ドラムヴォーカルのスタイルで独自の音楽を追求するシシド・カフカ。彼女の新作アルバム『DOUBLE TONE』は、アーティストたちをフィーチャリングしたセッション・ミニアルバムと、書き下ろしオリジナル・ミニアルバムという2枚組で構成されている。昨年は、NHK朝の連続ドラマ小説『ひよっこ』に出演するなど活躍が目覚ましかったが、実は「精神状態がきつかった」といい、ある言葉をきっかけに乗り越えられたという。昨年はロングヘアをバッサリと切って話題になったが、それもその言葉が影響をしているという。そうした過程を経て完成したのが今作。ドラマ漬けだった昨年の末に「2018年は音楽活動をしたい」と語っていた彼女が同作品を通じて見せたものは何か。【取材=桂泉晴名/撮影=片山拓】
セッションでは一言リクエストを添えるようにした
――ニューアルバム『DOUBLE TONE』はセッション盤とオリジナル盤の2枚組となっています。まずDisc1のセッション盤についてですが、カフカさんは3年前に「K5(Kの累乗)」というセッションアルバムをリリースされていますよね。当時とは、どういったところが変わったと思われますか?
2015年に出した時はデビューしてから3年くらいで、本当に皆さんにお会いするのもドキドキな状態だったんです。当時は皆さんの器の中に飛び込んでいくのがテーマでしたが、やはり気負っていた部分はすごくありました。「どんな曲が来るんだろう。こういう曲が来たら、自分はいった何ができるんだろう?」と、考えすぎていたところもあったのかな、と。でも今回はいただいたものに対して、「お、そう来ましたか。楽しいですね!」と、いい意味で皆さんの船に乗ることができたんじゃないかな、という思いがあります。
――1曲目の横山剣さんとの「羽田ブルースfeat.横山剣with CRAZY KEN BAND」は、昭和の香りがする歌謡曲になっていますね。
剣さんの中では、当初ファンクといったイメージがあったみたいなんです。でも私が「剣さんとデュエットしたいです」と言ったので、ガラッとイメージが変わられたようで。「打ち合わせから帰るときの車の中で、だいたい構想ができた」とおっしゃっていました。この曲は、会ったその時の感触や言葉遣いなどを、すべてグーっと凝縮していただいた感じがあります。
――「デュエット」というのは、カフカさんからの希望だったのですね。
剣さんのあの渋い声と歌ってみたくないですか? それに平成のデュエットソングというのは、あまり聴こえてこないなと思ったので。この曲はちょうど昨年の10月リリース(3カ月連続コラボ作品配信限定シングル第1弾)だったので「忘年会が近い」というのもあって。そこで皆さんが歌ってくれたらいいな、という思いも含まれています。私自身、今はあまり忘年会をしませんけれど、昔バイトをしていたときなどは、みんなで飲みに行ったりして。最後の締めは必ずカラオケなんです。「ああいう場で歌われたらおもしろいな」と思ったし。いまだに父と2人で飲みにいくと、最後の締めはスナックなんですよ。
――それは素敵!
よく父と歌っていたりもするので。昔はすごくデュエットソングが多かったじゃないですか? 父がスナックのママと歌っている姿を見て、「デュエットソング、いいかも」と思ったんですよね。父は今、「羽田ブルース」を歌っているみたいですよ(笑)。
――いいですねえ。舞台が羽田というのは、どういったところからですか?
このあたりは曲があがってきたときのサプライズでしたね。タイトルからぐっとつかまれて。「羽田ブルース」というのが最高です。さすが剣さんだな、と。
――すぐに物語が想像できますし。
そうそう。色がちゃんとついている感じ。すばらしいなと思いますね。あとは剣さんの優しさがすごく伝わってきました。“ショック!”とか、“俺の、俺の”とか、剣さんの代名詞になる言葉をちゃんと歌詞に入れてくださって。そういった意味で、キャッチーになるようにも作ってくださっていますし。優しさがあふれていると思いました。
――今までのセッション曲も、それを担当された方のカラーがすごく出ていますよね。それはカフカさんからのリクエストだったのですか?
はい。それがないと、セッションの意味があまりないので。それこそ打ち合わせの時に、「どんなのがいいですか?」と毎回聞かれるんですけれど、「なんでもいいです。ただ…」と、1人ずつ何かしらのリクエストはするんです。だから前回のときも、「楽しい感じがいいです」とかお話をしました。剣さんの場合は「一緒に歌いたい」ということで。こうやって一言だけリクエストさせていただくことは多いかもしれないです。