シンガーソングライター・番匠谷紗衣(ばんじょうや・さえ)が8月21日に、メジャー2枚目となるシングル「自分だけの空」をリリースする。テレビ朝日系ドラマ『科捜研の女』主題歌「こにある光」でメジャーデビューしてから約9カ月。満を持して世に送るのは、朝比奈彩が主演を務めるドラマ『ランウェイ24』(ABCテレビ)エンディングテーマ「自分だけの空」。柔らかみのなかに強さが秘められた彼女の特徴的な歌声が最大限に引き出された曲だ。去る4月、関係者を集めておこなわれたレコード会社のコンベンションに出演した。手を震わせながらも気迫溢れる歌声を轟かせ大喝采を浴びた。真っすぐな歌声が心に伝わった瞬間でもあった。そんな彼女が送る今作。どのような思いで歌ったのか。【取材・撮影=木村陽仁】
メジャーデビューして変わった意識
――昨年12月に「ここにある光」(作詞=番匠谷紗衣・高橋久美子/作曲=番匠谷紗衣・トオミヨウ)でメジャーデビューしてからのこれまで、どのように過ごしてきましたか?
今回のシングルに向けて曲を書いていました。それと、毎日のようにランニングして(笑)。
――体力づくりにも精を出されていたんですね。デビューをして気持ちの変化はありましたか?
プロとして音楽をやっていく、ということについてすごく考えました。考えが甘かったところや、今まで出来ていなかったことを見つめる期間でもあって。私が書く曲はいつも暗かったりするけど、できるだけ爽やかな曲、明るくポップな曲を書けるようになりたいという意識も強くなっていて。なので、今回の「自分だけの空」(作詞=番匠谷紗衣・高橋久美子/作曲=Carlos K.・Kana Kurimoto・Hayakawa Hirotaka)が、爽やかでキラキラ感のある曲に仕上がって本当に嬉しいなと思っています。
――番匠谷さんは体験したことや思ったことを曲に落とし込むタイプなので、表現の幅が広がったとも言えそうですね。この期間中に自身が書いた曲もあった?
書いていました! 「幸せのなかで」という曲で、今回のカップリングに入ります。そもそも私が、作詞・作曲をやるようになったのは友人がきっかけで。私もそうなんですけど、その友人は「幸せになっていいのかな」と不安になることがあって…、幸せになりきれないというか。でもその友人に好きな人が出来て、会ったときに本当に幸せそうだったんです。その姿を見て「幸せになるって素晴らしいことなんだな」と心から思えて。その時に書いたのが、ラブソングのこの曲でした。
――となると「自分だけの空」と同じく明るい曲なんですね。お話だけでも番匠谷さんの変化を感じます。
色んな人に歌ってもらいたいと思っています!
――ところで、前回の「ここにある光」、そして今回の「自分だけの空」でも元チャットモンチーの高橋久美子さんが作詞を共作されていますよね。高橋さんから学んだことはありましたか?
たくさんあります。もう学ぶことだらけで(笑)。高橋さんの歌詞は本当に好きで、本もよく読んでいます。高橋さんは、自分たちが忘れていた気持ちというか「そんなことを考えていたな…」ということを大事にされていて。いつも、人とは違う視点で物事を見て、感じていて。普段話しているときもそれはすごく感じるんです。一緒に歌詞を書かせて頂くときも、私が普段いかに感じ切れていないなということを痛感しますし、「そう感じているんだ」ということに気付けたりもするから、そこが一番大きいと思います。
――観察力というか、感受性というか、高橋さんは「人が気付けていない視点」を持っているということですね。
はい。例えば、小さい頃に感じていたこととかを、高橋さんは当たり前のように覚えていて、そこがすごいなと思うんです。だいたいは当時の記憶や感情は忘れているはずだと思うんですけど、そこをしっかりと覚えている。この間も「捨てられない物展」というのをやっていて、小学校のときに使っていた物を「こういう気持ちで使ってたな~」とその時に抱いていた感情をすんなりと思い出されていて。鉛筆ひとつにしても、「小学校のときはこういう思いで鉛筆を使っていたな」とか。色んな感情をちゃんと心に残されていて。
――それはすごいですね。大人というのは、仕事などでも冷静な判断が求められるから、感情を捨てなきゃいけないこともありますからね。
それはわかります! 私も感情を捨てることで、気持ちを抑える作業は前より上手くなったなと思う時もあります。
――ただ、番匠谷さんの場合は、その感情を曲で消化させていますよね?
そうなんです。抑えることができないときは曲にするしかなくて。特にライブではそれが出ます。