遊助「40歳になって本当に楽しい」年を重ねたからこそ見える大きな可能性
INTERVIEW

遊助


記者:平吉賢治

撮影:

掲載:20年03月11日

読了時間:約10分

 遊助が11日、9thフルアルバム『遊言実行』をリリース。本作はタイトル通り、遊助のファンへの感謝と決意表明を“有言実行”した1枚。遊助の綴る希望あふれる言葉が色とりどりのテイストの楽曲とともに収められている。また、遊(feat)turing参加アーティストとしてYouTuberのンダホ(フィッシャーズ)、MaRuRi(まるりとりゅうが)、サイプレス上野(サイプレス上野とロベルト吉野)とのコラボレーション楽曲も収録。昨年アーティストとしてデビュー10周年を迎え、セカンドステージに向かう遊助の新たなチャレンジ、意欲がつまっている。遊助が「全魂を込められた」と話す本作の制作エピソードや、昨年40歳を迎えた中で他の世代と交流する意義など現在の心境を聞いた。【取材=平吉賢治】

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実行の一つが“言葉”

『遊言実行』通常盤

――今作『遊言実行』というタイトルはどう決まったのでしょう。

 有言実行という言葉から『遊言実行』にしたのは言葉遊びもあるけど、遊び心を忘れずに活動し続けたのが遊助だと思っているんです。ライブや曲、ブログとかもそうだと思いますけど“言葉”を聴きに来てくれている人が凄く多いんです。俺語なのかな? よくわかんないですけど(笑)。一つひとつの言葉って大事だし、そこに宿る魂で人を傷つけることも助けることもできると思うし、夢を実現する後押しになることもありえるし。傷が癒える薬にもなっていると思うんです。

――遊助さんにとって言葉はとても大切なものなのですね。

 自分で発する言葉によって動きたくなることだったり、動かせることができると思っているんです。自分自身も言葉選びや聞く言葉は大切にしていて、言葉の強さを改めて考えながら作りました。去年10周年のライブやホールツアーをやらせて頂いて、色んな人達の顔を見て言葉や気持ちのキャッチボールをしながら、2020年は改めて前に進めるようなことを曲に乗せたいという想いがありました。

 10周年の裏テーマは“感謝”というのがあったんですけど、今年は一歩進んでセカンドステージというか“実行”だったり“始めの一歩”だったり、遊turingも含めて新しいことを模索しながら挑戦することを忘れずに進んで行こうというテーマ性を四文字熟語で表しました。

――アルバムを聴いた印象と歌詞の様々な言葉からも、今作の内容にぴったりのタイトルだと思いました。

 平成から令和になって、俺は40歳になって、10周年も終わってと、色んなことがリセットされてという年なのでそういうアルバムに出来たらいいなと思いました。

――正に有言実行だと思います。さきほど遊助さんが仰ったように、本作には人を助けたり夢の後押しをする希望の言葉がたくさんあると感じました。

 俺は男だから子供は産めないけど、言葉などで命を救えたり泣いている人を笑顔にすることはできると思います。全てがわからないから言葉というものが生まれたと思っていて。わかろうとすることがスタートで、次に実行することは「言葉に出す」ということだから。「この人どう思っているんだろう」という次の一歩は「何を考えているんでしょうか」という言葉だったりするから、実行の一つが言葉だと思うんです。

――確かに、言葉に出さなければ始まらないということに気づかされました。

 文字でも手紙でもいいんだけど、表現をしないと伝わらないですよね。

――テレパシーでもできればいいのですが。

 もう今では自分の意思で動く機械とかあるらしいし。考えて飛ぶとか、もうほとんどタケコプターだよね! そろそろ出来るんじゃない?

