<記者コラム:オトゴト>
 『第60回グラミー賞』のノミネート作品が11月28日、発表された。グラミー賞は全84部門。前回は坂本龍一が、受賞は逃したものの「最優秀スコア・サウンドトラック・アルバム」部門にノミネートしている。このうち、主要とされる年間最優秀アルバム賞などの最多8部門でノミネートした、ヒップホップアーティストのJAY-Zに注目が集まっている。
 
 7月に4年ぶりとなるアルバム『4:44』を発表したJAY-Z。前回は妻であるビヨンセが英シンガーソングライターのアデルと主要部門で争うことになったが、結果はアデルが5冠を達成し完敗。妻のリベンジとなるか、その受賞の行方が注目される。

 今回は、ケンドリック・ラマーとブルーノ・マーズが6部門で続いており、それぞれ『ダム』と『24K・マジック』でチャイルディッシュ・ガンビーノの『アウェイクン、マイ・ラヴ!』、ロードの『メロドラマ』とともに最優秀アルバム賞を競うことになる。

 今回のノミネート作品を見ると、やはりヒップホップやファンクなど80年代のブラックミュージックをベースとした作品が評価されていることが窺える。

 一方で、今年3月にアルバム『÷(ディバイド)』を発表し、収録曲「Shape Of You」が米ビルボード史上初めてシングルチャート33週連続トップ10入りを果たした、英シンガーソングライターのエド・シーランは「最優秀ポップ・ソロ・パフォーマンス賞」と「最優秀ポップ・ヴォーカル・アルバム賞」のみのノミネートにとどまった。なお、同アルバムの収録曲「Perfect」ではビヨンセをフューチャーしている。

 同じく「最優秀ポップ・ヴォーカル・アルバム」など2部門でノミネートした、レディー・ガガは「私のアルバム『ジョアン』と楽曲『ミリオン・リーズンズ』がノミネートされて、とても謙虚な気持ちになるとともに、感謝しています」と自身のインスタグラムで感謝の言葉を綴っている。

 また、日本人アーティストとして、キーボーディストで作曲家の喜多郎の『空海の旅5』が「最優秀ニューエイジアルバム」部門にノミネート。喜多郎は2001年にも『Thinking of you』で同部門にノミネートされ、受賞している。

 90年代後半から00年代にかけてヒットしてきたR&Bやロックミュージックに代わり、ヒップホップがシーンを席捲していることを表すような今回のグラミー賞。前回のグラミー賞でもカニエ・ウェストやチャンス・ザ・ラッパー、ドレイクなどノミネート作品で、その動きは顕著だった。その中で、アデルの作品はやはりモンスター級だったのだろう。

 最近では、80年代リヴァイバルのような動きも見られたが、ブルーノ・マーズやロードはそれを取り入れ、ダンスミュージックの要素を加えることで新たなポップの形を示したように思える。音楽シーンにとって振り返ると、今年は大きな転換期となるのかもしれない。

 なお、『第60回グラミー賞』は日本時間2018年1月29日に米ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで開催される。【松尾模糊】

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