シンガーソングライターのNakamuraEmiが6月27日に、東京・EX THEATER ROPPONGIで全国ツアー『NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.5~Release Tour 2018~』の東京公演をおこなった。ツアーは3月21日にリリースされたアルバム『NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.5』を引っさげて、5月2日の高崎club FLEEZを皮切りに、ギタリストでプロデューサーのカワムラヒロシと2人編成で全国17カ所を行脚。6月22日からはバンド編成で福岡、高松、東京、大阪、名古屋の5カ所をまわるというもの。東京公演ではアンコール含め全14曲を熱演し、随所に今作のテーマともなったコミュニケーションを存分に感じさせるステージとなった。【取材=村上順一】

「Don’t」でライブはスタート

NakamuraEmi(撮影=TAKAO IWASAWA)

 多くの人々が彼女ワンマン史上最大規模となるこのライブに期待を抱き、開演を心待ちにしているのを感じ取れる会場内。定刻になり青く染まるステージ、サポートメンバーに続いて、NakamuraEmiがゆっくりとステージに登場した。オープニングナンバーはアルバムでも1曲目を飾る「Don’t」。バウンスしたリズムに乗って、NakamuraEmiも軽快に体を動かしながらの歌唱。観ている側も体を揺らしながら歌に身を委ねる。

 「大人の言うことを聞け」ではシェイカーを振りながら、バンドサウンドと渾然一体となったグルーヴで包まれるなか、人生経験から生まれた言葉たちを力強い歌で届ける。そして、お互いの痛みを称え合うかのように奏でられた「かかってこいよ」を披露。アグレッシブな歌は、観客の心にカウンターパンチを浴びせるかのように降り注ぐ。そして、テンション高めのMCにプロデューサーでギタリストのカワムラヒロシも「今のいいね!」と絶賛。その後NakamuraEmiからメンバーに質問を投げかけながらのメンバー紹介で、和やかな空間を作り出し観客を楽しませた。

 ニューアルバムからパラアスリートの中西麻耶選手にインタビューしたことで生まれた楽曲「N」。メッセージを込めた迫真の歌声に耳を傾け聴き入る観客の姿。そして、過去曲から「スケボーマン」、そしてシンガーとして生きるか女性として生きるか仕事に生きるかを描いた「使命」を披露し、リアルな感情を歌声で表現していく。続いての「波を待つのさ」でNakamuraEmiは、波の音を自らオーシャンドラムを用いて情景を色濃く映し出す。寄せては返す波のようなグルーヴと歌で紡ぎ、ステージ上は青く海の中にいるかのような錯覚を与えてくれた。

 ここで亡くなった人、そして、残された人についての思いを話すNakamuraEmi。「残された人にはものすごく苦しくて残酷でしょうがない毎日がやってきます。それは亡くなった人がとても幸せなものを残してくれたからだと思います。いつか自分も残す方の立場なのか、残される方になるのかはわからないけど、その人達にもらった幸せをちゃんと思い出せるように、前を向けるように書いた曲です」と、マイクスタンドに灯る灯台の明かりを連想させる温かい光が印象的だった「星なんて言わず」。エモーショナルな歌声で訴えかけていく姿が印象的だった。そして、「新聞」で忘れかけていたものを感じさせ、ノスタルジックな気持ちを呼び起こさせた。

Calmeraの辻本美博が登場

ライブのもよう(撮影=TAKAO IWASAWA)

 場面は一転し、真っ赤に染まるステージで揺るぎない決意とも言える感情をぶつけた「メジャーデビュー」を届ける。<ぶれんじゃねーぞ♪>とその言葉に煽られるかのように観客から大歓声が上がった。小柄なNakamuraEmiだが“小さな巨人”まさにそれを感じさせた瞬間でもあった。

 そして、初めて自分以外の人に向けて書いた楽曲「教室」。観客もシンガロングし、思いが一つとなって響き渡った。「大きな声をありがとう!」とNakamuraEmiは感謝の声をあげた。続いて、仕事先や家、学校で少しでも笑顔でいられるようにと「モチベーション」を披露。スペシャルゲストにエンタメジャズバンド・Calmeraの辻本美博(Sax)を招き、ファンキーなリズムにノリノリのNakamuraEmi。座っていたカワムラヒロシも立ち上がり、辻本とバトルをするかのようにステージ前方両サイドに設置されたお立ち台でアコギを掻き鳴らす。情熱を感じさせるハイレベルな演奏に会場もヒートアップ。

 その布陣のまま本編ラストは代表曲「YAMABIKO」へ。歌い出しで歌詞が出てこないというハプニングがより一層ライブを盛り上げ、5人のサウンドをバックに張り裂けそうな歌声を放つNakamuraEmi。天井知らずといった力強さをステージから見せてくれた。

 観客からのアンコールを求める手拍子に応え、再びステージにNakamuraEmiとサポートメンバーが登場。頭にタオルを巻き気合十分といった姿で披露したのは、“日本の女を歌う”元祖になった楽曲「女子達」を届けた。バンドメンバーの個性的なソロセクションを織り交ぜながら、後半は怒涛のエネルギーをステージから放ち最後は観客を交えた記念撮影。「ノってるか〜い」とこの日のキーワードとも言える言葉を合図に撮影。たっぷり2時間NakamuraEmiのパフォーマンスを堪能した『NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.5~Release Tour 2018~』東京公演の幕は閉じた。

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