――今のテクノロジーの進歩の早さを考えるといけるのかもしれませんね。

 余裕でいけると思うよ! そう思ったらこの『遊言実行』のジャケットのロボットにも未来を感じてきたな…。

「縁を大事に」遊助“セカンドステージ”の様々な要素

『遊言実行』初回生産限定盤A

――今作では遊turingのコラボレーション楽曲が3曲ありますが、まず7人組YouTuberフィッシャーズのンダホさんとは、以前から交流があったのでしょうか。

 全然なかったです。彼がYouTubeで僕のファンということを言ってくれていたんです。「音楽をやるのも遊助さんがきっかけ」とも言っていたらしくて。その話を聞いて連絡した時に、ンダホさんの結婚相手とは僕のライブで出会ったと聞きました。楽屋においでって言った時に「遊助さんと? 絶対嘘だ!」って言われたけど「本物だって」と言って(笑)。それで2人で来てくれて、これも何かの縁だからと。お祝いに少しでも背中を押すようなことができたらと思って「曲一緒にやってみようか?」となって、そこから始まりました。ちょっと勉強不足でYouTuberとかあまりわからなかったんですけど…なんというか今、戦闘能力がわかりにくくなっているじゃないですか?

――戦闘能力、と言いますと?

 数値化しすぎているというか。Instagramとかでフォロワーが何万人とかいると凄いとなりますけど、それはもちろん凄いんですけど、どこか不思議で。例えばフォロワーが1千万人いたら「はたしてそれがその人のパワーなのか」とか。

――確かに、数字が多いことに比例してパワーがあるか、といったら単純ではなさそうです。

 数字が大きいことは凄いんですけど、逆にフォロワー10人でもメチャクチャ面白い人だったりするし。1万人でも動員数が半端じゃないとかもそうだし。フォロワーが500万人いるけど、付くコメントが3つとか、そういうのもありますし。

――そう考えると不思議ですね。

 よくはわからないけど、TwitterでもYouTubeでも、その人がステージに立ってマイクを持ったら凄い面白いとか。もちろんみんな凄いんだけど、凄くても埋もれている人もいるし。それがわからないから難しいですよね。芸能人でもどんなにブログとかを毎日観てもらえる人がいても、ちょっと変なコメントを生放送で言ったりするとボコスカにされるみたいな。「数字ってなんなんだろう」って思っちゃうんです。

 昔はチャンネルが少なかったからTVで活躍している人とか、色んなことがわかりやすかったけど、今はチャンネルもSNSもあるから凄く多いし、自分の都合の良い時に観られる環境もありますし…これからの子達って大変なんじゃないかなって思います。

――どこから手をつけていいか難しいと思います。昔だったらまずTVを、という感じだったかもしれませんが。

 だから自分のプライベートを削らなければいけないことが多いですよね。

――チャンネルが多いと共通の話題が減るかもしれませんね。各々色んなチャンネルから好きなものを選んで観るから「あの番組観た?」という話題にはなかなかならなそうというか。

 確かに。僕は、ここから4、5年くらいでチャンネルはメチャクチャ減ると思う。もっと厳選される気がします。「このチャンネルの中で面白いものを作っていったほうが生き抜けるな」という人達が一極化すると思うんです。

――凄く興味深い話です。“遊turing”の話に戻りますが、ンダホさんとのレコーディングはいかがでしたか。

 彼はガチガチに緊張してました(笑)。凄く頑張っている人で純粋なんです。彼が左手を使ってご飯を食べていたから「左利きなんだ?」って言ったら「遊助さんが左利きなので中学の時に練習して左利きにしました」って言うんです。喋っていてフィーリングというか「本当にこの子はいい子だな」というのは最初に楽屋で会った時から思っていました。これからも応援していきたいし、また楽しいことができたらいいなって思います。

――サイプレス上野さんとの遊turingは、どういったきっかけだったのでしょうか。

 サイプレス上野は俺が高校生の時の後輩で、応援団長だったんです。彼はヒップホップ業界でずっと頑張っているので、2人とも音楽をやっているのも何かの縁だからと。基本的にはみんな縁を大事にしています。それで「応援できるような曲を作ろうぜ」と声をかけて。

――遊turingではご縁をとても大切にしているのですね。まるりとりゅうがのMaRuRiさんとは?

