吉田結威(Gu/Vo)と山田義孝(Vo)からなる二人組アーティストの吉田山田が10月31日、通算6枚目となるアルバム『欲望』をリリース。21日にデビュー10周年イヤーに突入した彼ら。記念すべき日を迎え最初のアクションとなるのが今作で、昨年リリースしたアルバム『変身』から続く3部作の第2弾となる。11月からは今作を引っ提げ、全国ツアー『吉田山田ツアー2018<Band Set>』もスタート。吉田結威が「希望を捨てたことが、僕自身の心をすごく成長させた」と語るように、自身を追い込む中で10年という活動を経て成長した2人の新たな一面を垣間見せる作品となった。2人にこの作品に込めた想いや制作の様子を聞いた。【取材=長澤智典/撮影=村上順一】
欲望こそ前に突き進む大事なエネルギー
――9月1日の群馬・高崎club FLEEZ公演からスタートしたアコースティック全国ツアー『吉田山田ツアー2018<Accoustic Set>』も終了したばかりですが、次は11月からスタートするバンドセットでの全国ワンマンツアー『吉田山田ツアー2018<Band Set>』が始まります。まずは、2人で回ったアコースティックツアーを終えての手応えや想いから聞かせてください。
吉田結威 吉田山田は来年デビュー10周年を迎えます。僕ら自身はいつまでも歌い続けられたらなと思っていますけど、何事も有限なように、いつ最後の作品や最後のライブになるか正直わからなくて、それをリアルに肌で感じてもいます。僕ら自身は、10周年目を迎える今、ここまで歩んできた時間を無駄にはしたくないし、後悔もしたくない。それくらい、自分たち自身とすごく向き合っています。
今回おこなった、アコースティックツアーにおいても、毎回それぞれが自分と向き合いながら歌っていて、自分自身を試し続けてもきました。それこそ、「今日のステージが本当に人生最後の、吉田山田として最後のステージだとしても後悔はないか?」という問いを自分たちに課しながら回り続けていました。それって、集中力も精神力もけっこう使うことなんです。だけど、今の僕らはその気持ちを必要としていたからこそ、そうしてきました。
――そこまで、自身を追い込んでいたとは驚きです。
吉田結威 もちろん、来てくださるお客さんたちと一緒に楽しみたい気持ちもあって、いつも通りのMCもして、みんなで楽しく歌ったりもしてきたんですけど…。それでも、今の僕らの気持ちの中心に毎回あったのが、「このライブを通して、僕らが自分の人生と命を削って何を残せるか」ということでした。その意識を強く持っていたせいか、毎回すごくいいライブが出来て、その想いがしっかりお客さんたちにも届いている実感もありました。それを日々感じ続けてきたからか、「今の僕らが10周年へ向かうべき意志は間違ってない」と確信を持つことも出来ました。
――確かに、物事にはかならず終わりはあります。しかし、今の吉田山田の場合、そこまで突き詰めなくとも10周年を迎えられて、まだまだ歌い続けられると思っていました。だけどメンバー自身は、そうではなかった?
山田義孝 長い人生設計を考えたとき、僕らまだまだ満足はしてないんですよ。むしろ、「自分たちはまだ何も成し得てない」という気持ちがいつも心のどっかにはあって。だからこそ、来年10周年を迎えるにあたり、自分たちの身二つ、心二つで人生を賭けてみたい気持ちが強くありました。
今までは楽しいライブをおこなうことがゴールだったんですよ。でも今は、それだけではなくアーティストとして、人間としてしっかり成長した姿で10周年を迎えるステージに立っていたいなという気持ちを強く持っています。よく、立ち姿にも人生は出ると言う様に、それを10周年を迎えるステージ上で僕らがしっかり出せていたら、その先の道にも吉田山田は続いていけるんじゃないか。もちろん、僕らはいつまでも歌い続けたいし、その希望はあるんですけど。その希望だけでは、なかなか足が進まなくなっている自分たちもいました。
そこで、僕らは「欲望」という最後のエンジンを吹かしながら、10周年に向け、それぞれに自分という人間をさらけ出していく必要性を覚えて、「その欲望を剥き出した時、どこまで人の心に刺さるんだろう」という想いもすごく持っていました。それを投影したのが、アルバムの『欲望』であり、今回のアコースティックツアーでした。
――それは、今の吉田山田が前へ突き進む上で「欲望」まで突き詰めないと、本当の意味での成長には繋がらないという意識だったのでしょうか?
山田義孝 これまでの吉田山田は、ずっと「希望」を胸に進んできたのですが、それだけでは辿り着けない場所もあるんです。そこへ辿り着くため、僕らに必要だったのが「欲望」でした。欲望ってどろどろとした印象がありますけど、じつは欲望こそ人間にとって前へ突き進む上で大事なエネルギーであり、エンジンになるもの。その欲望というエンジンを使ってどこまで行けるかを試したいなと思って作ったのがアルバム『欲望』です。