歌手の青山テルマの最新曲「世界の中心~We are the world~」の“中毒性がヤバイ”と注目を集めている。同曲は7月25日発売のニューアルバム『HIGHSCHOOL GAL』からの先行配信曲で、ショートバージョンMVは80万回再生を超えるバズり具合だ。その内容たるや、平成初期のギャル文化と現代パリピのクロスオーバーとでも表現すると伝わるだろうか。マイミク、タピオカ、NAMIE、パラパラ、電波少年、ギャル、300円プリクラ、長州小力など、90年代カルチャーてんこ盛り映像。とにかく、はちきれんばかりに弾けまくっている。「とりまウチらが世界の中心」ということでブッ飛んだ新境地を展開し、バズった青山テルマの新境地の背景には一体何が?

「懐かしい?」「ダサカッコいい?」青山テルマ新MV

 長底ブーツにユーロビート、ちょいちょい出てくる長州小力。ユルくパラパラを舞いながら懐かしきオケヒ(オーケストラ・ヒット)まみれのサウンドに合わせて歌う青山テルマ。90年代に青春を過ごした30代、40代がこの懐かしいアゲ具合をMVで観ると、恐らく一発で刺さるのではないだろうか。少なくともアラフォー世代の筆者は釘付けに。どれだけぶりに“チョベリグ”というフレーズを聞いたことか。

 「世界の中心~We are the world~」MVは、90年代の若者文化、特にギャル界隈のシーンを総括した内容だ。パラパラ、マルキュー、黒ギャル、ダンレボ、電波少年、ハイビ、厚底ブーツ、長州小力、300円プリ、安室ちゃん、タピオカと、アラフォー世代にとっては懐かしい限りだ。若い世代にとっては「ダサカッコいい」という感想もありつつも、最後まで見入ってしまうようなディープな内容に感じるだろう。

 一世代前のカルチャー、逆に新しく感じる感覚、リバイバル感、そして最新のトレンドも。それらが凝縮された世界観の「世界の中心~We are the world~」は、パラパラを踊っていたギャル世代から平成生まれの若者まで、幅広く楽しめる内容となっている。その「懐かしい」と「新しい」が同居していることに着目すると、注目が集まる理由が浮かんでくる。

ユーロビートブーム、パラパラの再来か? 平成という時代の再確認

青山テルマ

 「なぜ今、ユーロビートか? パラパラか?」と真面目に考察するとなかなか難しいのだが、事実としてはっきりしているのは、ユーロビートもパラパラも90年代に勢い良く盛り場で蔓延したアッパーな文化だということ。それは、バブルが弾けて何だか元気がなかった平成初期に起爆剤として作用した若者文化だということ。そして時代の一シーンとして社会的に定着したこと。それらを考慮すると、時代背景に作用しているという部分が見えてくる。

 2019(平成31)年4月30日をもって「平成」は終了し、改元される。元号だけを切り取って表現すると“激動の昭和”のように、その時代を表現するフレーズがある。平成はどうだったのだろうか。最も大きな点としては、インターネットの一般普及による情報革命が起きたことだろうか。

 文化面ではどうだろう? 明治・大正・昭和・平成で、最も「音楽界」が盛り上がったのは平成だ。これは、90年代の爆発的CDセールスや近年のコンテンツの発展が物語っている。そんな音楽を絡めた「平成の文化」の始祖として、第一に90年代のパラパラブームや渋谷のギャル・カルチャーなどを思い浮かべる方はわりと多いのではないだろうか。

 そう考えると、青山テルマは楽曲で「とりまウチらが世界の中心」と軽いノリで言い放ってはいるが、それはあながち過言ではなく、90年代のギャル文化は平成を象徴する一部分であり、パラパラやユーロビートサウンドが重要な文化遺産的なシーンであったことは一つの事実である。(やや大げさだろうか)

なぜバズった?

 「世界の中心~We are the world~」は、前述の「平成という時代にピークを迎えた文化の一部分」の各要素を的確にチョイスしている。パラパラや当時のギャルファションなど、今観ても「懐かしい」の一言で終わらせない構成で、今作のMVは現代風にエディットされている。そのキャンバスで「どうした?」と言いたくなるほど弾ける青山テルマがこの上なく光っている。

 MVを観ていると、90年代の文化を振り返ると共に、現代のシーンに繋がる様々な要素を感じることができる。そして、各世代によって「懐かしい」「ダサカッコいい」「わりと新鮮」「今逆にこういうの流行ってる」など、捉え方が異なること。平成という「時代の中で生まれた文化」と、一つの時代の終わりを迎えている中で感じられる「変化」を、スピーディーに、“アゲアゲ”に、音とビジュアルと動作とフレーズと、その全てから感じ取れることができる。言わば「平成初期という時代の情報量」がキラッキラに詰め込まれている作品なのだ。

 そして、その情報量を受け入れるには本来たいへんな労力が必要なのだが、現代的なエディットによりスムーズに受け入れることができる。かつ、今聞いたら腰を抜かすようなフレーズが織り込まれていることも手伝い、逆にポップに入り込んでくる。確認するように再度観てしまう。そして脱力と興奮が混じるインパクト。などなど、実はバズる要素がしっかりとある。

 DA PUMPの「U.S.A.」も類似した理由でバズったが、DA PUMPの方は80年代テイストとニューウェイヴな色もミックスされていた。そして青山テルマの「世界の中心~We are the world~」は、より90年代寄りの“平成感”がある。平成30年、平成のラストシーンとして、時代を振り返ると共に、現在のカルチャーで飛び交うフレーズも融合され、ひとつの着地点を感じることができる。

 平成という激変の時代も終わりを迎え、新たな時代へ向かおうという心境と活力が生まれる「世界の中心~We are the world~」。本作にはそういった魅力がある。そして、MVの映像とサウンドと共に平成という時代が頭から離れなくなるという点は、今大いに注目を集めている理由の一つだろう。【平吉賢治】

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