シンガーソングライターのNakamuraEmiが6月18日、Zepp DiverCity Tokyoで全国ツアー『NakamuraEmi NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.6 ~Release Tour 2019~』のファイナル公演をおこなった。ツアーは2月にリリースされたメジャー通算4枚目となるアルバム『NakamuraEmi NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.6』(以下Vol.6)を引っさげて、3月29日の札幌PENNY LANE 24を皮切りに5月22日・金沢vanvanV4までをカサリンチュの朝光介とカワムラヒロシの3人で回ったAcoustic公演、6月11日の愛知・DIAMOND HALLからZepp DiverCity TokyoまでをBand公演とスタイルを変えて全24公演おこなうというもの。ファイナルは『Vol.6』全曲に加え「YAMABIKO」や「モチベーション」などアンコール含め全15曲を歌唱。そのライブの模様を以下にレポートする。【取材=村上順一】

23カ所でもらったパワーを東京の皆さんに

NakamuraEmi(撮影=Daisuke Miyashita)

 沢山の人の温もりを感じてきたであろう、ここまで全国23本を回ってきたツアーもついにファイナルを迎えた。女性というテーマに回顧したアルバムの集大成、自身最大規模となったこのステージでどんな歌を響かせてくれるのだろうか。間もなくの開演に向け期待感に満ちた会場の空気感も心地よい。

 会場が暗転しSEが流れる中、まずはサポートメンバーがスタンバイ。そのメンバーには彼女のプロデューサーでもあるカワムラヒロシ(Gt)を筆頭に、Yasei Collectiveの中西道彦(Ba)、MISIAのサポートメンバーでもあるTOMO KANNO(Dr)、パーカションにあいみょんのサポートドラマーとしても活躍する大塚雄士(Perc)と豪華なメンツだ。

 そして、ジョン・カビラによる影アナウンスが高揚感を煽るなか、本日の主役であるNakamuraEmiが赤いツナギ姿で登場し、オープニングを飾ったのは「Don’t」だ。歌が乗った瞬間に感じるエナジーは過去の公演を凌駕するものだった。一瞬にして自身の世界観を構築し、引き込んでしまう、そんな感覚すらあった。

 ライブではその曲のエピソードを話してくれるのも楽しみの一つ。「雨のように泣いてやれ」の制作背景を話す。彼女は昨年出演したフェスで雨女の本領を発揮し、土砂降りの中でパフォーマンスし、そこで見た観客の笑顔や涙する姿が印象的で、「雨女の私も悪くないな」と思い、この曲が書けたという。こういったエピソードを聞いてから曲を聴くと、よりリアルな歌となって心に響いてくる。

ライブの模様(撮影=Daisuke Miyashita)

 「23カ所でもらったパワーを東京の皆さんに撒き散らしていきたいと思います!」と気合いも漲るMCから、人と人との温もりを感じさせてくれる「おむかい」、そして、幼稚園の先生を経験し、子ども好きのNakamuraEmiらしい母性を感じさせた一曲「いつかお母さんになれたら」は、未だ見ぬ自分の息子へ宛てた手紙を読むセクションはグッと来るものがあった。さらに人と人との関係性を考えさせてくる「めしあがれ」。家族、大切な人への思いを歌ったこの曲を、観客も静かに彼女の感情、想いを受け止めるかのように耳を傾けていた。

 「自分にパワーを与えてくれる皆さんに私が何かを返せるとしたら、みんなが応援をしてくれる自分をまず大事にするところからやってみよう」と出来た1曲「甘っちょろい私が目に染みて」は、まだ自分を認めてあげることは出来ないと話したが、彼女にとっては大きな一歩となった曲。哀愁漂う演奏のなかで儚く伸びていく歌声と、NakamuraEmiが奏でたグロッケンの音色は心の深淵を表現するかのようだった。

 続いて、音楽を仕事にすることへの不安を感じていた時に観た竹原ピストルのステージに、メジャーへの背中を押してもらったエピソードからの「痛ぇ」は、竹原ピストルへのリスペクトと感謝に溢れた歌声に観客も拍手喝采だった。

頑張る皆さんの生活の側に、相棒のように...

ライブの模様(撮影=Daisuke Miyashita)

 ライブも後半戦へ突入。5月29日にリリースされた新曲の「ばけもの」を披露。小媒体のインタビューで「女性は切り替えが早い“ばけもの”」と語ってくれた、“NakamuraEmiらしさ”が溢れた1曲。パーカッションの大塚はエレキギターとシンセサイザーを巧みに使い分け、楽曲を鮮やかに彩り、NakamuraEmiもシェイカーを手に、ノリノリで歌い上げていく。

 パワフルに自身を奮い立たせながらも、我々をも鼓舞してくれる1曲「かかってこいよ」では、コール&レスポンスとライブならではの楽しみ方で展開。「東京、かかってこいよ! もっともっと!!」と観客を煽情するNakamuraEmiの姿は今までとは一味違い、フェスやツアーで培ったスキルが存分に出ていた。その自信に満ち溢れ堂々とした歌声とパフォーマンスは、新たなフェーズに彼女が突入したことを感じさせてくれた。

 女の友情はハムより薄いと言われる世の中の定説を<そうでもねーよ 捨てたもんじゃねーよ>と、一蹴する「女の友情」は、“女の歌”を歌い続けてきた彼女だからこそ、より響くのではないかと思わせるパフォーマンス。NakamuraEmiは鍵盤ハーモニカ、シェイカー、タンバリンと、様々な楽器をセクションによって使い分けていたのも印象的だった。

NakamuraEmi(撮影=Daisuke Miyashita)

 本編ラストはカワムラの乾いたギターカッティングが響くなか、「初めてのZepp DiverCityでのワンマン、皆さん、私をこのステージに連れてきてくれてありがとうございます!」と感謝を告げ、代表曲の「YAMABIKO」を熱唱。ステージから放たれたエネルギーは、まさに“やまびこ”のように観客に響き、そのエネルギーを再びステージに押し戻して行くような感覚のなか本編を終了した。

 アンコールに応え、再びステージにNakamuraEmiとサポートメンバーが登場し、ここまで支えてくれた人たちへの感謝を述べ「自分に対しての歌ばかりになってしまうとは思うんですけど、これからも色んな経験をして、頑張る皆さんの生活の側に、“相棒”のようになれるよう頑張っていきますので、また応援しに来て下さい」と語り、一際ファンキーで、サポートメンバーによる粋なセッションバトルも見れた「モチベーション」、ラストはNakamuraEmiが客席に降り、フロアの中央で観客とシンガロングした「相棒」の2曲を披露しツアーは大団円を迎えた。

 終わってみればあっという間の約2時間。確実に進化を感じさせたパフォーマンスで、多くの観客の心を満たした。ものんくるとのツーマン『モン・ジャポニスモ vol.1』や、安藤裕子と回る『QUATTRO MIRAGE presents「TOUR MIRAGE 2019」』も決定。どのようなステージを下半期で見せてくれるのか期待が高まる。

セットリスト

『NakamuraEmi NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.6 ~Release Tour 2019~』
6月18日@Zepp DiverCity Tokyo

01.Don’t
02.大人の言うことを聞け
03.バカか私は
04.雨のように泣いてやれ
05.おむかい
06.いつかお母さんになれたら
07.めしあがれ
08.甘っちょろい私が目に染みて
09.痛ぇ
10.ばけもの
11.かかってこいよ
12.女の友情
13.YAMABIKO

ENCORE

EN1.モチベーション
EN2.相棒

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