老舗メーカーGibsonが経営危機 改めて考えるレスポールの魅力
先日あるニュースが飛び込んできました。米テネシー州・ナッシュビルの「ナッシュビル・ポスト」が報じたもので、米国老舗ギターメーカーのギブソンが経営危機にあるという。ストラトキャスターで有名な米フェンダー社と並び、ギターメーカーで揺るぎない地位を築き上げた、ギタリストやベーシストの憧れ。1902年に創業し、レスポールやSG、フライングV、ES-335、アコースティックギターでもJ-45やHummingbirdなど数多くの名器を多く作りだした。
筆者もギターを弾くので、20年ほど前にギブソンのレスポール・スタンダードを購入し、今でも愛用していることもあり、このニュースはショックでした。ギブソンは夏までに3億7500万ドル、日本円で約400億の負債を返済できなければさらに、1億4500万ドル、約154億円の銀行ローンも支払わなくてはならなくなるという。SNSでもトレンド入りするほどの反響があった。
ギタリストのレス・ポール氏モデルのギターとして1952年に産声をあげ、その後ギブソンの代表的なモデルとなったレスポールは、そのあまりの完成度の高さから様々なメーカーが参考にし、エレキギターといえばレスポールかストラトキャスターという2大巨頭の一つ。筆者は国産メーカーのレスポールタイプ(他社メーカーが出す場合はタイプとなる)も所有しているが、形も材料もほぼ同じだが“やっぱりギブソン”と思わせる音の説得力がオリジナルにはある。
個人的には内部の配線や木材のセットアップなど含めて、作りは国産メーカーの方が丁寧に組み込まれている印象だが、筆者の音の好みはギブソンに軍配が上がる。それは今までCDやライブで聴いてきた音がギブソンの音から感じられる、記憶の刷り込みもあるからだと筆者は考える。
リアピックアップでの倍音豊かなラウドなディストーションサウンドから、フロントピックアップでのウォームでセクシーなトーンと、ロックからジャズまで幅広く対応できるオールマイティな楽器。センターポジションでフロントとリアの音量バランスを調整すればさらにバリエーション豊かなサウンドを奏でる。他にも音をぶつ切りにしたような効果が得られるスイッチング奏法などレスポールの配線構造から生まれた奏法もある。(編注=ピックアップとはエレキギターに搭載されているマイク)
日本でギブソン・レスポールといえばエンドース契約もありB'zの松本孝弘氏のイメージが強いが、シンガーソングライターの角松敏生氏もレスポールを近年使用していると、昨年リリースしたインストアルバム『SEA IS A LADY 2017』のインタビューで語ってくれた。ストラトタイプを使用している印象が強い同氏だが、長いキャリアの中でレスポールを1本も所有したことがなかったと意外な話をしてくれた。
そこから、レスポールの歴史を調べ「レスポールはジャズギターとして作られた失敗品だったという歴史を改めて知りましてね。ジャズギターとして作ったのに、出力がうるさいという事で当初ジャズギタリストには受けが悪かったという出自が面白い」と、歴史を深掘りしていく角松氏の探究心にも感銘を受けた。
1960年に一度生産が中止となりLed Zeppelinのジミー・ペイジ氏やエリック・クラプトン氏、Aerosmithのジョー・ペリー氏、GUNS N' ROSESのスラッシュ氏らが使用したことにより、レスポールをロックギターとしてのイメージを決定づけた。多くのレジェンドと呼ばれるミュージシャン達が使用してきたギブソン。この経営危機を乗り越え、これからも人々を感動させる良い楽器を作り続けて欲しいと思う。【村上順一】
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