綺麗に構築した汚い部屋、MONKEY MAJIK 和と洋のマインドコラボ
INTERVIEW

綺麗に構築した汚い部屋、MONKEY MAJIK 和と洋のマインドコラボ


記者:村上順一

撮影:

掲載:18年03月27日

読了時間:約12分

声が世界で一番良い楽器

――『enigma』の制作過程はいかがでした?

DICK

DICK 最初に出来た曲が配信アニメ『CYBORG009 CALL OF JUSTICE』のオープニングテーマの「A.I. am Human」で、制作期間だけでいうと結構長かった。この曲はアルバムに向かっていくという意味ではそこまで強いアプローチは考えていなかったんです。だけど、最終的にアルバムが出来上がってみると良い流れに仕上がったなと。

――確かにアルバムを考えずに制作されていたと思われる「A.I. am Human」と「Is this love?」はしっかりと溶け込んでいますよね。

DICK 2曲もタイアップ曲が入っているとそっちに引っ張られそうな感じなんですけどね。でもこの2曲からスタートしているというのも今振り返ると面白いです。

Blaise この18年で一番楽しいアルバムです。もうクレイジーな音もバンバン入れてね。汚いものを入れたかったんです。

――汚いもの?

Blaise いい意味でね(笑)。変わった音をぐちゃぐちゃにして入れると、なぜか良い音が生まれる。過去の作品と比べると本当に汚くなった(笑)。ストラクチャー(構築)でもっと変わる、すごくフリーダムなアルバムだと思う。例えると綺麗に構築した汚い部屋というイメージかな。汚れているんだけど、その汚し方がディレクションされている汚さで。これは今までとは違う面白い作品になったと思います。アルバムのジャケットもそういうイメージがあると思います。

――アートワークも神秘的でスタイリッシュですよね。数字の中に地図が見えますけどこれは?

DICK 最初は「日本的な墨絵っぽいイメージが良いかもしれないね」というところからスタートして、「Around The World」や「fly」「Thank you」でも携わってくれたアートディレクターのShun Kawakamiさんに久々にお願いしまして。色々なパターンを作ってくれたのですが、新しく作ってくれたものではなくて、既にあったこのデザインがすごく気に入ってしまって。数字の中に見えるのは昔の京都の地図で、この数字は京都が首都だった頃の西暦なんです。

――今作の作曲の過程はどのような感じだったのでしょうか。

DICK 楽曲によってまちまちではあるのですが、多くはBlaiseかMaynardがメロディと骨組みを作ってきます。

Blaise 散歩しながら鼻歌で作ったり、「A.I. am Human」なんかはTVアニメ『サイボーグ009』のオリジナルシリーズを見ながら、そこで鳴っていたビートからインスパイアを受けて出来ましたから。そこからパニック障害的な歌を入れたくなって。

――出だしの歌はそういうイメージだったんですね。

Blaise そうそう。そこから『鉄腕アトム』や『マイティ・マウス』のような要素も入れたりね。声の遊びも色々入れたりして楽しかった。

――『Tokyo lights』のイントロでも声を使ったサウンドが印象的ですよね。

Blaise そうそう、あれは僕の声ね。フラットに録った声をこういう風に(実際に歌ってくれている)ピッチシフターで上げたり下げたりしているんです。

DICK 今実際に実演してくれていたけど、そのテクノロジーがなくても自力で出来たんじゃない?

一同 (笑)。

Blaise まあね(笑)。声が世界で一番良い楽器だと思っていて、それを壊すというのも今作のテーマにありましたから。

――声も一つのテーマとしてあったんですね。

Blaise 曲によってね。あと、「Venom」はR&Bと演歌をクロスオーバーさせて、暗いけどソウルフルなところにアプローチしたかった。

――「Venom」は今作の中でも異形な楽曲ですよね。女性のボーカルも入っていますが、これはどなたなのでしょうか。

Blaise 元々自分が全部歌っていました。女性の和を感じさせる声が欲しくなって、いろんな人を探しました。とりあえずイメージのための仮歌を入れてもらったんですけど、この声をエディットして行ったらすごくハマりました。声自体にも悲しみのパッションがすごく入っていました。

 この人はシンガーとして活動している人ではないので、名前は出さない方向でOKをもらったんです。本当はfeat.みたいにしたかったんだけど(笑)。なので、この声はシンセサイザーやサンプリング感覚で捉えてもらうのが正解です。

――なるほど。だからクレジットにも載っていないんですね。神秘的な声だったので気になりましたが謎が解けました。

Blaise 僕らはいい音楽を作りたいので、有名なシンガーだからとか関係ないんです。この人はジャパネスク(日本風)な感じがすごく出ていてMaynardも「これは絶対に入れた方が良い」と言ってくれて。

――「Venom」というタイトルも日本語だと“毒”という意味ですが、どのような意味が込められていますか。

Blaise そう、毒なんだけど悪魔という意味も込めています。自分の中にいる悪魔と天使が喧嘩しているじゃないですか? まあ悪魔の方が強いと思いますけど(笑)。周りに「Venom」はたくさんあるけど、綺麗な人生を送りたいというメッセージがあります。歌詞もカトリックと仏教が混ざっているんだけど、美しい調和が生まれていて。歌詞のきっかけは銀河にいる神様が髪を洗って、その髪から滴った水が地球に落ちて、海や川が生まれたという女神様がいるよという話から出来たんです。

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