4人組ロックバンドのTHE PINBALLSが3月22日、東京・恵比寿LIQUIDROOMで全国ツアー『end of the days tour』のツアーファイナルをおこなった。ツアーは昨年11月にリリースされたメジャー1stフルアルバム『時の肋骨』を引っさげて、2019年2月17日の千葉LOOKを皮切りに全国10カ所を回るというもの。ロックの神髄とも言える熱いサウンドを終始放ち続け、テンションは天井知らず。トリプルアンコールまで巻きおこったツアーファイナルの模様を以下にレポートする。【取材=村上順一】

俺たちとお前たちで最高のロックンロールを

古川貴之(撮影=白石達也)

 この日のチケットはソールドアウトということもあり、すでに多くのオーディエンスによってフロアは熱気が充満。ライブへの期待感が高まっていくなか開演時刻となり会場は暗転。おなじみのSE、The Sonicsの「Have Love, Will Travel」が流れるなかメンバーがステージに登場。既に気合十分といった表情を見せるなか、1stアルバム『時の肋骨』からインストナンバー「回転する宇宙の卵」で幕は開けた。空間を切り裂くように「蝙蝠と聖レオンハルト」、そして『時の肋骨』から「水兵と黒い犬」と新旧織り交ぜた序盤戦。静から動への爆発力は以前よりもさらに磨きが掛かっていた。ビリビリとしびれるようなロックサウンドをフロアに届けていくTHE PINBALLS。

 森下拓貴(Ba)は「ツアーファイナル、そんなことどうでもいい! 俺たちとお前たちで最高のロックンロールをする日だ!」と意気込みを叫び、「CRACK」へ突入。古川貴之(Vo、Gt)と森下の掛け合いも最高にスリリングに響き、止まることなく「ヤードセールの元老」へと流れ込んでいく。オーディエンスの熱量もどんどん上がり続け、ビートに合わせ腕を振り続ける、そのオーディエンスが一丸となって楽しむ姿はライブの理想形ともいえる景色を映し出していた。

中屋智裕(撮影=白石達也)

 「片目のウィリー」を終え、古川が「この時間だけはオレたちのものだと思います」と話し、「DUSK」を披露。タイトル通り、夕焼けを彷彿とさせるライティングと楽曲の世界観が見事にマッチ。古川は「もっと緊張するかと思ったけど、みんなの顔見てたら全然緊張しなくて楽しい。リラックスしてみんなと音楽を楽しんでいる感じがします」と嬉しい言葉に続いて披露されたのは、穏やかな風を運んできたアルバムの中でもメロウなナンバー「ヤンシュヴァイクマイエルの午後」。中屋智裕(Gt)のスライドバーを使用したギターフレーズがスパイスとなり、オーディエンスもクラップで一体感を演出。サウンドだけでなく視覚でも盛り立てる。激しいだけではない彼らの一面を見せてくれた。

 森下は「一緒に美しい日を楽しんでいこうぜ!」と投げかけ「風見鶏の髪飾り」へ。カントリー風ナンバーでフロアにいるオーディエンスの身体を揺さぶり掛ける。間奏ではクラップが響くなか古川は「この瞬間をハッピーエンドに変えたいんだ! 一緒に笑いの国へ行こう」と投げかけ、よりアドレナリンを放出させた空間を作り上げていく。

 古川は「みんながここにいてくれることが嬉しい。一人ひとりに向けて、俺とお前しかいないと思えるような歌を歌いにきました」と「失われた宇宙」へ。激しいサウンドの中に浮かび上がる古川のエモーショナルな歌声。その熱い歌声をオーディエンスもしっかりと受け止めていく。森下が「LIQUIDROOM全力でCOME ON!!」と煽り「COME ON」で、オーディエンスの熱気によって温度の上昇を感じさせ、それに応えるかのようなパフォーマンスを見せた。

自主企画ライブをおこなうことを発表

森下拓貴(撮影=白石達也)

 森下は「これがTHE PINBALLSの全てだ!」と叫び「アダムの肋骨」へ。印象的なギターリフ、アグレッシブなビートがリミットを外し、フロアもステージ上もヒートアップしていく。メンバーのテンションもピークに達してきたところで「carnival come」で、それぞれのメンバーによるソロをフィーチャー。それぞれの“個のパワー”が反映されたソロ回しで、石原天(Dr)のダイナミックなドラムサウンドか感情を揺さぶり、森下のベースの豊かな低音に体を震わせ、中屋は恒例の客席へダイブ。普段のライブハウスよりもフロアまでの距離はあったが、そんなことはお構いなし。中屋はクラウドサーフをしながら、アグレッシブなリードサウンドを響かせていく。

 古川は「みんなのおかげでまだ見たことがない景色が見れました!」と語り、本編ラストはアルバムでも最後を飾る「銀河の風」。壮大なスケール感を放ち、宇宙のように無限に広がるバンドの可能性を感じさせてくれるエモーショナルな一曲だ。言葉を噛みしめるように歌い上げる古川。心を開放してくれるかのような歌とサウンドを浴び、ギターがフィードバックするなか、メンバーはステージを後にした。

石原天(撮影=白石達也)

 アンコールを求める手拍子。再びステージにメンバーが登場。古川は「ソールドアウトしたけど、これがゴールじゃなくて、もっともっと楽しいことが始まる、もっともっとロックンロールをやっていきたい」と、7月12日に東京・新宿LOFTで自主企画ライブ『THE PINBALLS presents “WIZARD”』をおこなうことを発表。嬉しい報告からその気持ちを曲にぶつけるかのように「Voo Doo」を披露。心地よいビートに乗ってオーディエンスもさらに高く体を弾ませた。

 細胞と細胞、感情と感情のぶつかり合いをみせてくれた「Lightning strikes」へ。雷鳴のような轟音で会場を席巻。彼らにしか出せない衝動的なナンバーを浴びせ、会場のボルテージは最高潮まで高まった。

 ダブルアンコールに応え再びステージにメンバーが登場。古川は「まだまだ叫び足りねえ。俺がラジオから聴いた衝撃を届ける!」と「アンテナ」を投下。全霊のパフォーマンスでオーディエンスを扇情。BGMが流れても、鳴り止まない手拍子。「アンテナ」でオーディエンスの導火線に火を付けてしまったよう。トリプルアンコールに応える古川は「今この瞬間を燃え上がろうぜ! 真夏のように…」と「真夏のシューメイカー」を演奏。やりたいように自由に表現する4人。なりふり構わぬスタンスはここにいるオーディエンスの心に何かを刻んだのではないだろうか。森下は「悔いはありません、また会えるように頑張るから」と笑顔をみせ、最高の1日を作り上げた、ツアーファイナルとなった。

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