逃げるなら最適の日だ
――様々な考え方に触れた方が僕は良いと思っていますので、どんどん発信していって欲しいです。それが気づきになりますから。さて、1曲目の「Better Day to Get Away」なのですが、この詞はポジティブに捉えて良いのでしょうか。
渡會将士 日頃からなるべくポジティブなことを書こうと思っていたんですけど、今回はその縛りをやめて、ネガティブに取られてもいいかなと思いまして。“Get Away”=逃げるという意味もあるので、そこは自由に捉えていただいてもいいかなと思います。直訳すると「逃げるなら最適の日だ」ということで、ポジティブにも取れると思いますし。
菊地英昭 それを選んだというのは希望があるということだからね。
――様々な捉え方ができそうですよね。個人的に興味深い表現だったのが<空に誘導灯>で、この部分はどのようなイメージで書かれたのでしょうか。
渡會将士 これは非常口の明かりがイメージです。最初に聴いたときから、この曲がアルバムの1曲目になるというのが見えていました。色々とアルバムへのイメージを膨らましていた段階で、現代で怒っているロックンロールって減ってしまったなと感じました。閉塞感からとりあえず“Get Away”するところから作り始めて、それが非常口に逃げ込む感じでした。
僕は村上春樹さんの『1Q84』の冒頭がすごく好きで、あの作品も高速道路の非常口に入ると違う世界へ入ってしまったというものなんです。非常口に入ることってそんなにないじゃないですか? その非日常的なことを示唆するようなアイコンとして誘導灯という言葉を使いました。
――非常口を使用する時って危機的状況だとは思うのですが、そこに辿り着いて脱出することが出来るという希望もあって、この楽曲を象徴していますよね。作詞するとき常に考えていることはありますか。
渡會将士 EMMAさんの歌っているハナモゲラ語の仮歌を聴きながら、メロディと歌詞が一致するものを作りたいなとは思っています。
――その仮歌の音の響きで歌詞が付くことも?
渡會将士 ありますね。「Twisted Shout」の<ハローハロー>は完全にEMMAさんのハナモゲラの歌詞からインスパイアされて(笑)。
――その言葉を引用しつつも、きちんと意味があるものに仕上げなければならないので難しいですよね?
渡會将士 歌詞は小説とは違うと僕は思っていて、起承転結がなくても良いし、逆にあると読み物になってしまうと感じています。そうなってしまうとメロディやリズムに乗せて感じる必要性が薄れてしまう、なので「これはこんなことを歌っている!」と考えながら聴くのではなくて、音楽はもっと感じながら聴いてもらえればと僕は思っています。
――私も昔は洋楽を主に聴いていたということもあり、歌詞も音で捉えていた部分がありました。
菊地英昭 洋楽は曲調とは真逆の感じのことを歌っていたりするので、それが面白かったりするしね。曲によってはインスピレーションで受け取っても良いようなものもあるんじゃないかなとは思います。