cinema staff「今日で完成する」全国で育てた「熱源」ツアー最終
恵比寿LIQUIDROOMで全国ツアー『Release tour 「高機動熱源体」』のファイナル公演をおこなったcinema staff(撮影=ヤオタケシ)
ロックバンドのcinema staffが7月28日に、東京・恵比寿LIQUIDROOMで全国ツアー『Release tour 「高機動熱源体」』のファイナル公演をおこなった。5月17日にリリースされたアルバム『熱源』を引っさげ、6月1日の渋谷WWW Xを皮切りに全国19カ所を回るというもの。16本を9mm Parabellum BulletやSUPER BEAVERら様々なバンドとツーマンで回り、3本をワンマンで展開。この日はワンマンライブでダブルアンコールまで巻き起こり、アルバム『熱源』から全曲と「theme of us」や「Poltergeist」など全21曲を届けた。ベースの三島想平は「『熱源』は今日で完成すると思っています」と語り、LIQUIDROOMを熱狂させた。
「熱源」でツアーファイナルはスタート
恵比寿の駅前は夏祭りで賑わっていた。全国19カ所を回ってきたツアーも遂にファイナル。多くのオーディエンスが、『熱源』完成を見届けようと恵比寿LIQUIDROOMに集結した。ステージ後方にはcinema staffのバックドロップ。開演の定刻を少々過ぎたところで暗転すると、Climb The Mindの楽曲が流れメンバーがステージに登場。響き渡るギターのフィードバック音がフロアに緊張感を与え、「熱源」でツアーファイナルの幕は開けた。オーディエンスもバンドが放つ熱を掴むかのように手をステージに向け差し伸べていた。続いて、ニューアルバムの曲順通りに「返して」に突入。疾走感のあるアップチューンで一気に引き込んでいく。。
ブレイクがスリリングさを与えた初期のナンバー「AMK HOLLIC」。そして、アドレナリン放出の扇情させるナンバー「チェンジアップ」では、高揚感を抑えられなくなった辻友貴(Gt)がギターを置き、フロアへダイブし盛り上がりは加速度を上げていく。三島想平(Ba)が「サッカーは好きか?」と投げかけ、一転してポップさを醸し出した「el golazo」へ。オーディエンスも三島の声に合わせクラップをおこない、ライブならではの一体感。「この笛をしばらく吹けないと思うと切ないですが、吹かせていただきます!」と三島によるゲーム終了を告げるホイッスルから「diggin'」へと流れ込んだ。
「まだやれることあるよな」と三島の言葉から「希望の残骸」を披露。メロディアスかつ疾走感溢れるナンバーはフロアに躍動感を、「メーヴェの帰還」ではイントロからマイナーコードでシンクロ率の高い“キメ”で高揚感を煽り、楽曲の世界へと誘う。そして、ディストーションの効いたベースサウンドに辻のシューゲイズしたギターが絡み合い「ビハインド」に突入。久野洋平(Dr)の攻撃的なドラムを筆頭に、ラウドサウンドで紡ぐ約2分間という衝動。そのサウンドの上に飯田瑞規(Vo、Gt)の凛とした歌声が楽曲をさらに鮮やかに際立たせた。
叙情的な美しいギターのアルペジオから「souvenir」へ。沸々と内面から燃えたぎらせるような感覚をオーディエンスに浴びせていく。メロウなナンバーながらも“熱源”を感じさせる。イントロでの三島の和音による豊かな低音、そこから飯田と辻の複雑に絡み合うギターアンサンブルが印象的だった「波動」。空中を浮遊しているかのような優雅なビートが、会場を包み込むような感覚を与えてくれた。続いて、辻のコーラスが楽曲をさらなる広がりを見せた「salvage me」と展開。メロウなナンバーでの、飯田の伸びやかで太く温かい歌声はまた格別な感情を与えてくれるようだ。
『熱源』は今日で完成する
三島は「この2カ月間は濃密な時間で、いろんな経験を経て還元出来ているツアーでした。『熱源』は今日で完成すると思っています」とツアーを振り返り、18本のライブでアルバム曲が育ってきたことを報告。「オレたちがスーパーマンだ!」と三島の言葉から盛り上がり必至のナンバー「theme of us」では、辻はさらにヒートアップし、ステージ上を動き回り感情をアクションとサウンドの両方で表現。ステージ右から助走をつけて転がるテンションの高さ、高機動熱源体を象徴するかのようなパフォーマンスにフロアも熱狂。
飯田は「昨年は大変な時期だった。スタッフと一丸となって乗り越え『熱源』を完成させて、また一つ成長できたのかなと思います。関わってくれた人たち全部ひっくるめてバンドをやっていきたい。去年を乗り越えてきた僕たちならそれが出来ると思う。みんなが行動に起こしてくれた分、僕たちは全力でもっと大きなもので返していくので、この先のcinema staffも宜しくお願いします」と決意を語り、飯田のディレイギターが幻想的な空間を作り上げ、そこから爆発的なサウンドを浴びせるエモーショナルなナンバー「僕たち」へ。サビではまばゆい光のライティング、広がりを感じさせるサウンドスケープが会場を飲み込んでいくなか、本編を終了した。
アンコールを求める手拍子が鳴り響く。その気持ちに応えるように再びメンバーが登場。三島は「みんなの顔を見てると今日のために生きているんだなと思います」と嬉しそうに話し「西南西の虹」を届けた。そして、バンドとコール&レスポンスをするかのようにシンガロングも響き渡った「GATE」でアンコールを締めた。だが、ヒートアップしたオーディエンスは手拍子でダブルアンコールを求める。ステージに戻ってきた飯田は「すごい! 声の圧で倒れるかと思った」とフロアからの歓声に驚き、三島は「今の俺たち、まだまだ行けるのあるよね? それではハードコアな1曲」と「Poltergeist」を放つ。三島はベースを置きフロアへダイブ。辻はシャツを脱ぎ捨て上半身裸で三島のベースを手に取り激しく奏でる。4人による鬼気迫る演奏で、『高機動熱源体』の幕は閉じた。
(取材=村上順一)
セットリスト
Release tour『高機動熱源体』
7月28日 東京・恵比寿LIQUIDROOM 01.熱源 ENCORE EN1.西南西の虹 W.ENCORE EN3.Poltergeist |