シンガーソングライターの片平里菜が20日、東京・ZeppDiverCityで『片平里菜 ライブハウスツアー2017-2018』のツアーファイナルをおこなった。このツアーは、全国10カ所をバンド編成で巡るもの。昨年12月にニューアルバム『愛のせい』をリリースしたばかりという事もあり、セットリストにも注目が集まっていた。「葛藤も皆に見守ってもらったツアーでした」と振り返った片平は、可愛らしさと憂いの両面を備えた声を武器に集まった観客を魅了した。この夜の模様をレポートする。【取材=小池直也】

ビジョンが揺るぎない物になったツアー

(撮影=山川哲矢)

 フロアを埋め尽くした観客たち。男性客の方が多い印象だが、女性客も少なくないと感じた。開演時間になると、バンドメンバーが入場。ホップな「Party」でツアー千秋楽が始まった。可愛げもありながら、憂いも感じさせる声が彼女の特徴だろう。続くはブルージーなイントロから始まる「BAD GIRL」。跳ねたビートに合わせて観客もクラップ。効果的に喉を鳴らして歌う片平に色気がある。

 「今日はツアーファイナルです。楽しんでいきましょう。宜しく御願いします!」と挨拶してから「カフェイン」へ。アコースティックギターを弾きながら可愛げに歌う片平。エンディング後、「女子!」「男子!」と男女別に呼びかけて反応を得てから「ショッピングしたくなるような歌を歌おうと思います」と告げて披露したのは「lucy」。キラキラした質感のサウンドでウキウキ感を表現する。勢いのあるドラミングも曲のスパイスになっていた。

 しっとりと歌い始まったのは「Love takes time」。後半にかけて段々と盛り上がっていく。最後はフロアも巻き込んでの合唱となった。

 続くMCでは「今回のツアーはアルバムツアーではないんですけど、これまでの楽曲と新曲もお送りしたいと思います。時間をかけたからこそ、良い作品ができました」と話し、「ツアーをしながら楽曲を作って、同時進行だったので、葛藤とかも皆に見守ってもらったツアーだなと思いました」と今の気持ちを届ける。

 そして、演奏が再開される。ノスタルジックなリリックが切ない「子供時代」、アップライトベースが入った優しいサウンドで演奏された「舟漕ぐ人」。「なまえ」はピアノとデュオでしっとり聴かせた。片平の声とピュアなリリックが心に直接届くかの様だった。

 「ファイナルだぜ、楽しめてるかい?」とおどけてから、片平はツアーについてもう一度振り返る。「日々の感情をわーっと出して投げかけて。お客さんもそれを受け止めてくれて。『今日、里菜ちゃんどうしたんだろう?』という反応もあったりしたんだけど(笑)。でもツアーやってよかったなと思います。いっぱい考えて、皆が応援しに駆けつけてくれて。自分のビジョンが揺るぎない物になってきたのも皆のおかげです」としみじみ語った。

千秋楽らしい『お嬢ズ』の演奏

(撮影=山川哲矢)

 後半戦で演奏されたのは、最新アルバムのリード曲「愛のせい」。片平が弾き語る冒頭、サビからはバンドが合流する。ねじれたメロディのストリングスの音も加わって曲が展開していった。エンディングは彼女が心に抱えている身の周りや社会の矛盾を叫ぶ。間を空けず、続いての曲は「ラブソング」。「愛」で曲が結ばれた形だ。バンドの派手なイントロからスタートし、マイクを掴んだ片平が歌い上げた。

 ここでサポートメンバーが紹介される。『お嬢ズ』と名付けられた豪華なメンバーは、キーボード・伊澤一葉、ベース・須藤優、ドラム・玉田豊夢、ギター・戸高賢史。安定感のある演奏とは裏腹に片平とバンドメンバーとの軽妙なMCは見ていて微笑ましかった。

 ライブは佳境へ。片平の代表曲ともいえる「女の子は泣かない」では、ワンコーラス歌ってから「トーキョー!」とシャウト。それに歓声を上げるオーディエンス。「Hey boy!」ではリズミカルな歌い回しがファンキーだった。後半部では各バンドメンバーが贅沢にフィーチャーされ、コール&レスポンスの場面では“Sっぷり”を発揮した片平がもっと大きな歌声を観客に求めた。

 明るく軽快な「Oh JANE」。片平がクラップを促して「Come Back Home」はエンディングのハミング部分を全員で合唱。そして「最後は皆に寄り添う様に『結露』を歌って終わります」と片平が予告し、「結露」で本編の幕が下ろされた。

 その後、アンコールが起きて片平が再登場。彼女を含めた『お嬢ズ』のメンバーを改めて紹介する場面では、戸高がラップを披露するなど大盛り上がり。和気あいあいとした雰囲気だった。そしてアンコールのセットは「異例のひと」からスタート。ぽつりぽつりと弾き語る片平。即興的に伊澤と戸高が加わり、ツアーファイナルならではの特別な演奏となった。

 続く「始まりに」はギターを弾きながら歌い上げていく。アウトロは5人で向き合いながらタイミングを合わせてエンディングに着地した。これにてバンド編成での演奏は終了。さらに片平は趣向の違う2本のツアーの開催を宣言し、「デビュー5周年で、今年はにぎやかな1年になると思いますので、どうぞ宜しくお願いします」とMC。

 本日最後の楽曲「からっぽ」はたった1人で歌う。最小限且つセンスの良い音選びのギターのアルペジオ、片平の声が心に染み込んでいく。素朴な日常の想いを綴った歌に胸を掴まれて、この日のライブは終わりを迎えた。

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