ずっと模索していた、喜多村英梨 “声優の歌手像”という個性
INTERVIEW

ずっと模索していた、喜多村英梨 “声優の歌手像”という個性


記者:佐伯敦史

撮影:

掲載:18年01月23日

読了時間:約10分

 声優アーティストの喜多村英梨が24日に、2018年第1弾シングル「妄想帝国蓄音機」をリリースする。声優としての作品に『フレッシュプリキュア!』の蒼乃 美希/キュアベリーや『魔法少女まどか☆マギカ』の美樹さやか役など多数出演。今作はTVアニメ『gdgd妖精s(ぐだぐだフェアリーズ)』NEXTシリーズの『gdメン』のオープニングテーマで、ラウドロックサンドでアニメの持つ独特な世界観とリンクし、喜多村英梨のサウンドを新たな境地へ押し上げた1曲。声優だけではなく歌手、作詞でも才能を発揮する彼女の音楽遍歴や活動スタンス、こだわりなどを聞いた。【取材=佐伯敦史】

『新世紀エヴァンゲリオン』でシンフォニックな楽曲にも興味を持った

――まずは簡単にどのような活動をしているのか教えてください。

「妄想帝国蓄音機」通常盤

 昨今の声優業界・声優のイメージとして「アニメのキャラクターに声をあてるだけじゃなく、歌を歌ったりイベントに出演したり、露出が増えてきた」というのがあるかと思いますが、幸いなことに、私がデビューした当初からそのような環境が既にありました。また、いわゆる「キャラクターソング」と呼ばれる、自分が演じたキャラクターの視点に立った曲なども歌わせていただいたり、非常に多岐に渡った活動をさせていただいてます。

――小さいころはどのように音楽に触れていたのでしょう?

 両親が音楽に近いところに携わっていたというのもあるかと思いますが、物心ついた時からよくカラオケに行っていました。親からは「洋楽だけ歌え」だの「発声方法はこうしろ」だの、遊びというよりはレッスンに近かったかも知れませんね(笑)。そんな親の影響もあり、クラブミュージックやトランスなど、様々なジャンルの音楽に触れる機会が多かったです。

 元々、絵や漫画を描くのが好きで、小中学生になると、いわゆる「オタク」の道を進むようになっていったんです。それで絵を描く際に作業用BGMとして音楽をよく聴くようになったのですが、最初はゲームのサウンドトラックにハマっていました。中でも『デビルメイクライ』というアクションゲームの曲がお気に入りで「これって海外のデスメタルやん!」と思いながらいつも聴いていましたね。ちなみに周りの同級生たちはJ-POPなど、流行りの音楽にお熱でした。

 そういったゲーム音楽に興味を持った流れで「この曲はどんな人が歌っているのだろう?」とインターネットなどで調べるようになってから「あまり知られていなくても、世の中にはいい曲がたくさんあるんだ。もっと知りたい!」と思うようになりました。

――同級生が聴いている音楽とはちょっと違うジャンルを求めていったと。

 ファンタジックな世界観に魅了されていたということもあったので、ビジュアル系のバンドはまさにピッタリで、次第にハマるようになりました。音楽ももちろんですが、その衣装や持っている雰囲気がドンピシャだったんです。またさらにどんどん調べていくうち、林原めぐみさんや水樹奈々さんといった、声優という職業でありながら自分の世界観を持って歌っている方々に出会ったんです。

――声優としての仕事を意識し始めたのはその頃だったのですね。

 そうですね。「私の場合はどんなジャンルの音楽が合うのかな?」と本格的に考えるようになったのですが、ミクスチャーロックに出会った際に「私は重たくてうるさくて、この世のものではないことを歌っている曲が好きなんだ」というところに行き着きました。また『新世紀エヴァンゲリオン』というアニメ作品で、劇中でいきなりクラッシック音楽が流れてきたとき、とても衝撃を受けたんです。そこでシンフォニックな楽曲にも興味を持つようになりました。

――喜多村さんが現在歌っている楽曲のルーツにもなったと。

 でも、一方で葛藤を感じているところもあるんです。キャラクターソングとしてライトでポップな曲を歌うときに「アニメファン・声優ファンはこういうのを求めているんだろうな」というのを感じることが正直あります。だからこそ、喜多村英梨名義で歌わせていただく際には、私の人生を歌にどれだけ落としこめるかにこだわりたいんです。

――キャラソン、喜多村さん名義の曲それぞれにいいところがあります。

 以前、とあるライブの舞台監督さんに「喜多村さんは、ライブではどんなステージをイメージしてるの? 喜多村さんが歌っている曲はすごくバラエティに富んでいて、ライブで一貫した演出を考えるのが難しいんだよね」と言われたことがありまして。声優としては演技の幅が広いという意味で「七色の声を持っています!」と言えるのが理想かも知れませんが、とは言え「喜多村英梨と言えばこのキャラクター、この役だよね」とイメージしてもらえるようなキャラクターがいて欲しいのが正直なところでして。それはアーティスト活動でも同じだと思うんですね。私が歌うべき曲はどんな曲なのか? それはソロで歌うようになってからも、ずっと模索していたことです。

この記事の写真

記事タグ 

コメントを書く(ユーザー登録不要)

関連する記事