精神的にきつかった昨年、シシド・カフカ 乗り切ったある言葉
INTERVIEW

精神的にきつかった昨年、シシド・カフカ 乗り切ったある言葉


記者:桂泉晴名

撮影:

掲載:18年07月25日

読了時間:約15分

作り込みすぎると、応用がきかなくなる

シシド・カフカ(撮影=片山拓)

――セッション盤の最後にくる「リメンバー・ミー(エンドソング)feat.東京スカパラダイスオーケストラ」はアニメーション長編作品『リメンバー・ミー』のエンドソングで、この中ではかなり異色かもしれないですね。

 この曲は歌に関して、ディズニーさんからリクエストが多くあったんですよ。幅広い世代の方に聴いてもらい愛してもらうための曲にするには、やはりセオリーがあるということで。最終的にはその歌の歌詞を考えて、曲にのってやっていったら、そこから大きく外れていかなかったんですけど。すごく柔らかくて温かい言葉なので、それに対してのっていった感じはありますね。

――普段と違うレコーディングだったのですね。

 普段だったらどれだけアタック・角を作って、ひっかかりを作るかみたいなところだったりするんですけれど、それとは違う考え方です。もちろん活舌はよくしなきゃいけないんですけれど、そこまで角を作ってはいけないので。

――この曲は東京スカパラダイスオーケストラさんとのセッションになっています。

 夢でしたから。フォーンセクションを聴いているのが大好きなんですよ。今まで実際に生のフォーンセクションで歌うことはなかったので、これはすごく楽しかったです。「リハーサルはいくらでもやります。何度だって歌いますよ」という感じ(笑)。でも百戦錬磨の方たちなので、そんなに何回もやらなくてすんでしまうんですけれど。人柄もすばらしいので、和気あいあいとやっていましたね。

――ボーナストラックとして、「リメンバー・ミー(エンドソング)」のリミックスも入っていますね。

 今回の曲は配信やほかのオリジナルサウンドトラックで発売されているものが多かったので、改めて手に取った人に対してのプレゼントじゃないんですけど、そういった意味でリミックスを入れてみようかなと思いました。

――オリジナルと聴き比べると楽しいです。

 むしろボーナストラックの「DOUBLE TONE Remix」の方がディズニーらしいんじゃないかというのがあって。

――確かに。

 スカパラの加藤さんにもご相談したんですけど、スカパラのフィーチャリングで日本版は本当にスカパラ1色だったし、そのため結構アレンジメントはしたので、ディズニーのファンの人たちが「こういうの聴きたかった」というのを、こちら側で作ってみてもおもしろいんじゃないかなということで、こういうリミックスになりました。

――セッション盤の曲順についてはすぐに決まりましたか?

 悩むと思ったんですけれど、私の中ではこれしかなかったです。だからわりとすぐ決まりましたね。

――それぞれ個性が強いから、逆にバランスがいいのかもしれないですね。

 まとめて聴いたときに、「散らばっていない」とびっくりしました。自分のドラムと声、という共通点があったからかもしれませんけれど。そういった意味でも、おもしろい1枚になったと思います。あ、「羽田ブルース」と5曲目の「リメンバー・ミー」は自分では叩いていませんね。「リメンバー・ミー」は東京スカパラダイスオーケストラの皆さんに演奏してもらい、私はアウトロだけ4小節叩いていて。「羽田ブルース」はCRAZY KEN BANDの皆さんが演奏されています。人様のドラムで歌うのは楽しいですね。人に揺らされながら歌うのが好きなので。

――「羽田ブルース」はどんなリズム感でしたか。

 CRAZY KEN BANDサウンドなんですよ。音の揺れもそうですし、長年ご一緒なさっていたからこそ、一緒に動いていくグルーヴがあるんですね。それに対してのっかっていくのは気持ちよかったです。

――長年のつながりが生み出す揺れ感がある、ということですね。

 その日が「はじめまして」で出会うと、わりとカッチリやったほうが、基準は分かりやすいんです。でもバンドでやっている方だと、その揺れすらもお互い分かっているから、補い合ったりとか「そっち、おもしろいね」と寄っていったりとか。そういうのが出てくるんだと思うんですね。だから長年やっていらっしゃるバンドのサウンドにのっかっていくのはおもしろいんです。

――なるほど。今のコメントを聞いて、以前、KenKenさんとの対談で、「リハをやろうとして3時間くらいスタジオを予約したけど、音を合わせてみたら15分くらいで終わった。これ以上やりすぎると決まりきった感じになるって思って」というお話をされていたのを思い出しました。

 作り込みすぎちゃうと、応用がきかなくなってしまうんですよ。それが身にしみているから。できる限り余白を残していくのも、大切なことだったりします。私はちゃんと波にのるのが苦手だったので、こういう機会をいただいたときにいかに挑戦するか、というのを大切に思ってきました。

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