ずっと模索していた、喜多村英梨 “声優の歌手像”という個性
INTERVIEW

ずっと模索していた、喜多村英梨 “声優の歌手像”という個性


記者:佐伯敦史

撮影:

掲載:18年01月23日

読了時間:約10分

何か理由や意味を持たせたい

――今回のCDは「妖精」というテーマで作られたとか。

 カップリングの「fairy∞world」は、タイトルからしてすごくファンシーなイメージがあるらしく、10月のソロライブで披露した際にバンドメンバーに音源を送ったら「想像と全然違ってた!」と驚かれました(笑)。元々、この曲は『gdメン』のEDテーマを想定して作った曲で、私の大好きなプログレッシブで「これぞクールビューティー」という世界観が最高なんです。

 歌詞は、まるで好きな同人誌を描くような感覚でスッと書き上げました。2サビが終わった後に私の声がグロウルで入っているのですが、普通は女性声優アーティストはこういう歌い方はあまりしないみたいで。「私と分からないように加工してもらっていいですよ」と言ったところ、アレンジャーの方が「これ、メッチャいいですね!」とすごく褒めて下さったんです。今回の制作活動全体を通して言えることなのですが、スタッフやクリエイターのみなさんが非常に前向きにとらえてくださったこともあり、難産することなく作れた1枚になりました。

――「ViViD DESiRE」はこれまでの喜多村さんの楽曲に一番近いものを感じるナンバーです。

 「これぞキタエリ」という王道ロックを作っていただきました。この曲は通常盤にしか収録されないのですが、私を見てくれているみなさんへ改めて贈るメッセージが込められていますので、ぜひ聴いていただきたいですね。

 カップリングひとつとっても、何か理由や意味を持たせたいというのはずっと思っていることですし、「この曲を歌った先になにがあるのか? 何を得られるのか?」など、自分の中で整理整頓しながらやっています。その具現化したものが今回の1枚だと思いたいですし、そう思っていただければ幸いです。

――作詞をする上で触発された方はいますか?

 椎名林檎さんやマキシマム ザ ホルモンさんは独自の世界観を持たれていて、すごく参考にしています。椎名さんは言葉選びが本当に独特で漢字の使い方などは彼女の影響を受けた部分も大きいですね。マキシマム ザ ホルモンさんは自分たちがいいと思ったプロジェクトや作品をご自身でブラッシュアップしていくところがすごいと思います。

――喜多村さんもプロデューサーとしての一面もお持ちですよね。

 プロデューサー…というのは、少々誇張表現かも知れませんが、常に自分の考え方や方針がぶれないように、一貫してやるべきことを頭に入れて、日々過ごしています。そんな私の意思を尊重してくださる方がいるおかげでこうしてアーティスト活動ができていますし、それは本当にありがたいことです。

――昨年はファンクラブも発足しました。

 こちらからみなさんに与えるだけではなく、ファンの方が自分から情報なり、何なりを取りに行く場を作りたいと前々から思っていて。私自身はファンクラブを持って活動するようなタイプではないとは思いつつ(笑)、そういう場所を設けるのは大事だという思いで、やらせていただくことにしました。

 まだファンクラブでどんなことをしていくか、具体的なことは決まっていませんが、楽しみにしていただきたいですね。

――最後にメッセージをお願いします。

 15歳のときからこの業界に携わらせていただいているので、人生のほとんどを声優業に捧げている感じですね(笑)。昨年までは「私の個性って何?」といろいろ考えて、迷走もしていました。この業界で生きていくためには安定感だけではなく、自分の中で確固たるものを作っていく、持つことが次へのステップに必要だと思いながら駆け抜けてきました。歌手活動においても「声優として活動する傍らでアーティスト活動をする」ということではなく、「声優がおこなう歌手活動」という個性を出していきたいです。

 今年は、私のことを知らない人が「喜多村英梨って誰?」と思ったときに「私はこういうものが好きで、こういう服を着て、こういう芝居をして、こんな歌を歌います」とはっきりと胸を張って紹介できるような人間になりたいと思いながら、これからも日々精進してまいります。

(おわり)

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