5人組コーラスグループのベイビー・ブーが10月10日、東京・うたごえ喫茶ともしび新宿店でライブをおこなった。彼らが2017年にリリースされたシングル「ごめんね…ありがとう」のカップリングとして収録された「花が咲く日は」が盛り上がりを見せている。彼らがレパートリーを増やすために通うようになった新宿にある老舗、うたごえ喫茶ともしびでは、昨年5月から17カ月連続リクエストランキング1位を獲得。過去にはこのともしびで「千の風になって」が約2年に渡りリクエスト1位という記録があり、それに迫る人気ぶりだ。

ベイビー・ブー(撮影=村上順一)

 1950~60年代に国民的ブームとなった「歌声喫茶」。昭和歌謡、フォークソング、童謡唱歌、シャンソン、ロシアの歌など、様々なジャンルの歌を生の伴奏でみんなで一緒に歌うというもので、歌を愛する人たちが多く集まる場所。

 数々の名曲がある中で、なぜこんなにも「花が咲く日は」が歌声喫茶で歌われるのだろうか。それは、彼らの歌の実力もさることながら、地道な活動と、歌声喫茶のお客さんからのアドバイス、そして、四季折々に咲く花を見る度に大切な人を思い出すという歌詞と、歌いやすいシンプルなメロディというのが取材からわかった。

リクエストランキング(撮影=村上順一)

 歌の実力は由紀さおりの劇場公演に出演したり、川中美幸とデュエット曲をリリースしたり、また、日本を代表する正統派老舗コーラスグループ・ボニージャックスが後継者と認めるなど、それだけでも彼らのスキルの高さはわかる。しかし、そんな彼らも2011年に初めて、このともしびで歌った時は「あなたたちの『ふるさと』では泣けない」とお客さんから言われてしまったという。その言葉から歌を届けることへの意識変化が訪れた。メンバーで話し合い、「どうやったら聴いてくださる方の心に寄り添えるのか、歌の余白を残すようにアレンジしたりなど、8年掛けて学ばせて頂いています」と語る。

 「花が咲く日は」も、このともしびで歌い始めてから、半年ぐらい経ち徐々にリクエストされるようになってきたという。きっかけはともしびが毎年主催するイベント『大うたごえ喫茶』で歌唱したところで、観客1000人と大合唱したところから火がつき始めた。今では17カ月連続リクエストランキング1位を獲得し、地方の歌声喫茶でも、ベイビー・ブーの楽曲とは知らずに歌われるという現象も起きている。この日のステージでも歌唱し、多くの人の心を揺さぶっていた。

うたごえ喫茶ともしび(撮影=村上順一)

 ともしびの店長を務める斉藤氏に「花が咲く日は」がなぜこんなにも、このともしびで支持されるのかを尋ねると、「シニア世代が多いというのもありますが、この曲を聴くと、亡くなった夫や妻を思い出すという方が多いんです」と故人の記憶を呼び戻す力があると語る。ベイビー・ブーのリーダーであるユースケも「この歌を歌うと、祖母のことを思いだします」と、故人に思いを馳せる、歌う人や聴く人の琴線に触れる、叙情歌としての本質が強いこともリクエストに繋がっている。

 メンバーは約2年に渡りともしびでリクエスト1位だった「千の風になって」のように、長く愛され歌われる曲になって欲しいと語る。季節の切り替わる時期は、その季節の名曲たちがランキングを脅かすこともあって、17カ月連続というのも並大抵のことではなし得ない。「千の風になって」は、テノール歌手の秋川雅史がNHK紅白歌合戦に出場し歌唱する以前から、このともしびでは歌われていた1曲。斉藤氏は「花が咲く日は」も「千の風になって」と同じ様な感覚があると語る。

 このうたごえ喫茶ともしびには、昭和の良い雰囲気が存分に堪能出来る。歌集を片手にみんなで歌い、感情を共有するという音楽のあるべき姿の一つがこの空間にはあった。そして、ベイビー・ブーは『大うたごえ喫茶』で1000人で合唱をした感動から、自分たちでもやってみたいと「日本武道館で一万人の大合唱祭を行う」を目標に向かい歌い続ける。2002年のデビューから17年、低迷期もあったという彼らだが、その目標を達成する日もそう遠くはないのではと感じさせてくれた。【取材=村上順一】

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