ファゴットの様な人間になりたい、女優・間宮夕貴が語る音楽
INTERVIEW

ファゴットの様な人間になりたい、女優・間宮夕貴が語る音楽


記者:桂 伸也

撮影:

掲載:17年12月06日

読了時間:約14分

仕事が一番。入江監督との戦いで得た成長

――撮影の話に移りたいと思います。以前、入江監督にインタビューをさせていただく機会があり、とても物腰が低い方だ、という印象を受けましたが、映画『22年目の告白―私が殺人犯です―』の舞台挨拶では、藤原竜也さんや伊藤英明さんが撮影でかなり苦労されたということを言われていて(笑)、仕事、撮影という面に対しては、かなり厳しい方なのかと感じました。その意味では『ビジランテ』も、皆さん大変だったのでは、と思いました。作品でも激しい乱闘シーンもあり、特に女優の方は皆さん、体を張って演技されているというところもありましたね。今振り返って、出演された感想などはいかがでしょうか?

間宮夕貴(撮影=大西 基)

間宮夕貴(撮影=大西 基)

 想像以上に「あれ、撮影ってこんなに大変だったっけ?」と思うくらい大変ではありましたね(笑)。眠れない日々が基本ずっとあたりまえで、1日で睡眠1時間取れたらラッキーという感じだったので。もう撮影の時間的に朝の9時、10時に終わって、12時集合、休憩が2時間みたいな。

――それはかなりキツい感じですね。仮眠すら難しいくらいで…撮影期間はどのくらいで?

 私自身は5日間くらいかな。

――ではその間は、かなり濃い時間を?

 濃いですね。何というか、1日は24時間ですけど、大体6~7時間は寝ているわけじゃないですか。だから18時間ほど、それでもその時間ずっと一緒にいたとしたら、結構濃い。それが24時間ずっとみんなと一緒で、1時間だけ会っていないという感じなんです。実際には1日しか経っていないのに、感覚的には4日くらい経っている感じでした(笑)。

 撮影の感覚だと2週間くらいそこにいる感じなんだけど、実際には4~5日とかだったので、あれ?体内時計と合わない?みたいな。だから『ビジランテ』の後遺症はすごかったですね。ずっと朝9時までから、次は12時から…という生活だったので、7、8時くらいまで寝られない感じになりました。しばらくは朝の8時から寝て、昼の3時とかに起きて「あ~もう寝なきゃ」って(笑)

――精神的にはどうでしょう?

 それもすごくありましたね。入江さんはOKを言わないし、かつ何かダメなところも言わないで「カット!はいもう一回」「ヨーイ、はい!」みたいな感じで追い込まれて(笑)。それでおのおのに「何がダメだったんだろう」「今は自分がダメだったのかもしれない」「こうしよう」「ああしよう」そして「ダメだ、もうネタがない!」みたいになっちゃって(笑)、最後にはひねり出し尽くして、みたいな感じで撮影していました。

 でもその分入江さんは、相当強いこだわりをもってやっていたと思うんです。よく現場で大森さんや桐谷さんとも「監督がそこまで決めてやっているんだったら、自分たちもそれを超えるものを出していかなきゃね」ということを、お話ししていましたし。「なかなかこういう監督って、出会えないものだから大切にしないとね、こういう現場も」というお話もいただきました。

――ではまさしく今回は、入江監督との戦いという…。

 本当に戦いでした(笑)。でも本当に良い戦いでした。みんなが足を引っ張り合うような悪い雰囲気じゃなくて、もう「良くしていこう!」という戦いだったので。

――役柄を演じるにあたって、最初に言われた“私はサオリだ”というところはピッタリはまって、気になったのは、入江監督が何も言わなかったところだと?(笑)。

 そうですね。ずっと未だにその話をしていないので、どう思われていたんだろうな…と気になっています(笑)

――いつか直接おたずねしてみてはいかがでしょう?

 そんな、怖くて聞けないです(笑)。まあ怖くはないんですけど、意外に「何も考えてなかった」といわれるのもショックだし、黙ってそのままあやふやにしておいた方がお互いにいいんじゃないかと(笑)。でも正直答え合わせはしたいし、興味はあるんです。どう思っていたんだろう?って。

――ご自身としての評価としてはいかがでしょうか? 近年では様々な賞も受賞されるなど、徐々に女優としてのキャリアを確立されているところかと思いますが。

 いや~そんな誉め言葉は、私自身に対しては全く無いです。撮影の時はそれがマックスだったんですけど、今見れば“この時、こうすればよかったな”と思うこともある。ただそう思えたということは、またこの短期間で成長できているのかなと思うし、もっとちゃんとやらなきゃとも考えるようになったので、この作品で根性を叩き直された気がします(笑)。

 一方で、撮影で追い込まれた瞬間が多かったこともあって、“何もない”というところから何か作り出す、という。そういう瞬間って、どんな人生でも、なかなか出会えない。スポーツ選手だとまた違うかもしれないけど、なかなか出会えないことだと思いました。

――“入江マジック”ですね。マジックといいつつ“何も言われなかった”だけかもしれませんが(笑)。

 プラシーボ効果みたいなものかもしれません(笑)

――タイトルの『ビジランテ』とは、“自警団”という意味があります。このストーリーからは「自分の大切なものを、最悪は法を犯してでも守る」という雰囲気があるのかと感じましたが、間宮さんにとって現在「何を差し置いても守らなければいけないと思うもの」はありますか?

 何でしょうかね? 家族かな。

――ご家族とはかなり仲が良いのでしょうね。

 すごく良いです! この前も映画を見に行ってくれたりとか、DVDを買ってくれたりしているので。家族LINEがあって、毎日会話もしているし。

――やっぱりすごく応援もしてくれるのでしょう。まさしく“間宮家ビジランテ”という感じで(笑)。

 うん…でもなんか“仕事だ!”と言われたら、家族も捨てる自信もあったりして(笑)。

――そうなんですか? それはショッキングな…。

 そんな気もするんです。仕事が一番かな、今は。何を捨ててもやろうというくらい、仕事が楽しいんです。だから彼氏に「嫌だ!やってほしくない!」と言われても「関係ねえ!」と。

――「仕事と俺、どっちをとるんだ!?」と言われたら、迷わず「仕事だよ!」と?(笑)。

 言いますね、「あたりまえだろ!?」みたいに(笑)。それに例えば家族から「お父さんが死んだ」と言われても、その日が撮影だといわれたら、撮影に行く、多分行ってしまうだろうな…という気がします。

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間宮夕貴(撮影=大西 基)
間宮夕貴(撮影=大西 基)
間宮夕貴(撮影=大西 基)

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