15年の足跡が形になっている、シド アニメの世界観で開けた音楽
INTERVIEW

15年の足跡が形になっている、シド アニメの世界観で開けた音楽


記者:榑林史章

撮影:

掲載:18年04月04日

読了時間:約15分

「ASH」はカラオケで歌いたい

――アニメや漫画はもともとみなさんお好きだと思いますが、自分が好きだった作品のタイアップが決まった時は、嬉しさもひとしおだったでしょうね。

明希

明希 そうですね。たとえば『BLEACH』は、ずっと好きでコミックを毎回買って読んでいたんです。だから、『BLEACH』のタイアップをやらせていただくことが決まったときは、「まさか!」という気持ちでした。もちろんどの作品もすべて光栄で嬉しいんですけど、たまたま自分が読んでいた作品のタイアップが決まると、驚きと同時に他とは違った嬉しさもありますね。

――『黒執事』は、デビューから関わってきて、劇場版の主題歌まで手がけられています。そういった意味では、大きな存在ですよね。

マオ 『黒執事』は、少し特別かもしれませんね。勝手に思っていますけど、一緒に育ってきた感覚です。『黒執事』がアニメ化した最初の作品のOPテーマで僕らがデビューして、お互いにそこからのスタートで。『黒執事』はそれを起点として、舞台とか映画とかいろんな方面に広がっていったので、「俺らも負けてられねえな!」という気持ちになりました。

 一緒に大きくならなきゃなって。「第一期をシドが担当したんだよ」と、『黒執事』側にも胸を張って言ってもらえるような、存在にならなきゃいけないなと思いました。おかげさまで、昨年も最新作の劇場版で主題歌を担当させてもらっていて。先方から「また今回もお願いします」と言っていただけて、すごく嬉しかったです。

 最初に「モノクロのキス」を作った時は歌詞に関して、アニメ制作側の方と原作者の枢やな先生と僕とで打ち合わせをして。「こういう言葉だよね」と、使う言葉を確認する作業があったんです。それから何作か関わらせていただいて、今では「マオさんなら大丈夫なので、お任せします」と、言っていただけるほどの信頼関係を築くことができました。それは、とても嬉しいです。『黒執事』に関しては、僕らも『黒執事』チームの一員になっている感覚です。

――『黒執事』は、原作コミックを何周も読まれている?

マオ 2〜3周は(笑)。それに『黒執事』って、こういう形で出会っていなければ、自分から手に取ってはいなかったと思うんです。それをこうやって、新しく触れさせていただくきっかけをいただいて、触れてみたら面白くてハマってしまって。自分たちで担当しているから思い入れも重なって、どんどん好きになっていきました。

Shinji 『鋼の錬金術師』も、僕はタイアップが決まってから読んだんですけど、読み始めたら面白くて。ページをめくる手が止まらなくなって、仕事にならないということがありました(笑)。

――他のアーティストが同じタイアップを手がけている場合もありますが、そういう時は他のアーティストの曲も聴いたりしますか?

Shinji

ゆうや 僕は聴きます。過去に誰がやっていてどんな楽曲だったのか、と必ず。というのも、そのアニメ作品に対する印象がすごく近くて、もしかしたらすごく似た曲になってしまう可能性もあるわけです。作った後で誰かに指摘されて気づくのは嫌だし、どうせなら人とは違う切り口で作りたいですからね。そういう意味では、誰もやっていない方向性を探るための確認で聴く感じです。

マオ うちは作曲者が3人いるので、まずはバンド内でセレクトして自信があるものを出して、その上でアニメ側でもセレクトがあるので、この11曲というのは、ものすごい数の中で勝ち抜いてきた曲ばかりなんですね。そういう意味でもこのアルバムは、すごく強いものになっているんじゃないかなと思います。

――今作には、LiSAさんに楽曲提供した「ASH」のセルフカバーを収録しているのもポイントだと思います。まず昨年LiSAさんサイドからオファーがあった時は、どんな印象を受けましたか?

マオ ある時、「こういう話がきましたけど、どうしますか?」と。今までそういう形で他のアーティストさんやアニメと関わることはなかったし、シドとしてお願いしますということだったので、それもバンドとして新しいチャレンジだと思いました。LiSAさんも格好いいアーティストなので、「ぜひやらせてほしい」とお返事をしました。

 タイアップにはいろいろあって、縛りが強いものとある程度の世界観指定だけのものがあって、この時はどちらかと言うと後者のほうで、広い世界観だけを提示していただきました。そこにLiSAさんが歌うということ、プラスしてシドが書く世界観という、この3つを上手く一つにすることが、俺たちの役割だなと思いました。だから思い切りコンセプトありきというよりも、ちょっとだけ引いたところから観た印象で、俺は書いていきました。アニメばかりに寄ってもいけないし、LiSAさんばかりに寄ってもいけないし。それにせっかく自分たちにオファーしていただいたので、自分たちの色も出ていないといけないし。

明希 僕はキーヴィジュアルを見ながら曲を書くことが多いんですけど、この時は登場する女性キャラクターの絵を見ながら書いていきました。それにLiSAさんという女性アーティストが歌うので、メロディーのキーも、どのあたりで歌うのがいちばんいい声で響くのかとか、すごく色々なことを考えました。

――その時は、セルフカバーまで考えていたんですか?

明希 その時は、まったく考えていなかったです。でも今回こういうコンセプトのアルバムだったし、スタッフからもこういう提案があって。僕らとしても、徐々に「じゃあやってみようか」と。それで、改めて自分たちらしいアレンジを構築し直して、この形になりました。

 でも、もともとLiSAさんに提供した時点で、アレンジもある程度作っていたんです。LiSAさん側では、それを元にしながらああいうアレンジになったんですけど、元々僕らが考えていたアレンジも別にあったわけで。今回は、それをさらにブラッシュアップしていった形ですね。

――LiSAさんが歌うことを想定して書いた楽曲を、自分で歌うということで、何か意識した部分はありますか?

マオ この曲がLiSAさんを通して世に出たら、俺は「カラオケでキーを下げて歌いたい!」と思っていたくらい、自分でもすごく気に入っていたんです。だから、自分でもこの曲を歌いたいという欲がもともとあったし、LiSAさんからも何かで対談した時に「シドさんバージョンも聴いてみたい!」と言ってくれていて。その言葉も嬉しかったので、俺としては「やった! 歌える!」みたいな感じで、レコーディングは最初から最後までずっと楽しかったです。

明希 すごくいいコラボになりましたね。

マオ 作ってそれで終わりじゃなくて、このベストにまで繋がったのは、すごくいいなと思います。

――初回生産限定盤のDVDには「ASH」のMVが収録されますね。

マオ MVと言うよりも、リリックビデオに近い形で、「ASH」の世界観をヴィジュアル化した感じなんですけど、こういう試みは初めてなので、僕らとしても新鮮です。それにライブ映像もふんだんに使われているので、お客さんは「このライブに行った」とか、懐かしい気持ちでも観てもらえると思います。

――ジャケットは、各アニメの絵柄もあって着せ替えできるのは、アニメファンにも嬉しいですね。

マオ いろんなアニメの関係者の方々の協力があってのことなので、許可をくださったみなさんには感謝の気持ちでいっぱいです。

――ジャケットは、アニメに絡めてテレビの画面を意識しているデザインですね。

マオ デザイナーさんが、いろいろなアイデアを出してくださって、その中でも光っていたのがこのデザインです。写真では分かりづらいですけど、ビックリマンのキラシールみたいな光沢のある素材ですごく豪華な作りです。

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