4人組ロックバンドのシドが10月27日、東京国際フォーラム ホールAで全国ホールツアー『SID TOUR 2017 「NOMAD」』東京公演を開催した。9月にリリースした3年半ぶりのアルバム『NOMAD』を引っ提げ、9月23日の千葉・松戸・森のホール21公演を皮切りに11月25日の北海道・わくわくホリデーホール(札幌市民ホール)まで全国16カ所を回る。各地SOLD OUT続出の中、同公演では『NOMAD』収録曲を中心に「硝子の瞳」や「螺旋のユメ」を含む全20曲を披露。アンコールでは、インディーズ時代のアルバム『憐哀-レンアイ-』から「青」を歌い届け、懐かしの名曲でファンを喜ばせた。来年で結成15周年を迎える。マオ(Vo)は「ここから15周年、シドと生きる意味とかを一緒に探してさ、ファンの皆とシドでまた走っていこうね。ついてきてね!」と呼びかけた。【取材=橋本美波】

折り返しが東京で運命を感じる

マオ(Vo)

 この日はハロウィーン間近でもあり、会場に集まったシドギャ(ファンの名称)の中には魔法使いや、お姫様、かぼちゃを模した衣装などの仮装をしている人も見られた。開演時刻を過ぎ照明が暗転すると、ピアノとストリングスの切ないSEが場内に鳴り響いた。

 暗闇の中、ステージには「SID」と書かれた黄色の電飾が光り出し、マオ、Shinji(Gt)、明希(Ba)、ゆうや(Dr)が白一色の衣装に身を包み登場。彼らのバックには先ほどまで「SID」と書かれていた電飾が、アルバムタイトル「NOMAD」へと映り変わる。そして、マオは大きく息を吸いこみ同アルバムの1曲目を飾っている「NOMAD」を歌い出し、今宵のライブは幕を開けた。眩しいオレンジとイエローの照明が場内を包む中、序盤からファンを彼らの世界観に引き込んでいく。

 「いくぞ!」とマオがファンを煽り、Shinjiの軽快なギターから繰り出されるアップナンバー「XYZ」へ。体を揺らさずにはいられない、ゆうやのドラムビートに、明希のベースラインが絡み合い、マオも「オイオイ!」と声を張り上げた。その声に合わせるようにファンも全力で拳を振りかざし、力強い掛け声を上げていた。

 「東京の皆さん待たせたね。今日は『NOMAD』ツアーへようこそいらっしゃいました。今日でツアーも折り返しで8本目。無事回れています。ありがとう。折り返しが東京ってやっぱ、運命を感じますね。シドって地元は東京ではないけど、東京のバンドなんでね。ここで盛り上がらないと後半はね、辞めちゃおっかなって思っています(笑)。だから盛り上げていきましょう! いいかい?」とマオは挨拶。

明希(Ba)

 そしてジャズテイストの大人の雰囲気漂う「KILL TIME」で、色っぽく歌唱するマオ。メンバーも妖艶さを振りまくように各パートを奏でていき、その姿に釘付けになるファン。5曲目からはTVアニメ『将国のアルタイル』のオープニングテーマ「螺旋のユメ」と劇場版『黒執事 Book of the Atlantic』の主題歌「硝子の瞳」を連続で披露し、メンバーのMCへ。

 明希は「みんな今日最高にいい顔してるね! ただいま東京。地方を回らせてもらったんだけどね、どこも凄く盛り上がって良いライブになってるなって日々感じています。今日は、最高を迎えにいこうぜみんなで!」とツアーの手応えを語る。

 Shinjiは「ここ最近ギターが楽しくてしょうがないです。こんなんで良いのかなって、思っちゃうぐらい楽しくて。『NOMAD』のギターが本当に楽しいので、ギターやっている人とかバンドやってる人は耳コピして欲しいです。今日は大好きなギターで君らに愛と希望を与えていきたいと思います」とギタリストらしいコメント。

 ゆうやは「僕らだけで一生懸命作ったアルバム『NOMAD』がね、みんなとの『NOMAD』になってきてると感じられるライブになっています。今日は一番会場が大きく、人数も多いので、一番大きい『NOMAD』を作っていきたいと思います」と意気込んだ。

 そして、10月23日に誕生日を迎えたマオは、ハロウィーンと自分の誕生日が近い事に脅威を感じていると話し、「誕生日は誕生日でお祝いしてもらって、ハロウィーンはハロウィーンでお祝いしてもらうって、スタイルで行きませんか?」と語り掛けた。

 後半では、哀愁漂う人気曲「嘘」や『NOMAD』収録曲の「低温」、「躾」を演奏していき、シド独特の幻想的な音の世界を作り出していた。その後も、シドお馴染みのアップナンバーを畳みかけていき、熱気が冷めやらぬ状態で全16曲を披露し本編は終了した。

生きてる理由をひたすらお互いで積み上げていく

Shinji(Gt)

 鳴りやまぬアンコールの声に導かれるように、再びステージに登場したシド。アンコール1曲目では、インディーズ時代のファーストアルバム『憐哀-レンアイ-』から「青」を歌い届け、懐かしの名曲でファンを喜ばせた。

 そして、各メンバーのコミカルなグッズ紹介を終えると、マオは「SNSやファンレターをみんながくれるんだけど、その中で1通、あるファンレターが届いて。そこには悩みの相談が書かれていたんだけど、今日国際フォーラムに遊びに来てくれているんだって。その質問が良い質問だったから話すね」と前置きをし、そのファンレターについてマオは語る。

 そして「そこにはね『普段頑張って生きているんですけど、最近たまに生きてる意味とか生まれてきた意味をちょっと見失っちゃうことがあります』という内容が書かれていたの。俺もさ、10代の時はただの空っぽだったし、その時も何も考えないでいたんだけど、そのツケがやっぱり後から来て…。悩んだり、東京来て挫折したりとかもした。何の為に生きてるんだろう? となったときもある。だから、その気持ちは痛い程わかる」とファンレターの主に同調。

 続けて「けど、一つ言えるのは、その子はこの会場に来てくれていて、俺たちのライブを見にきてくれている。それだけでも、生きている意味ってあると思ってる。理由なんて一つじゃなくて良いと思う。俺たちが今日会ったのも一つの理由、次にまた俺たちとどっかで会うのも一つの理由。生きている理由をひたすらお互いで積み上げていくっていう形も俺はありだと思っています」と熱く語り掛けた。

ゆうや(Dr)

 そして「ここから15周年、シドと生きる意味とかを一緒に探してさ、ファンの皆とシドでまた走っていこうね。ついてきてね!」と来年結成から15周年を迎えるバンドを応援してくれている、ファンに呼びかけた。ラストは、『NOMAD』の最後を飾っている温かみのあるナンバー「普通の奇跡」を披露し、多くのファンに笑顔を咲かせた。最後にマオは生声で「愛しています!!」と叫び、今宵のライブを締めくくった。

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