4人組ロックバンドのパノラマパナマタウンが5月18日、東京・恵比寿LIQUIDROOMで全国ツアー『1st full album "情熱とユーモア" release tour「HUMAN PARTY」』のファイナル公演をおこなった。ツアーは2月にリリースされた1stフルアルバム『情熱とユーモア』を引っさげて、3月21日の千葉LOOKを皮切りに9公演をおこなうというもの。ニューアルバム曲を中心に、19日の0時に配信リリースされた新曲「ずっとマイペース」など、アンコール含め全22曲を熱演。さらに進化したパノラマパナマタウン・サウンドで席巻したライブの模様を以下にレポートする。【取材=村上順一】

俺らにしか出来ない音楽を

岩渕想太(撮影=Atsuko Tanaka)

 1stフルアルバムをリリースし勢いに乗っているパノラマパナマタウン。全国9カ所を回ってきたツアーもついにファイナルを迎えた。そんな彼らがどのようなステージを見せてくれるのか、まもなく開演される「HUMAN PARTY」を待ちわびるオーディエンスの姿。「熱狂」から「情熱とユーモア」へとバンドのキーワードが変化し、よりピントがあったステージになることが容易に想像できる。というのも彼らは常に進化し続けてきたからだ。

 ライブはアルバム『情熱とユーモア』でもオープニングを飾る「Top of the Head」で幕は開けた。音を出した瞬間から、今バンドがすごく良い状態にあるのがわかる演奏だ。続いての「$UJI」でみせたパノラマパナマタウンの勢いに、早くもヒートアップした盛り上がりを見せていた。

 アルバムに収録された曲たちは最新の彼らなのは勿論だが、過去にリリースされた曲たちの変化も感じさせてくれたのが印象的だった。3曲目に披露した「Gaffe」はよりグルーヴが進化し、体を動かさずにはいられないビートを叩き出し、ライブならではの音圧も相まって心地よいゆらぎを与えてくれた。「変なやつが一番かっこいい」と岩渕想太(Vo、Gt)の言葉から始まった「Sick Boy」は1分59秒という曲尺で、伝えたいことを凝縮し無駄を削ぎ落としたナンバーで一体感を強めていく。

浪越康平(撮影=Atsuko Tanaka)

 MCでは恵比寿LIQUIDROOMをソールドアウト出来なかったことの悔しさを語り、岩渕は「それでも、誰にも負けねえ、LIQUIDROOMを作りたい」と意気込みを見せた。そして、初の全国をワンマンで周り、こんなにも待っていてくれる人がいたことを実感したという。さらに岩渕は「大勢いるけど、一人ひとりの思いがあって今日が出来ていると思います。どんなに人数が増えても一人ひとりに伝えるためにやってきたので最後まで宜しくお願いします」と思いを語った。

 ライブは中盤戦へ。人の裏側というのが大事だと「月の裏側」を披露。シンセサイザーを使用したニューウェーブ色の強いロックサウンドで、また新たな世界観、パノラマパナマタウンの“裏側”を見せられたような感覚。そして、岩渕の歌が情景を鮮明に映し出した「真夜中の虹」ではエンディングでの浪越康平(Gt)によるロングギターソロが華を添える。

 「俺にしか歌えない歌を歌い続けたい、俺らにしか出来ない音楽を作り続けたい――」この言葉の背景には岩渕の父が作る餅を例に上げ、その思いを語った。安くて便利なものも素晴らしい、だが、そうではないものに惹かれる自分がいる。父が作る唯一無二の餅のような音楽、歌を届けていきたいと信念を伝えた。「みんなも誰に言われたからではない、今日この場所を選んだ選択、交わらないかもしれないけど、俺らとみんなが交わる可能性がある日だと思っています。そんな人生の交差点、そういう日にしたい。お互いの選択が間違ってなかったと思える夜に――」と「Waterfront」、「Who am I ???」とアルバムの中でも繋がりの強い2曲を演奏しライブは後半戦へ。

新曲「ずっとマイペース」を披露

タノアキヒコ(撮影=Atsuko Tanaka)

