世間のズレが無くなってきている、遊助 活動10年で手にしたもの
INTERVIEW

遊助


記者:桂泉晴名

撮影:

掲載:18年05月31日

読了時間:約8分

アルバムの裏テーマは「山」

――そしてアルバム中盤は男の世界を描いたナンバーがいくつかあります。6曲目の「リベンジ」はどのようにしてできたのでしょうか。

遊助(撮影=片山 拓)

遊助(撮影=片山 拓)

 これはいつも担当してくれているDJのN.O.B.Bくんと、男くさい曲がやりたいということで。昔一緒に「イナヅマ侍」をやったんですけれど、もうちょっと落ち着いていて、サビもあまり高くなく、オクターブ上とオクターブ下が両立するような曲がいいという話になったんです。

――揺るぎない意志が入ったような曲をアルバムの中心に入れたい、と?

 そうですね。最初の<オーオー>といったコーラスもなかったんですけど、ラグビーの踊り、ハカみたなイメージ。どちらかというと「戦に行く男たち」みたいなものをやってみようと。結構いろいろな人たちの声を入れていて、本数も80本くらいあるんです。

――「リベンジ」で<俺らの強みは「負けた事がある」>と言っていますけれど、これは10曲目にくる「常勝 遊turing 山猿」と一見反対のようでいて、この2曲は根底でつながっているような気がします。

 それは偶然です。まあ僕が作っているから、絶対つながるんですけれど(笑)。

――そうですよね(笑)。勝負ごとに負けちゃいけないというところがつながっているな、と。

 今回“山場”という言葉をタイトルにつけたのも、口に出していたわけではないのですが、裏テーマは「山」と自分の中で考えていて。だからアーティスト写真は銭湯だけど、富士山があるところだったし。初回生産限定盤につけている手拭いのデザインにも富士山を入れたりしています。

――今話題に出たので、「常勝 遊turing 山猿」について伺います。山猿さんとWコラボだそうですね(山猿のアルバムに遊助との曲「常超 feat.遊助」を収録)。

 僕の依頼が初めてだったんです。もともとこれが先で、山猿の方から「僕らもいいですか?」という話をもらったので、「いいよ」と。たまたま発売日が山猿の方が先だったんですけど。もとは「常勝」ありきだったんです。

――一つひとつ一つの詞が、今までの遊助さんと山猿さんが経験したことがしみわたっている言葉ですよね。<結果気にせず楽しむ事 そんな余裕もないか>というところとか。

 昔から負けちゃいけない場所にいたことが多かったですから。小さい頃も強いスイミングスクールにいたり、もちろん高校も強豪校でしたから。「負けてダメだったらいいじゃねえか」と言われたことがなくて。負けることが絶対許されないところにずっといたので、そういう曲があってもいいじゃないかなと。「負けたっていいじゃん」という曲は多いけれど、「負けたっていいじゃん、なんて言わせないよ」みたいな(笑)。

遊助(撮影=片山 拓)

遊助(撮影=片山 拓)

――山のぼりなどはまさに。

 あきらめたら、死んじゃいますから。試合の直前に聴きたくなるような、勝負どきの直前に聴いたら、「何か勝てそうな気がする」とか「受かりそうな気がする」みたいな、そういう曲作ろうぜと話しました。今まで努力するための、たとえば練習前に聴きたい曲、ランニングする時に最適な曲、みたいのは作っていたつもりだったんですけど、もう本当に直前のバスや電車、歩いてる時に聴きたくなるような。「よし、絶対負けないぞ」と思っていただけるような歌詞を書いてみようかなと思ったんです。

――そしてもちろん、このアルバムには恋愛の歌も入っています。「Amore 遊 turing KIRA」のKIRAさんとはどんな形でお会いしましたか?

 KIRAとの出会いはDOZAN11くんがきっかけです。彼は大阪出身で、去年のライブでも一緒に歌ってくれて遊turingもしていて。たまたまそのときに、みっくん(DOZAN11)が彼女と仕事をしていて、「遊助、今、こんなんやってんねん」みたいな感じでスマホに入っていた歌を聴かせてもらって。「素敵だね。この声、いいね」と言ったら、「人間的にも遊助とは性格が合うと思うから、もしなにかチャンスがあったら一緒にどう?」と言ってくれて。だから頭にあったんです。それで女性との遊turingもやりたけれど、どうしようかなと思った時に、ぱっと彼女のことが出てきて。それで会いました。

――曲はどのようにして作っていきましたか?

 初めて会ったときのインスピレーションというか。その日にご飯に行ったりして、どういう人かを知ってから作ってみようと。彼女はすごく明るくて、本当に関西の女の子みたいな感じ。「遊助さん、ありがとうございます。ほんまにええんですか?」みたいな。ずっとしゃべっているんですけど、ふとしたときにピュアだったり、すごくまじめで。もちろん彼女は一人でずっとソロとして戦ってきた人間だから、ものすごくエネルギッシュな部分もあるし。ここまでやってきたというプライドもあるし、信念を持てる強さもある。そういう子が恋愛したら、どういう風になるんだろうと思って、後半は「遠距離恋愛でいろいろなこと乗り越えてきて想い合ってる2人をやってみようか」という話をして。自分が思ったことを言っていいよと伝えました。

――詞に大阪弁があるのは、彼女のキャラクターを生かしたかったんですね。

 最初、大阪弁はなかったんですよ。「だから、大阪弁にしなさいって言ったじゃない」って。そうしたら彼女が「ほんまや、すみません」って。先生と生徒みたいな感じ(笑)。「はい、やり直し」みたいな。

――遊助さんのブログでもKIRAさんが一生懸命考えている様子の写真をのせていましたよね。

 彼女はぱっと見た感じは派手でにぎやかなんですけど、根がすごく真面目で。たとえば「てにをは」一つでも、何十分も迷うとか。「これ、<は>でいいんですかね? <が>がいいんですかね?」と聞いてくるから「いいよ、最初ので」と答えると「もう1回考えさせてください」みたいな。言葉選びも一つ一つ慎重なんですよ。いい意味で「プロだな」というのを、KIRAから感じたし。

 ただ、この曲のもとは遠距離恋愛でも、聴く人の中には遠距離恋愛したことない人もいるし、それでちょっと曲が離れちゃったら嫌だなと。だから聴いた人が「この気持ち、わかるかも」というスパイスを入れておこうぜ、というのがあって。男って結構最初を求めるんですよ。「こんなお店初めて」とか、「こんな優しくしてくれたの初めて」とか。「そんな言葉を言ってくれるのは初めてです」という言葉に弱い(笑)。でも女の人はその人を最後に思いたいといったように、「最後」にこだわるというか。「この彼を最後にしたいの」とか、「こんな涙は最後にしたいの」とか。そこが男女の違いで一番大きいかな?と思って詞に入れました。

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遊助(撮影=片山 拓)
遊助(撮影=片山 拓)
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