 MaRuRiちゃんも僕の曲をカバーしてくれてそれをSNSで聴いて、ダイレクトメールをしたんです。僕が昔から一緒に曲を作っている方の友達が、同じ事務所のボイストレーニングみたいなのをやっているんです。ライブとかレコーディングが始まるからまたその人に教わりに行ったら、マネージャーさんがいて「遊助さんとご挨拶したいという方がいるのですが」と言われて、それがMaRuRiちゃんだったんです。「数カ月前にリツイートして頂いて…」と。それで凄い偶然だと思って、何かの縁だから一緒にやろうと思ったんです。まだどうなるかわからないから一応LINEを交換しておいて。

――SNSでのコンタクトと偶然の出会いがきっかけだったのですね。

 去年ある意味リセットというツアーを組んで次に行くぞという形だったので、セカンドステージとしてはそういう他ジャンルの人ともできたらいいなと。今までは同世代の方々が多かったんですけど、若い方とか応援してくれる世代は10代、20代がいるので、そういう子達にもアプローチできるようにと思ったんです。

 自分が知っているところだけの世界になっちゃうと頭が凝っちゃうから、そういうところから自然に勉強や刺激になったりインスパイアがあったりという、そういうことをさせて頂ける環境を自分でつくらなきゃいけないなと思っていたので、今回の3人とご一緒させて頂きました。

ジャケットも遊turingも「また新しいことを」

『遊言実行』初回生産限定盤B

――今作の遊turingでは3人との素敵なご縁や繋がりかたがあったのですね。

 僕自身も縁だけでここまでやってきたので。音楽も応援してくださる人とのご縁がなかったら始めてないものですから。一つひとつの縁を大事にしてきたつもりだし、一応40歳までやってこれたので、後輩というか弟、妹みたいな子達ともお仕事ができたらいいなと思っていたんです。そうじゃないと自分の方程式みたいなのが出来上がってきちゃうのが嫌ですから。「こうすればいいんでしょ?」みたいな。

 30代の時はどうしても20代の自分自身と比較して戦っている部分も出てくると思っていたので、そこは真摯に向き合いながらでした。自分で作っているものが毎回敵になってくるんです。良いものを作ればそれを超えたいという。

――それは音楽だけではなく?

 ドラマも映画もバラエティもそうです。みんなの思い出に残るようなものを作り続けたいとは思っているんですけど、そこが足かせになったり邪魔くさくなってくる部分もあるんです。どっちもありがたいし、みんなに覚えてもらえるような作品に出会ったり作ることができたりした時に、そこと向き合う戦いはどこかでしていました。

 40代とかセカンドステージとか、50代の先とか、どういうアプローチをしていくかということを考えたいなと思っているんです。だから40代はさらに新しい世界も、もちろん先輩方との交流もして、そういうディスカッションをしながら良いものを作っていけたらいいなと思っています。「この世代」となると、どうしても視界が狭くなっちゃうので。

――新たなステージに進むために様々な視野とスタンスを持たれたのですね。そういった視点ではベストな遊turingのラインナップだと思います。

 みんなに「何でこの3人なの?」って言われますけどね(笑)。

――遊turingも含めて、本作の制作はスムーズに進みましたか。

 全体的にはそうですね。ちゃんとどっしり腰を据えて悩んだり、ということもありましたけど全魂を込められたかな!

――全体的に聴き心地が良いアルバムですよね。

 それこそ色んなジャンルが入ってますしね。最終的にチェックする時に「これ、同じ人が歌ってるよね?」と思ったりして(笑)。

――スウィングビートに4つ打ちの曲、EDM調にバラードなど、カラフルなサウンドが広がる中で凄く遊助さんらしい統一感がある1枚と感じました。

 良かったです。ありがとう!

――それでは最後に、10周年を経て遊助さんが新たなステージへ向かうべく構想についてお聞きします。

 僕がやっている限り“遊助らしさ”というのは絶対残ると思うんですけど、今作のジャケットにしても遊turingにしても、「また新しいことを始めやがったな」というのを感じると思うので、改めてセカンドステージではさらに、という感じです。今すっごい楽しいんですよ。毎年そうなんですけど、40歳になって本当に楽しくて。もちろんみんなも頑張っていると思うけど、本当に頑張って良かったなと思えるような年になっています。

 だから2020年はその力を思い切り音楽とステージで爆発させたいと思うので、41歳の誕生日ライブも横浜に帰ってやるので、それをまず成功させて最高な全国ツアーを全員で仕上げたいと思います。

(おわり)

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