ココロオークション、Musicalという構想 火蓋切ったツアー初日

ココロオークション
ロックバンドのココロオークションが去る4月21日、東京・渋谷Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASUREで、ホールワンマンツアー『ココロオークション TOUR 2018「Welcome to the Musical」』初日公演を開催。1stフルアルバム『Musical』の楽曲を中心に全18曲をパフォーマンスした。バンドの新展開となる同作を引っさげた今回のツアーは“Musical”という主題を持ち、サウンド面・パフォーマンス面と、ストーリー性に富んだ非常にカラフルなステージを展開。2010年代“イチゼロ世代”のロックサウンドを惜しみなく披露し、華々しいツアースタートを切った。全国14カ所での公演を予定しているツアー初日のもようを以下にレポートする。(セットリスト公開有)【取材=平吉賢治】
オーディションと共に構築する“Musical”という構想
粟子真行(Vo.& Gt.)のギターと歌をホールに響かせるツアー・イントロダクション。「景色の花束」から、語りかけるようにライブはスタートした。開始1分弱で全楽器のサウンドが融合し、テンメイ(Gt.)のオブリパートの絡みから“ココロオークションらしさ”のあるアンサンブルが広がる。各メンバーは“初曲”を、まずはクールに演奏した。そして次曲、テンメイが満面の笑顔で両手を掲げてクラップの煽りを見せた「星座線」では、4つ打ちのダンスロックビートが急激にホールを温める。メンバー内で最も表情豊かに、一拍一拍、噛みしめるようにプレイする井川聡(Dr.)の姿がアツい。
粟子は「俺たちの音楽の世界に入って来てください」とMCでコールし、“Musical”の世界観をオーディションと共に構築するように誘う。メランコリックなコード進行とメロディが染みる「蝉時雨」をじっくりと聴かせ、大野裕司(Ba.)のサウンドセットからはアンビエントな音響が出力され、「蝉時雨」「砂時計」「Rainbow」の流れを幻想的に繋いだ。淡々とベースを奏でながら、同期させるサウンドを静かに出力させる大野の存在は、クールながらもどっしりと芯があり、実に頼もしく映っていた。
ストーリー性を孕むサウンドアプローチ
アルバム『Musical』の「Interlude」から「かいじゅうがあらわれた日」への流れもステージで生々しく披露され、『Musical』の世界観をライブでリアルに再現。「これからは僕とあなたの2人だけの世界へ連れていきたいと思います」というMCの導入に相応しいセクションとなっていた。曲の前後、曲中にフィールドレコーディング的なサウンドを馴染ませるなどの斬新なアプローチもあり、ライブの構成は物語のように進行。聴衆はココロオークション・ワールドに溶け込むように惹き込まれ、ホール全体を包むナチュラルな一体感を生んだ。
アコースティックギターにマンドリンという弦編成にチェンジして披露された「コインランドリー」、エキゾチックな味を醸す「ドライブ」と、中盤ではココロオークションの様々な表情を見せ、“Musical”というツアータイトル・アルバムタイトルとシンクロした空間が次々と展開され、オーディエンスは食い入るようにライブと同化していた。どのカラーの楽曲であっても、粟子のMIDに芯のあるボーカルはブレない。このボーカルあってこそ、テンメイのカウンターメロディ主体のバッキングやオブリのプレイが光る。この点はココロオークションのアンサンブルの特筆すべき点だろう。
オールスタンディング、怒濤の2時間
そして「妖精のピアス」のアウトロから、井川が急に思い切りテンションを上げてドラムを叩きたおす。起爆剤となったそのテンションは、全席に座席が用意されているもホールに居る全ての者が立ち上がり、「ヘッドフォントリガー」からはラストまでオールスタンディングでライブを涌かせた。アッパーチューン「フライサイト」、そして「今日もわたしは」を壮大なアンサンブルで披露し、怒濤の2時間はあっという間に過ぎ、ホールツアー初日は終演した。アンコールでは1曲、「Orange」が演奏され、次のツアーステージへと繋いだ。
楽曲と演奏、パフォーマンスという“Musical”はその名の通り、ストーリーを充分に含んだステージとなっていた。“イチゼロ世代”のロックシーンの礎として、ココロオークションはツアーファイナル・大阪の地まで走り続けるだろう。