競争心が生まれることもある音楽
――色んなものを連想していったんですね。さて、「ヤンシュヴァイクマイエルの午後」というタイトルなのですが、これは?
本当はヤン・シュヴァンクマイエルという映画監督のことで、僕が昔、間違えて覚えていまして。敢えてその間違えたままをタイトルにしました。彼はクレイアニメも作っているんですけど、『ピングー』(スイス発祥のクレイアニメ)のような可愛いのを想像していて、実際に観たらけっこうアバンギャルドな感じだったのでびっくりしました(笑)。それがすごく印象に残っていて。
――衝撃的な出来事だったんですね。
ヤン・シュヴァンクマイエルはそういう感じの作品だったけど、僕が間違えて覚えていた、ヤンシュヴァイクマイエルは最初にイメージしていた可愛い作品を作る、パラレルワールドのような世界もあるかも知れないと思って。その思いが捨てきれなくて、このタイトルにしました。正解じゃないものへの愛情を表現しています。
――そして、次の「風見鶏の髪飾り」は何を表現されたのですか。
「CRACK」と「風見鶏の髪飾り」は午後の時間帯を担当している曲ということもあって、労働というのがテーマにありました。歌詞の中の女の子も働いていて。というのも、自分が働いていた場所から、風見鶏を屋根に飾っている家が見えたんです。それが夜になるとライトアップされてすごく綺麗で。それを見ていつもがんばろうと勇気付けられてました。
――ご自身が見たものも反映されているんですね。さて、来年2月17日からツアーもスタートしますが、タイトルが『end of the day tour』と寂しさも感じさせますね。アルバムタイトル候補でもありましたが。
先程、輪廻転生というキーワードが出ましたが、このアルバムのテーマの中に生まれ変わるというのがあります。。「BEAUTIFUL DAY」に風見鶏が出てきていて、再び「風見鶏の髪飾り」で登場するのですが、「BEAUTIFUL DAY」で登場する風見鶏が折れて、「風見鶏の髪飾り」で女の子の髪飾りとなって復活する、一度死んだことによって、新たに届くこともあるというものなんです。それが良いことなのかはわからないんですけど、死と再生に繋がるんじゃないかなと思いました。このライブも終わってしまうと寂しいわけで、でも、終わりは明日へ繋がるものだと思っていて。1日をしっかりと終わらせることが次の日の希望になるなと思って。自分の中でENDって言葉は割とポジティブに捉えていて。
――考え方次第で変わりますよね。ツアーファイナルは恵比寿リキッドルームですが、どんなライブにしたいですか。
そうですね、絶対にライブに来た方が良いと思えるライブにしたいです。観に来なかった人たちが後悔するようなライブにしたい。みんなに素晴らしいものをお見せできたらいいなと思います。ステージでは鬼気迫るところもお見せしたいです。
――最後に古川さんにとって音楽とはどのような存在でしょうか。
音楽は凄く好きなものなんですけど、好きなだけのものではなくなってしまいましたね。自分からやっているものなので、特別な目で見ています。ただ愛しているだけではなく、時に競争心を駆り立てられる時もあって…。
――競争心ですか?
僕は映画が好きなんですけど、それは楽しいだけなので、悔しいとかそういった感情は生まれないんです。でも、音楽はライバルもいますし、アイツらより良いものをとか、競争心も生まれますから。でも、それって特別な事なんだなと思えて。ただハッピーなだけではない、好きが故に色んな感情が生まれる特別な存在ですね。
(おわり)