4人組ロックバンドのcinema staffが2月14日に、東京・下北沢SHELTERで男性限定ワンマンライブ『cinema staff Presents 箱庭戦争 煉獄のメンズデー』をおこなった。男性限定ということもあり、普段とは違うステージを展開。新旧交えたセットリストで1月22日にリリースした新曲「HYPER CHANT」などを披露し、無法地帯と化したライブのもようを以下にレポートする。【取材=長澤智典】

何処を見渡しても野郎・野郎・野郎、雄・雄・雄…。

(撮影=Machida Chiaki)

 何処を見渡しても野郎・野郎・野郎、雄・雄・雄…下北沢SHELTERという狭いライブハウスの中には、右をみても左を見ても、ステージの上にも、「男」しかいなかった。当たり前だ、「男性限定LIVE」なんだもの。何時もはチケットの争奪戦も含め、女子に二歩も三歩も遅れを取ってしまうところだが、そんなことを心配する必要はない。メンバーは「本当に埋まるのか心配だった」とMCで言ってたが、蓋を開けたら、平日公演にも関わらず後ろまでしっかり埋まっていた。

 この日の様子を見ると、いくら「男性限定LIVE」とはいえ、今後は油断しているとチケット争奪戦が勃発しそうな勢いがあった。この日のライブのために、遠く宮城や北海道からもファンが足を運んでいたり、女性支持が圧倒的なcinema staffとはいえ、こうやって全国へ男性ファンたちがいることを確認できたのは嬉しかったこと。もちろん、それを一番喜んでいたのはメンバーたちだ。

感情のストッパーを壊し、最初からぶち切れていけ!!!!

(撮影=Machida Chiaki)

 この日のライブは、冒頭からメンバーたちのテンションが高かった。いや、いきなり感情のストッパーを壊し、最初からぶち切れていたと言ったほうが正しいだろう。余談だが、ライブが始まる前に、「お前ら、チョコもらってないんだろう」と言いながら、ギターの辻が客席へチョコをばらまいていたこともお伝えしておこう。

 ライブは、「ニトロ」からスタート。雄叫びを上げ、空高く拳を振り上げる野獣たち。目の前に広がる野郎どもの揺れる高波を見たとたん、メンバーたちの意識の中から「冷静」という言葉は瞬時に消え去った。観客たちの熱狂を受け止めるのではない、騒ぐ野郎どもの熱気に刺激を受けた4人は、「お前らそんなもんじゃないだろう、もっともっと来いよ」と心で叫ぶように、歌や演奏をさらに熱く熱くけしかけだした。

 この日は、互いにぶつけあいたくて拳を交わし合うのと同じようなファイティングスタイルなライブだった。「theme of us」「her method」「Poltergeist」と楽曲が飛び出すたび、観客たちは沸きだす熱情を拳に変えガンガン突き上げ続けていた。何より、メンバー自身の放熱する気迫がハンパない。ギターの辻が、背中越しにギターを弾きながらダイブすれば、ヴォーカル&ギターの飯田も、何時しかモニターの上に乗り、客席へ飛び下りんばかりの勢いでがなり立てていた。みんながみんな感情を剥きだしたまま、ガチンコでぶつかりあってゆく。最初のMCの時点から、「男だけのライブってこんな楽しいものだったのか、最高です」と、テンションの高い言葉をメンバーたちは野郎どもにぶつけていた。

女性ファンがいる前ではけっして口に出さない言葉が舞台上から飛び交ってゆく。

(撮影=Machida Chiaki)

 「オイオイ」叫ぶ声が飛び交った「AMK HOLLIC」を筆頭に「diggin’」や「希望の残骸」など、激しくもエモーショナルな曲たちを突きつけ、体感的のみならず、心の内側からもcinema staffは熱を誘発させていた。ソリッドな演奏と胸を熱く揺さぶる歌が気持ちを煽り続けるからこそ、身体中から止めどなく沸きだす熱をすべて放たずにいれなかった。

 この日は、男性のみしかいない安心感があったせいか、女性がいたら絶対にしゃべらないだろう話題や言葉がよく飛び交っていた。MC中に飯田が「男だけを前にしゃべることで、普段はどこか女性に気を使ってしゃべっていたことに気づかされた」と語っていたが、それくらい心を裸にしながら対等に気持ちを交わし合う関係が、この会場で自然と生まれていたということだ。

歌に触れた人たちの感情を熱く、雄々しく昂らせる。

(撮影=Machida Chiaki)

 4人の魂は、燃えたぎる凄まじいエナジーを放熱していた。暴発しそうなくらいどんどん気持ちの熱を膨らませ、観客たちを破裂寸前の興奮状態にまで導いた「熱源」。ハイテンションでスリリングな演奏を突きつけた「小説家」や「pulse」と、cinema staffはライブハウスを一触即発な凄まじい熱を溜め込んだ大きな熱源に変えていた。

 反面、熱狂を求めて煽るだけではなく、「発端」「いらないもの」と続く流れでは、切々とした優しいバラードという表情から始まり、次第にスケールあふれる演奏へ熱を持って塗り上げてゆく様も描き出していた。演奏に合わせ、静から動へと感情の波が大きく変化してゆく様の、なんてドラマチックだったことか。騒ぎ立てるだけではない、内側から沸き上がる高揚もたまらなく気持ちいい。

 この日が初披露、新曲の「HYPER CHANT」は、初めて聞いてもすぐに歌が耳へ飛び込むキャッチーな高揚歌。プロサッカークラブFC岐阜オフィシャルサポートソングとして起用中のように、歌に触れた人たちの感情を熱く、雄々しく昂らせてゆく楽曲スタイルなのが嬉しい。演奏が進むにつれワイルドなマーチングナンバーに触発され、誰もがメンバーと一緒に<オーオーオーオーオー!!>と雄叫びを上げていた。気持ちを歓喜し、高揚へと導いてゆくこの楽曲は、これからも、みんなで一緒に歌い叫べる最高の魂の応援歌になりそうだ。

 ライブの終盤戦は、限界を超え、どこまで熱狂を連れ出せるかの戦いの場と化していた。「エゴ」が、「世紀の発見」が、激しさを引き連れながらも心踊るような表情へ開放していった。本編最後を飾った「exp」でも、光に満ちた空間の中、メンバーと一緒に、誰もが<オーオーオー>と大きく声を張り上げ、同じ熱狂を抱きしめあっていた。

 アンコールに於ける下北沢SHELTERは、もはや完全に無法地帯だった。エモーショナルを通り越し、暴発した感情のままに荒れ狂う演奏を叩きつけるメンバーたち。感情がどんどん剥き出しになっていく。

 互いに裸の感情でぶつかりあった、それくらい下北沢SHELTERが、むさ苦しいけど最高にバンカラな男たちの集う楽園と化したこの日のライブ。男の欲望と本音をぜんぶさらけ出せたライブは、「男性限定LIVE」でしか味わえない風景だ。

 女性ファンが観ることのないcinema staffのメンバーの姿が、「男性限定LIVE」には映し出されていた。男性ファンよ、僕らだけの特権をまた味わうためにも立ち上がろう。きっと女性も男性も、cinema staffを求める気持ちをさらに大きく膨らませていけば、彼らはまた何かしら楽しいことをやってくれるに違いない。

(おわり)

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