 岩渕からのアイロニックなメッセージが詰まった「distopia」から情熱的な歌と演奏で熱狂の渦を作り出した「くだらnation」へと流れ込んだ。ライブが進んでいくにつれ、その渦がどんどん大きくなっていくのが感じられた。ここで、ツアータイトルにもなっている「HUMAN PARTY」について説明。それぞれの考え方や想いを肯定したい、という想いからつけられた言葉だという。

 岩渕は「(ライブに)初めてきた人は俺が誰だかわからないと思うんです…」と投げかけ、自己紹介ソング「PPT」へ。田村夢希(Dr)による王道のロックンロールのリズムに合わせ、オーディエンスもクラップで<相当ヤバいぜ>と一体感を作り上げ、身体を揺さぶりかけるグルーヴィなナンバー「リバティーリバティー」で、岩渕は「自分のやりたいように!」とオーディエンスを煽り、ライブもラストスパートへ。

 それぞれの思いが交差するなか、田村の威勢のよいカウントから「フカンショウ」を投下。「これはみんなの歌だぜ!」と岩渕が叫ぶ。ステージもフロアもリミッターを外し、爆発的な盛り上がりを見せた。

 本編ラストはこのアルバムの中でも重要な1曲「めちゃめちゃ生きてる」。何となく生きるのではなく、自分の意志で考えて生きていく、それをこのタイトルに集約したナンバーは、彼ららしい一筋縄ではいかない、まさにオルタナティブな1曲。その起伏のあるアレンジは人生にも置き換えられるような、パノラマパナマタウンの一つの集大成を見せてくれた。

田村夢希(撮影=Atsuko Tanaka)

 アンコールでは「パノパナパパラッチ」と題し、撮影OKという太っ腹企画。オーディエンスもスマホを掲げ、会場全体がパパラッチ化した空間で届けられたのは「世界最後になる歌は」。この曲は結成当初に出来た、彼らにとっても思い入れのある最高にファンキーなナンバーだ。ブレイク部分では「パパラッチ」と化したオーディエンスの熱量高い視線が岩渕の一挙一動に集められ、フロアは特別な雰囲気に包まれた。

 そして、ここで19日の0時より配信リリースされた新曲「ずっとマイペース」を初披露。今を詰め込んだという新曲は何とも岩渕らしさのでたタイトルで、タノアキヒコ(Ba)が作曲したことによりまた新たな血がバンドに注ぎ込まれた。タノによるバキバキのスラップ奏法、田村のホイッスルもアクセントとなり、サビのキャッチーなメロディが耳に残る。

 「この時間、この場所を選んでくれてありがとうございました!」と、ラストは「いい趣味してるね」を演奏。なりふり構わぬ全霊のパフォーマンスにボルテージも最高潮のなか『1st full album "情熱とユーモア" release tour「HUMAN PARTY」』の幕は閉じた。BGMが流れても再びアンコールを求める手拍子が起こり、まだまだもっと聴きたいというエネルギーに会場は満ち溢れていた。

パノラマパナマタウン(撮影=Atsuko Tanaka)

 昨年開催された自主企画イベント『パノラマパナマタウン presents「渦:渦」』を、9月21日に大阪、27日に東京で開催することを発表し、ワンマン全国ツアーを経て成長した4人が次に目指すもの、”情熱とユーモア”の先が楽しみになったステージだった。

セットリスト

1st full album "情熱とユーモア" release tour「HUMAN PARTY」
5月18日@東京・恵比寿LIQUIDROOM

01.Top of the Head
02.$UJI
03.Gaffe
04.マジカルケミカル
05.SHINKAICHI
06.Sick Boy
07.月の裏側
08.シェルター
09.真夜中の虹
10.Waterfront
11.Who am I ???
12.distopia
13.くだらnation
14.PPT
15.リバティーリバティー
16.ロールプレイング
17.フカンショウ
18.MOMO
19.めちゃめちゃ生きてる

ENCORE

EN1.世界最後になる歌は
EN2.ずっとマイペース
EN3.いい趣味してるね

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