この調子でガンガンやっていくので宜しく!」と投げかければ、和久利泉(Ba.Cho)も晴子の声に応え「オー!」と気合の入った!? 声から「はなればなれピーポーズ」を披露。力強いサビでの歌のユニゾンが印象的に響き、渡辺朱音(Dr.Cho)の軽快なビートも相まって、実に楽しそうに演奏する3人の姿が印象的だった。

 会場にメトロノームの音が鳴り響くなか、チューニングをおこなうメンバー。“少々お待ち下さい”といった雰囲気のなか始まったのは、優雅に空を飛んでいるかのような気持ち、情景を見せてくれた「つばめ」、潔いワンコードで展開していく「イルカの背中」は、サビでミラーボールが青白い光を放ち、視覚的にも幻想的な楽曲の世界観を後押し。楽曲後半に登場するファズ系のギターサウンドが、サイケデリックな空気感を醸し出し、楽曲の2面性を打ち出しているかのようだった。

渡辺朱音(撮影=松木宏祐)

 MCで晴子はチャットモンチーのラストライブの映像を観て、「なぜこんなにも涙が出るのだろう…」と考えたという。その答えとして「大切な連鎖」というものを晴子は感じたという。「苦しみがあっても、自分たちが大切に感じているものを大切にしていれば、きっとこれからも良い音楽が作れるはずと思っています! 地道にちゃんと意思を持って(音楽を)続けて行こうと思うので、これからも音楽で出会いましょう」と、今感じている想いを話した。

 本編ラストの披露されたのは「気球」。表拍で印象的に鳴るギターのシングルノートに、後ろから支える朱音のリズムと泉の低音と、音源とは違った生の躍動感に自然とクラップも起こり、彼女たちらしさ溢れる、ほっこりとした空気感をライブハウスに残し、ステージを後にした。

真舘晴子(撮影=松木宏祐)

 アンコールで披露された「メイプルカナダ」は、緩急をつけたアレンジに、3人が音で会話しているかのような演奏はどこかアットホーム。そんな3人の演奏にオーディエンスの表情も自然と笑顔になる。三位一体のサウンドに酔いしれるなか、ツアー『Captain Sad Tour』は大団円を迎えた。

 アルバム『Captain Sad』を作り、改めて大切なものを再認識。それをツアーで届け、また新しい曲を生み出していく。そんな連鎖を感じさせ、また一つ成長した3人。きっとこのツアーでもまた新たな発見をしたことだろう。次はどんな作品で我々を楽しませてくれるのか。

セットリスト

01.テーブル
02.ナイトホーク
03.はなればなれピーポーズ
04.つばめ
05.イルカの背中
06.River
07.気球

ENCORE

EN1.メイプルカナダ

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