『シネマのキネマ』と題した自主企画ライブイベントを東京キネマ倶楽部で開催

 4人組ロックバンドcinema staffが5月19日、『シネマのキネマ』と題した自主企画ライブイベントを東京キネマ倶楽部でおこなった。17日に最新アルバム『熱源』を発売したばかり。彼らを含むAge Factory、SHE’S、PELICAN FANCLUBの4バンドが出演。それぞれが個性を出し合って熱狂的な夜を演出した。その模様を以下にレポートする。

PELICAN FANCLUB

PELICAN FANCLUB

 イベントのトップを飾ったのが、PELICAN FANCLUB。ハウリングするギター音が始まりの合図だった。大きく息を吸い込むように間を置き、「深呼吸」を演奏。その場の空気を一変させる様に、彼らは歪んだギター音と身体の芯に響くような低音を鳴らした。エンドウアンリ(Gt、Vo)の歌声は、歪む音の中でも透明感を持って響いていた。ノイジーな演奏の上で爽やかな歌声が自由にメロディを紡いでいく。

 止まることなく演奏は「Night Diver」へ。生命力を爆発させるように激しい音をかき鳴らす。熱を帯びた演奏が、観客の心にもドキドキする好奇心と期待感を持たせる。躍動するドラムビートに金属的なギターの音がアクセントを加える。一転、フリーキーなギターの旋律が意識を心地好くトリップさせる。

 「cinema staffに心からの愛とリスペクトを込め、cinema staffの曲をカバーします」と「奇跡」をカバー。原曲の魅力を輝かせつつ、彼らの歌のようにアクセントを加えて演奏していた。cinema staffのファンだろうか、拳を振り上げはしゃいでいる観客も見受けられた。

 最後にPELICAN FANCLUBは「花束」を演奏。ゆったり流れる旋律の上で、言葉を噛みしめるようにエンドウアンリは歌い紡ぐ。みずみずしい歌の中から響く強い意志がしっかりと胸に届く。その穏やかながら強い印象を残し、彼らはステージを去った。

SHE’S

SHE’S

 SHE’Sの演奏が始まると一転、会場中に爽やかな空気が溢れた。観客は一緒に声を上げ、軽快に流れる音とともにはしゃぎ出した。「Un-science」が、会場中の人たちの心を瞬時に純粋な少年少女の様にに変えた。軽やかに弾む音の一つひとつが、井上竜馬(Vo、Key、Gt)の歌声が、一緒に青春を感じようよと誘いかけているようだった。音楽の持つ楽しさを、SHE’Sが幕開けから教えてくれた。

 そして演奏は一気熱を上げた。疾走するギターサウンド、井上竜馬の奏でるピアノの旋律も踊り出す。次第に力と速度を増してゆく歌と演奏。「Freedom」は心を開放してゆくように観客を包み込む。この歌に触れていたら、いろんな束縛の鎖を断つ勇気が身体中から沸き上がってくるようだった。心に飛び立つ自由の翼を、SHE’Sが“Freedom”を授けてくれた。

 6月21日に発売するミニアルバムから、弦楽の演奏が心地好く広がる爽快ナンバーの「Over You」を演奏。井上はアコギを演奏。たくさんの光をフロアー中へ降り注がせるように、SHE’Sは優しく演奏した。一つひとつの旋律や歌声が、光のように隅々に染み渡る。それくらい温かい何かを全身に感じていた。

 井上は「来月でメジャーデビューしてから1年経つんです。昨年、自分たちの企画にcinema staffさんが参加してくださったときが、実はじっくり話をする初めての機会でした。今回は、逆に呼んでいただいてありがとうございます」とcinema staffに礼を述べた。 

 最後にSHE’Sが届けた「遠くまで」が、観客の心に大きな翼を授けてくれた。その二つの翼を広げ、一緒に気持ちを羽ばたかせようと歌いかけてきているようだった。場内に響いた<もっと遠くまで>と歌う声。シンガロングの大団円で彼らはステージを終えた。

Age Factory

Age Factory

 続いて登場した、Age Factoryは「Yellow」を披露。清水エイスケ(Vo、Gt)の歌声は、心の叫びのようだ。いや、慟哭と言ってもいいだろう。「どうしようもない感情を吐き出さないことにはまともでいられない」そんな気持ちを叫ぶように彼の歌声が痛々しさを持って心に響いた。重厚な音の上で、その歌声は感情を解き放つように会場中に響いていた。

