才能のセッションで生み出す、brainchild’s 楽曲に宿る生命力
INTERVIEW

才能のセッションで生み出す、brainchild’s 楽曲に宿る生命力


記者:村上順一

撮影:

掲載:18年04月06日

読了時間:約14分

 THE YELLOW MONKEYのギタリスト・EMMAこと菊地英昭のソロプロジェクトのbrainchild’s(ブレインチャイルズ)が11日に、フルアルバム『STAY ALIVE』をリリース。結成10周年を迎えるbrainchild’sは様々なアーティストとコラボレーションしながら現在は第7期として活動。現メンバーは菊地英昭(Gt)、FoZZtone・MW trioの渡會将士(Vo)、鶴の神田雄一朗(Ba)、Jake stone garage・BARBARSの岩中英明(Dr)の4人。今作は8割ほど楽曲が出揃ったところで、楽曲から生命力を感じたことからタイトルを『STAY ALIVE』と命名。この現代で生きるということについてや、メンバーが考えるロックとは何か、など多岐にわたり菊地英昭と渡會将士の2人に話を聞いた。【取材=村上順一】

悲しみに包まれた怒りに変わった3.11

――今作『STAY ALIVE』はメジャーレーベルからのリリースとなりますが、メジャーデビューということで良いのでしょうか。

菊地英昭(Gt)

渡會将士 僕は「2度目のメジャーデビューです!」と、SNSで言ってしまいましたけど(笑)。

菊地英昭 僕に至っては3度目ですから(笑)。出来るだけ沢山の人に知ってもらうには良いことだと思っています。brainchild’sはメンバーチェンジを繰り返して、現在7期と自分たちでは謳っているのですが、このメンバーで、デビューするならこのタイミングしかないかなと。

 表に向かって行くbrainchild’sとして、メジャーでやるというのは凄く良いと思っています。インディーズの良さもあるのですが、メジャーでリリース出来ることによって、きっかけや受け取り方は変わって来ると思うんです。それが良いタイミングで出来たかなと思います。

――今作の制作はいつ頃から着手されたのでしょうか。

菊地英昭 メンバーと合わせ始めたのは去年の10月ぐらいからです。3曲ぐらい出来たら一旦メンバーに送って、「この中のどれかをやるかも知れない」という感じで(笑)。

渡會将士 おっ! なんか届いたぞみたいな。

――渡會さんが歌う曲とEMMAさんが歌っている曲の振り分けはどういう風に決められているのでしょうか。

菊地英昭 僕が曲の持つイメージで決めています。基本的には自分で歌詞を書いたものは自分で歌うパターンが多いんですけど。あとはワッチ(渡會将士)に託します。

――渡會さんは歌詞を書くに当たってプレッシャーなどはありますか。

渡會将士 以前はあったと思うのですが、最近は感覚が変わってきました。今はいかに遊んでる風に仕上げられるかです(笑)。なので、楽しんで出来ていると思います。

――今作のタイトルは『STAY ALIVE』なのですが、テーマはどの段階で決まりましたか。

菊地英昭 最後の最後です。表題曲の「STAY ALIVE」も詞の内容は変わらないのですが、最初は違うタイトルでした。アルバムの曲が8割ぐらい出揃った時に聴いていたら、凄く生命力を感じました。そこで最後の曲も含めて『STAY ALIVE』に決まりました。なので、歌詞を変えたこともあって、ワッチ(渡會将士)にそこだけ歌い直してもらったり。

――この歌詞は他界してしまった人のことを書かれていますよね?

菊地英昭 そうですね。特定の人というわけではなくて、様々なんですけど、その感情を歌にしたいなと思って。ライブを積極的におこなっていこうと思ったのは東日本大震災がきっかけでもあるんです。そこで、死生観というのは僕の中でも常にあったテーマで、必ず入れたくなるんですよね。自分の中にある一つのストーリーを考えて作った曲でもあります。

渡會将士 僕もそれは考えることがあるんですけど、その中でユーモアを入れたくなります。震災の時に実家に帰ってみたら、父が井戸を掘っていて。水が枯渇するというデマが広まっていて、「俺が水を出すんだ!」とか意気込んでいて…。

菊地英昭 まさに“STAY ALIVE”だね。

――あの日ミネラルウォーターが街から消えましたから…。お父さん、生きることに漲っていましたね。ちなみにEMMAさんは震災の日は何をされていたんですか。

菊地英昭 僕は注文していた楽器があったので、それを引き取りに行こうと楽器屋に向かう途中でした。車の中で震災にあって、尋常じゃないなとは思ったんですけど、楽器屋に連絡してあったからとりあえず行ったんです。そうしたら、余震のことも考えて楽器が全部床に並べてあって…。そこで、「こりゃ楽器買ってる場合じゃないぞ」と思って、その日は帰りました。凄い渋滞だったんですけど、勘で抜け道を通ったらスポっと出れて。

――ラッキーでしたね。あの日は帰宅出来ない人が続出していましたから。あの状況の中で音楽を作る意欲を無くされたアーティストやミュージシャンも多かったと思うのですが、EMMAさんはどうだったのでしょうか。

菊地英昭 やはりその瞬間は無くなりましたね。そこから時間が経って悲しみとか出てきたのですが、そこから福島のことなど、怒りに変わったのを覚えています。悲しみに包まれた怒りといいますか…。

――その中で出来たアルバムが『PANGEA』だったんですね。

菊地英昭 そうです。政治や権力とかに憤りを感じることもありますから。自分、怒りっぽいのかな?

渡會将士 そんなことないですよ。僕は怒られたことがないですから(笑)。

――そうなんですね(笑)。そういった憤りなどの感情は大切ですよね? 個人的には無関心が一番良くないなと思っていまして。

菊地英昭 そうですね。だからといって生活を正せと言うつもりはなくて、それらを身に留めることでちょっとずつ変わって行くと思いますから。それの方が僕は一番大切かなと。詞を書くときもそうですけど、「考える意思」みたいなものを置いていくようにしています。

――余白を設けてあげるわけですね。

菊地英昭 そうです。世の中に正しい事なんてほとんどないと思っていて、「僕はこういう風に感じたよ」ということでも良いと思います。それが「逃げだ」とか、「よく知りもしないのに…」と、言う人もいるかもしれないけど、意識の片隅にあるだけでも良いと思います。

――そのなかでも今作に収録されている「地獄と天国」は社会派な内容で、今取り上げた事柄にも通じるものがあります。

菊地英昭 こちら側からの見方が全てではないと思いますから。こういった内容を発信したくなってしまうんですよね。

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