4人組ロックバンドのTHE PINBALLSが7月20日、東京・TSUTAYA O-WESTで全国ツアー『THE PINBALLS“Leap with Lightnings tour”』のツアーファイナル公演をおこなった。4月25日にリリースした1stシングル「Primal Three」を引っさげて全国15カ所を廻るというもの。ライブは「片目のウィリー」や「Lightning strikes」、「十匹の熊(テンベア)」などダブルアンコール含め全20曲を披露。ロックの衝動をそのままぶつけたかのような、熱狂的なサウンドでオーディエンスを魅了した。【取材=村上順一】

「ただいま」という感じがしています

THE PINBALLS(撮影=白石達也)

 チケットはソールドアウト、多くのオーディエンスでフロアは埋め尽くされていた。開演時刻になり流れていたBGMがクレッシェンドしていくと、会場は暗転。歓声が響き渡る中、メンバーがステージに登場。古川貴之(Vo.)はその歓声に応えるかのように腕を掲げ、「片目のウィリー」でツアーファイナルの幕は開けた。ここまで全国をロードしてきた全てを序盤からぶつけていく4人。ロックの衝動を叩きつけるかのような熱い演奏にオーディエンスも腕を振り上げ盛り上がった。石原天(Dr.)の歯切れのある心地良いビートに、森下拓貴(Ba.)のゴリゴリした歪みが絡み合う「アンテナ」へ。そこに空間を引き裂くようなソリッドな中屋智裕(Gt.)のギターサウンドで魅了する。

 「俺たちのツアーがあって、みんながいたからこんなに夏が熱くなったんじゃないかな」とこの夏にぴったりの「真夏のシューメイカー」を浴びせる。その熱いサウンドにクラウドサーフィングも起こる盛り上がりをみせた。そして、暗闇を照らし出すような演奏と歌を放った「20世紀のメロディ」。そのキャッチーなメロディは一度聞いただけでも忘れない存在感を放っていた。

 「『ただいま』という感じがしています。ライブハウスにいるみんなのおかげで帰ってきた感覚がある」と今の感情を吐露する古川。その古川はギターを置き、歌に専念しエモーションをぶつけた「299792458」を披露。そして、満員のオーディエンスを前に「こんな夢なら覚めたくない…」と述べ「沈んだ塔」、続いて「カルタゴ滅ぶべし」とどっしりとしたサウンドで席巻していった。

 オーディエンスからの「古川〜」の呼び声に即座に反応する古川。そんなサービス精神旺盛な古川はソールドアウトした喜びと「一人一人が観に来ようとしてくれるパワーが好きなんです。みんなに届けたい。ここにいる一人ひとりに歌いたいと思います」と「ひとりぼっちのジョージ」を届ける。その歌からは古川の人間性が存分に出ていた。そして、ケルト音楽を彷彿とさせるギターフレーズが印象的な「重さのない虹」では古川が「みんなで飛び跳ねようぜ!俺はただ楽しみたいだけなんだ」とその軽快なビートに身を委ね体を弾ませ楽しむ。

今日ほど最高な日は知らない

THE PINBALLS(撮影=白石達也)

 「今日ほど最高な日は知らない。一緒に雷に打たれようぜ!」とシングル「Lightning strikes」へ突入。電光石火の切れ味鋭いサウンドで会場のボルテージは最高潮。ライブはラストスパートへ突入。「お前ら本当に最高だよ。人生で一番熱くなった日だ。もっともっと熱くなろうぜ!」と投げかけ「carnival come」。メンバー紹介では各々の熱い演奏を見せる。古川は「俺の魂を受け止めてくれ!」と投げかけ、中屋はオーディエンスに支えられながらギターソロを掻きむしるるように弾きたおす。続いての「七転八倒のブルース」では何度でも立ち上がる力強さをサウンドで示し、ラストは「蝙蝠と聖レオンハルト」は冷静と情熱の間のようなクールで衝動的なサウンドでヒートアップさせ本編をあっという間に駆け抜けた。

 アンコールでは、「みんなのおかげでどんどん音楽が楽しくなってきている。いっぱい曲が書けている」と順調な活動を嬉しそうに伝える古川に歓声が上がった。ここでアンコールの準備が整い、怪しい曲のつもりで作っていたが、最後の希望へ向かうところがライブでやって良かったと思える曲になったという「Primal Three」に収録されている「花いづる森」を披露。勢いだけじゃない、バンドの世界観を強く打ち出したナンバーで物語の中に引き込んでいく。ギターの絡みが心地よい「十匹の熊(テンベア)」では、エンディングに進むにつれステージとフロアのエネルギーがぶつかり合うかのようなライブならではの光景が広がった。

 メンバーがステージを去ったあとも鳴り止まない手拍子。待たすことなく登場する古川。石原はこのアンコールの光景に「生きてて良かった」としみじみ話すと古川も「(みんなの前では)あまり飾らなくいられるのが嬉しい」とこぼす。ダブルアンコールに応え届けられたのは「サイコ」。全身全霊のパフォーマンスは会場をさらに熱狂の渦に巻き込みながら、ツアーの幕は閉じた。

 ステージを後にするメンバーの顔は充実感に漲っていた。それだけ良いライブが出来た証だろう。オーディエンスももっと聴きたいと帰る様子をみせないほど。それは音楽以外にも人間性を放出したライブ、4人各々の個性がみえたステージで、このツアーの経験を経て、どのような楽曲が生まれ、表現するのかより一層彼らに期待が高まった一夜であった。

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