希望を捨てることが自身の心を成長させた、吉田山田 10周年にかける想い
INTERVIEW

希望を捨てることが自身の心を成長させた、吉田山田 10周年にかける想い


記者:長澤智典

撮影:

掲載:18年10月30日

読了時間:約15分

ライブを全力で届けていくことが何よりも大切

――そういう気持ちにさせたのも、10周年という節目が大きな引き金になったのでしょうか。

吉田結威  それはありました。今から2年前くらいになるのかな。その頃から「そろそろ吉田山田も10周年を迎えるね」という話を2人でし始めていました。僕ら、常に二人三脚で歩み続けるところがあって、何事をおこなうにもけっこう時間を要するんですね。だから、その時から「これから10周年に向けて3枚のアルバムを作ることを決めて、その中で10周年を迎えるに当たっての自分たちなりの答えを描き出そう」という目標を建てました。その第1弾となったのが、昨年リリースしたアルバムの『変身』になります。

――その時点では、3枚の流れも考えていたのでしょうか? それとも、アルバム1枚作るごとに何かを得て、それを次へ向かうための糧にしていく感じ?

吉田結威 『変身』というアルバムを作り上げたからこそ、『欲望』というアルバムが生まれています。なので、次に作るアルバムも『欲望』で得たものを元に、また、その時期に感じた想いを詰め込んでいく形を取るんだろうなとは自分たちでも思っていて。

 今の僕らに大事なのは、1年前に描いていた自分たちの姿よりも、今の自分が描く今現在の自分たちの姿です。でも、それってある種、賭けみたいなもので。その時点で発想が出てこなかったら、もう終わりじゃないですか。でも、僕らはここで終わるつもりもなければ、10周年どころか20周年を迎える時期だって、今のように創作活動を続けていたい気持ちを強く持っています。

 それでも「10周年で音楽を辞めざるを得ない」「それを迎える前に辞めることになるかも知れない」という現実を見据える想いも、気持ちの隅っこには必ずあることです。むしろ、それを意識して動くことでしっかり次の発想が出てくると言うか、そこまで必死に自分たちを追い込まないと出てこない発想も絶対にあるんですね。その発想こそが、今の僕らにはすごく必要なことであり、その意識を抱きながら活動を続けていくことが、今の吉田山田にとって心地好い活動スタイルだなとも思っています。

――そこには、無理やり自分たちを追い込んでいる面もあるのでしょうか?

吉田結威 半分、無理やり自分たちを追い込んでいるところはあります。でも、そうしないとどこかで気を抜いちゃうんですよ。今回おこなったアコースティックツアーに関しても、2人だけで回ってきたので、本当なら、その日の気分次第でセットリストを変えることも出来たんです。「今回、これが上手くいかなかったら次は辞めよう」「次回こそ頑張ろう」となってしまうのは、自分たちの気持ちの持ちようとして違うなというか。「今日が最後のライブ」となったら、次はないわけで。

 それに、その日のライブの内容次第で「吉田山田のライブっていまいちだな」という印象を抱き、もう二度と足を運ばなくなるお客さんたちが出てくる可能性だって実際にあることです。そう考えたら、自分たちの納得のいくセットリストを組み、それを毎回全力で届けていくことが何よりも大切になってくる。そういうプレッシャーのかけ方こそ、今の吉田山田には必要なことだと思い、その意志を貫きながら駆け続けてきました。

 実際、今回のツアー中、天災によってライブが延期になった会場もあります。そういう経験は、僕らは初めてだったし、そのときに改めて「こうやってライブが出来るのって、決して当たり前のことじゃないんだ」という気持ちをリアルに感じさせられました。こうやって長く活動してきた中で、色んなことに慣れが生じれば、上手くこなせるようにもなりました。そこに寄り掛かるのではなく、あえて自分たちへ色んな付加をかけて活動をしていくのが、今の吉田山田のあるべき姿なんだと思います。

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