<記者コラム:オトゴト>
 最近の取材の中で考えさせられることがあった。それはLUNA SEA、X JAPANで活躍するギタリスト・バイオリニストのSUGIZOさんのインタビューで現代社会の危うさについて語ってもらった。詳しい内容はインタビューを読んでもらえればと思うが、その中で本質に触れる、真理を追求するという事柄が特に胸に響いた。

 「無知は罪」だと話すSUGIZOさん。今でも物事を探求する姿勢には、ただただ頭が下がるばかりだ。“考える”ということが低下していて、何事も簡単、手軽な方に向かってしまっているという。確かに音楽も制作においては実機を使うことがすごく少なくなってきたと感じる。

 例えば、昔はシンセサイザーもハードを使用し録音、ギターもアンプを鳴らしてマイクで録っていたが、今ではパソコンのソフトシンセやアンプシミュレーターなどで代用するケースが多い。それが悪いわけではなくケースバイケースだが、本物を知らずに使っている人が現在は多いという。

 入り口としては問題ないが、そこで満足してはいけない。しっかり本物も体験した上での選択が重要で、知っているか知らないかで大きな差が出来てくる。個人的にさらに問題なのは面倒くさいからといって手軽な方に行ってしまうことだと思う。それの繰り返しによってどんどん作品のクオリティは下がる一方だ。先日公開されたデーモン閣下の新譜『うただま』のインタビューでも「お手軽ではない、生の良さを感じてもらえたら嬉しい」と話していたのが印象的だった。

 長く残っているものに、簡単に出来たものはないと思う。それなりの労力と試行錯誤の積み重ねで形成されているものがほとんど。きっと音楽もお手軽に出来たものでは感動は出来ないと私は思う。リスナー側ですらレコードのように、再生までに手間がかかるもので聴くと、曲の聴こえ方は大いに変わるのだから。【村上順一】

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