ビッケブランカ「随所にこだわりを持って作る」妥協しない音楽制作の裏側
INTERVIEW

ビッケブランカ「随所にこだわりを持って作る」妥協しない音楽制作の裏側


記者:小池直也

撮影:

掲載:19年06月12日

読了時間:約12分

リミックスで見える、楽曲の新しい世界

ビッケブランカ

――カップリングの「Lucky Ending」は、TVアニメ『フルーツバスケット』のエンディングテーマですね。アニメといえば以前『ブラッククローバー』の主題歌「Black Rover」の制作について、アニメの世界観にひたすら寄せた、というお話が印象に残っています。今回はいかがですか?

 『ブラッククローバー』と同じく、この曲もエンディングテーマを書いてください、という依頼を頂いて制作しました。もともと原作が好きだったんですよ。なので僕にしかできない曲ができるだろうな、とは思っていました。その作品の世界観を知ろうとする必要がないですし、さらっと書くことができました。純度も高いし、自分の思い出もあるので、いい感じになったと思います。

 『フルーツバスケット』はただの少女漫画じゃないんですよ。そもそも恋愛がテーマではないですから。確かに恋愛が基軸にはなっていますけど、結局心に残るのはそれじゃない。「人生とは?」という、あれはハリーポッターというか、バイブルみたいなファンタジーですよ。伏線の回収も段違い。読んでない人とは語れないよねえ(笑)。あれは女の子だけが読むべきものじゃなくて、全人類が読むべきものだと思っています。だからこそ、翻訳されて世界で人気なのかなと。人間に刺さるものだから、生半可じゃない。

 物語はずっと平和なんですよ。平和のなかにある心の機微なので。だからサウンドが主張する感じじゃないなとはイメージしていました。3拍子は日本人にとっては非日常なリズムです。国内では俳句とか短歌くらいで、僕たちのDNAのなかに3拍子はないんです。『フルーツバスケット』も日本が舞台なんですけど、明らかにファンタジーが入っていて、そんな作品の微妙な違和感を表現するために3拍子にたどり着きました。歌詞は作品のメッセージと、僕がそれを読んで一番リンクする部分をピックアップして作ったんです。

――想い入れのある作品に音楽をつけるというのは、どんな気持ちなんですか。

 お話が来たときは率直に嬉しかったです。「自分でよかった」と思いました。そういう意味で「『フルーツバスケット』のアニメが素晴らしいものになるな」と。

――これがもしオープニング曲だったら、また曲は変わっていた?

 まあ、変わりうるでしょうね。めちゃめちゃアップテンポということはないと思います。本当に心が温まって、突き動かされる話だし、心で読むマンガですから(笑)。ロック感とか、戦う、負けない、ライバルということではないじゃないですか。だからオープニングでも優しい曲にはなったでしょうね。

――シングルにはもう一曲、昨年のシングル曲「ウララ(acoustic ver.)」が収録されています。楽器の構成がシンプルになった代わりに、コードの付け方が変わっていたり、細部に違いがありました。

 リリースの時期に歌が合っているし、もともとリミックスやアコースティックバージョンを作るのが好きなんです。ボーカルデータや楽器データを見つめて作るのって、座りながら本当に色々な景色が見えてくるんですよ。好きなように作れますからね。「夏の夢」だったら、EDMでリミックスしてみたりして。

 「ウララ」はただ楽器を減らしただけだとつまらないので、構成を変えてみたり、展開させてみたり、本来最後のサビの前で歌っていた部分の歌詞を最後に持ってきたり。それから2番のBメロに原曲にはない歌詞を入れたり、という遊びを入れました。リミックスの様な感じですね。曲の違う表情を見てもらいたい、メッセージの伝え方を変えることで違う側面を見てほしいという狙いでした。

――もしアコースティックじゃなかったら、どういうアレンジにしたと思います?

 僕の得意なエレクトロ・リミックスですかね。もともと生楽器で録っている「ウララ」だけど、4つ打ちのキックが鳴って、ライザーで広がって、サビでバーンみたいなものも考えてました。そういうアイデアはたまっているので、次のアルバムでは使えるかなと思っています。でもシングルではあえてサウンドで魅せるのではなく、メッセージをどう伝えるのかと考えて、この形にしました。

 楽器はもとのデータを活かしていますが、歌の新しい歌詞の部分は新しく録りましたね。冒頭の「Oh,my!」の部分はオリジナルだと完璧な口笛なんですけど、アコースティック版は口笛が吹けなくて、ちょっと恥ずかしそうな「Oh,my…」になっています。失敗したときのテイクみたいなノリなんですよ。

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