長崎出身4人組バンドのLAMP IN TERRENが19日に、シングル「花と詩人」を配信リリースした。2018年一作目となる新曲は昨年のツーマンツアー『LAMP IN TERREN TOUR 「FOR TRUTH」』でも披露してきたバラードナンバー。24歳最後の作品で松本 大(Vo、Gt)はこの曲に、様々な捉え方があると話す。今年は渋谷Star loungeで『定期公演ワンマン「SEARCH 」』や4大都市を廻るツアー『LAMP IN TERREN ONE MAN TOUR 2018 「MARCH」』など、新しい試みのライブも開催する。昨年の上半期は“死”そして、下半期を“再生”だったと振り返る松本に現在の心境を語ってもらった。【取材=村上順一】
バックボーンが弱いことがコンプレックス
——2017年を総括するとどんな年でした?
上半期は自分自身が死ぬまでで、下半期はその再生でした。過去の自分を否定するわけではないですけど、いろいろなことがあったから今があって、“自分というものが死んだ”というのも事実なので。地獄の淵から戻ってきているようで、自分に終止符を打つ上半期でした。ネガティブに聞こえると思うのですが、今こうやって話せる自分がいるので、プラスだと思っていますけど。
でも、『fantasia』という作品は、「開けたね」とか良い評価を沢山言ってもらえて、25歳になるまでの集大成みたいなところもあったので嬉しかったですね。でも、自分が作り上げて来ようとしていた人物像は死にましたけど。
——そこが僕は意外でした。松本さんは勝手に「誰にもならない」という風に感じていたので。
でも、自分じゃない誰かになることに必死でしたから。全てにおいて“足りない”と思っていたので。周りと比べると本当に劣等感が凄かったんです。
——どこに劣等感を?
自分は劣悪な環境で育ったわけでもないし、学校に行かなかったぐらいで幼少期の自分にドラマがあったかというとそうではないんです。昔から自分のバックボーンが弱いなと感じていて…。
——その人生の深みみたいなものが、歌や曲に出るから?
僕は出ると思います。今、いろんな方から嬉しいことに「良い声だね」とか「良いメロディを書くね」と言って頂けるんですけど、そこに甘んじていたところもあったなと思っていて。
——天性の武器だと個人的には思うので、そこは甘んじても良いのでは?
この声や曲を持ってして最強を目指す、周りと違うことをやろうとかではなく、王道で勝負しようみたいなことでしたら、良いのかもしれないですけど。わかったことは、自分が中心でいたいと思っていたけど、自分が向かうのではなく、中心に引き寄せるものだなと。そこに向かっている自分が気持ち悪く感じてしまって…。
『fantasia』が出来た瞬間にすごく開けたんです。良いメロディが書けたし、歌詞も昔より分かりやすくなったと思います。でも、それが「何か違う」と感じている自分もいるんです。曲としては良いけど、自分が書くものとして違和感があって。俺である意味がないと言いますか。何か空っぽになっちゃいまして。
——そこから、ワンマンツアー『ONE MAN TOUR 2017 in“fantasia”』を終え25歳を迎えて、節目みたいな感じもあって再生に向かった?
節目というよりは、単純に僕が25という数字が好きなので大事にしたいだけだったんですけど。2と5が好きで、年齢で行ったら次その節目が訪れるのは52歳ですね(笑)。
——その再生から半年ほど経ちましたが、変わった部分はあります?
ちゃんと話せるようになりましたね。極端ですけど、前は自分の理想の化身だったので、ちゃんと自分として話せるようになったという感覚です。今は本当に松本大だなと思っています。
——ちなみにその理想像というのは実在する人物?
いえ、実在はしていなくて自分が思い浮かべている想像です。なので、自分の中でこういう風に話さなきゃいけない、といったようなルールみたいなものが存在していたようにも思えます。
それが違和感に感じていた部分もあったはずなのですが、その違和感すらも感じなくなってしまって…。
——でも今はそれを取っ払って、素の自分で話せていると。
窮屈じゃなくなった感覚はあります。聞かれたことに関しては全力で返しますけど、前は「自分から話すことはない」というスタンスもありました。でも、そうではなくなって自分から話せるようになったと言いますか。なので、改めていろんなことが面白いなと思っています。
——歌や曲にも相当な変化を与えるのでは?
そうですね。ライブが一番変わったと思います。
——確かに。昨年11月におこなわれたツーマンライブで披露した「地球儀」では客席に降りてきてました。今までの松本さんならありえなかったですよね。
やらなかったですね。自分の固定観念みたいなものが、どんどん取っ払われている感じです。客席にいくパフォーマンスは、お客さんのそばに行きたいというわけではないんですよね。あの瞬間は曲が主役になる感覚があって。曲が主役になる時って聴いているお客さんが主役になると思っていて。その世界、曲が“森”だとしたらその“森”を体感できる状態です。
その「地球儀」は自分の理想を取っ払いたいという願いから作った曲でもあります。理想像や現実から解放されるのが僕の最大の願いです。みんなでジャンプしたり、盛り上がるのって自分が想像していたものに近いんですよね。最終的にクリス・マーティン(コールドプレイ)みたいになれたらいいなと。