 次第に絡み合う演奏は、重い唸りを上げた。伝えたい言葉がある、吐き出したいメッセージがある、そんな想いを裸の音と歌声のままダイレクトに叩きつけているようだった。

 続いたのは「夜の曲を」。Age Factoryが描いた夜の歌は、重苦しい雰囲気を放っていた。闇が降り注ぐといえば良いだろうか、ロマンチックなんかじゃない、だからこそ続いて演奏された「Night Bloomer」が放つ優しい音が、闇を抱えた心に寄り添ってくれた。

 7月26日に発売するミニアルバム『RIVER』の中より、Age Factoryは「left in march」を披露。これまでの重厚な雰囲気とは異なり、小気味よいリズムを刻み疾走するロックナンバーとして昇華。歌も何処か開放的な雰囲気を携えているように、気持ちを弾ませる歌を披露してくれた。彼らの中にある幅広い音楽性を垣間見た。

 Age Factoryは最後に「ロードショー」を演奏。放つ一音一音が身体に気持ちを高ぶらす熱いエネルギーを注いでいた。

cinema staff

cinema staff

 この日のイベントの主賓、cinema staffの登場。「俺こそが熱源だ」と言わんばかりに、飯田瑞規(Vo.Gt)のギターが激しく唸りを上げた。彼の演奏と、ほとばしる熱を重ねるように3人の音が合わさる。激しくも心地好い熱気を抱きながら、cinema staffは「AMK HOLLIC」を披露。ギターの音が響くたびに気持ちが昂りを覚えた。彼らは緩急巧みに曲の表情を描きながら、観客を興奮というドラマの中へ導いてゆく。力強くギターを掻き鳴らす辻友貴(Gt)の音が、もっと騒げるだろう煽る。

 止まることなく演奏は「西南西の虹」へ。cinema staffの演奏する楽曲はますます激しさを増してゆく。「返して」が観客の感情をさらに煽る。演奏を通し、伝わるメンバーの情熱が、美しいメロディーへ昇華していき観客に高揚感を与えているようだった。

 一転、ジャジーなリズムが響き出した。繊細な飯田瑞規のギターの旋律と豪快な辻友貴のギターの音が入り交じり演奏に鮮やかな彩りを与えてゆく。ゆったりと、想いを響かせるように飯田は「warszawa」を歌いだした。込み上がる想いを吐き出すように彼は歌ってゆく。情感たっぷりな歌声にメンバーの演奏が寄り添う。

 飯田は「今日のイベントは個性のぶつかりあい。ここからぶち噛ましていきますんで」と語ったうえで、ライブは後半戦へ。

 三島想平(Ba)の轟くベース音を合図に、メンバーの演奏が合わさっていく。コアな情熱を抱いた「pulse」がフロアーに響き渡る。溜め込んでいた感情を一気に放熱していく飯田。メンバーも、あらん限りの情熱とパワーを音へぶつけていた。その熱気に刺激され、拳を振り上げ騒ぐ観客たちの姿が会場のボルテージを更に上げた。

 狂ったようにギターを掻き鳴らす辻友貴と沸き立つ気持ちを歌にぶつける飯田の歌声の絡み合い。「エゴ」に触発され、観客も体を揺らしていた。抑揚する感情をcinema staffは音のドラマとして描いてゆく。飯田の高揚した歌声は、まるで情熱的で感動的な物語を綴っているようだった。

 勢いを携えたまま演奏は、ラストナンバー「theme of us」へ。観客たちの「1.2.3.4」のカウントを合図に、楽曲を演奏。観客の高ぶった気持ちを心地好く絶頂へ導いてゆくようだった。

 場内を自由に飛び交う音の魂たちと誰もが無邪気にはしゃぎ続けていた。最高のロックンロールなパーティ。理性なんか忘れ、ただただ掻き鳴らされる音の渦の中にまみれていたい、そんな気持ちにさせる。演奏が終わっても鳴りやまない熱狂の拍手が、この日のライブの熱気と熱狂を物語っていた。

 本編を終えても止まない声に答え、メンバーは再びステージへ。最後にcinema staffは「僕たち」を演奏。飯田の奏でる優しい旋律を合図に、再び激しさを増す演奏。緩急を活かした楽曲で、飯田がじっくりと想い込め歌を紡いでゆく。その背景では辻友貴がノイジーなギター音を響かせていた。情熱的で激しく躍動する熱気が会場を包み込んだ。観客が心地好い表情で最後まで彼らのライブを楽しんでいた。(取材=長澤智典)

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