4人組バンドのココロオークションが10月15日に、東京・渋谷CLUB QUATTROで全国ツアー『3rd mini Album Release TOUR 2017「夏の終わりを探しに行こう」』の東京公演をおこなった。8月2日にリリースされた通算3枚目となるミニアルバム『夏の夜の夢』を引っさげて、9月8日の石川・金沢vanvanV4を皮切りに、10月22日の広島BACK BEATまで全国11公演をおこなうというもの。この日は夏の短編小説シリーズの4曲を含む全18曲を届けた。粟子真行(Vo.Gt)はアンコールでのMCで「ずっと愛してもらえる曲を届けていくから…」と決意とも言える言葉を告げ、バンドの持つ世界観を存分に発揮し、オーディエンスを夏の終わりに導いた。。

僕らがみんなの夏を終わらせてあげようと思って...

ライブのもよう

 この日は雨。会場の渋谷CLUB QUATTROには、蝉の鳴く音が響き夏を感じさせる。開演前からココロオークションの世界観に誘う。開演時刻になり蝉の音は、鳴き止み、夏夜を感じさせる虫の音に変わる。その中をメンバーがゆっくりとステージに登場した。各々の定位置に着き、粟子真行(Vo.Gt)は「今この瞬間を音楽で閉じ込めにきました」と綴り始まったのは「雨音」。雨が降るこの日にぴったりのナンバーでツアーファイナルの幕を開けた。粟子の歌声は、歌詞と音が映し出す情景に、色をつけ鮮明にさせる。しっとりとした「雨音」からの始まりは、優しく心を掴まれるようだった。続いて「群青」「バース」と奏でていく。

 MCを挟み、ミニアルバム『夏の夜の夢』に収録された「なみだ」へ。力強いビートと背中を押してくれる言葉たちはオーディエンスを扇情させていく。さらにギアを一段上げ、冒頭の<大丈夫かい 元気でいる>と語りかけるような歌詞が印象的な「星座線」へ突入。ミラーボールが光を乱反射させ、壁に映る光は歌詞にもあるようにまさに満天の星。オーディエンスもステージに向かって手を差し出す。そして、夏の短編小説シリーズの「夏の幻」を披露。粟子はエレキからアコースティックギターにチェンジ。夏の風が感じられるような、心にそっと寄り添うようなサウンドと歌が会場に広がっていった。

 粟子は「みんな、この夏やり残したことがいっぱいあると思うから、僕らがみんなの夏を終わらせてあげようと思って...」と、今回のツアータイトルの意図を明かした。そして、今回全国で日替わりのセットリストがあることを説明。リクエストを募り、その中からメンバーがその場所にあった楽曲を披露するというもの。東京で選ばれたナンバーは「ステージ」。1stアルバム『TICKET』に収録され、あまりライブでは披露されないレア楽曲。メンバー曰く2年ぶりの披露となったナンバーに、オーディエンスもその貴重な瞬間、サウンドに耳を傾ける。

終わりを歌うのは、今を大切にしてほしいから...

 そして、ライブは後半戦に突入。大野のワイルドなスラップ奏法から、「シャバ・アーサナ」を披露。そして、真っ赤なライティングが闘争本能を掻き立てる感情揺さぶるロックナンバー「スパイダー」を立て続けに浴びせる。テンメイが縦横無尽にはしゃぎながらギターをかき鳴らす姿が印象的だった「ここに在る」、さらにそれをブーストさせる盛り上がりを見せた「ヘッドフォントリガー」と前半戦とは表情を変え、攻撃的なココロオークションで2面性を打ち出していく。

 「終わりがあるから美しい」と粟子の言葉から、『夏の夜の夢』のリード曲「線香花火」を届けた。儚く終わりへ向かっていく情景が鮮明に見えてくるようだ。その音に誘われかのように、切なさと同時に甘酸っぱい気持ちが広がっていくような感覚。そして、粟子は「終わりを歌うのは、今を大切にしてほしいから...。会えなくなってしまうことや、忘れてしまうことが寂しくて怖いのだと僕は思います。自分が寂しがりやということもあって音楽を始めました。歌を歌っているときは誰かの心に住めるような気がして。今も変わらずその気持ちで鳴らしています」と語った。本編ラストは「景色の花束」。誰かの心に寄り添うような優しい歌声が、会場を包み込んでいく。歌、音楽の持つ力を感じることができた。

 アンコールの手拍子が鳴り響く。粟子は「ずっと愛してもらえる曲を届けていくから...」と決意を告げ、夏の短編小説シリーズの始まりとなった楽曲で、このライブを締めくくるのに相応しい曲「蝉時雨」を最後に届けた。スポットライトを浴び、情感を込め丁寧に歌い上げる粟子。このライブのエンドロールのように奏でられる「蝉時雨」は、きっとこの場所に訪れた人の心に残り続けるだろう。曲が終わるたびに「ありがとう」と、楽曲にあったニュアンスで感謝を告げる粟子の姿も印象に残った。

【取材=村上順一】

セットリスト

01.雨音
02.群青
03.バース
04.なみだ
05.星座線
06.スノーデイ
07.夏の幻
08.ステージ
09.フライサイト
10.地球の歩き方
11.シャバ・アーサナ
12.スパイダー
13.ここに在る
14.ヘッドフォントリガー
15.線香花火
16.Orange
17.景色の花束

ENCORE

EN1.蝉時雨

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