生きてるだけで、ほんと疲れる……。2006年に劇作家・小説家の本谷有希子さんが発表した同名小説を実写映画化した『生きてるだけで、愛。』は、鬱による過眠症の影響で引きこもり状態の主人公・寧子(趣里)と、出版社でゴシップ記事の執筆に追われながら寧子との同棲を続ける津奈木(菅田将暉)の関係を描いていくラブストーリー。過剰な自意識に振り回され自分自身さえコもントロールできず、現実との折り合いが上手くつけられない女性の葛藤を、実写版ではリアルな人間関係とともに描いた渾身作だ。
その主人公の寧子を演じる女優が、現在注目女優として引く手あまたの趣里。テレビドラマ『ブラックペアン』での好演も記憶に新しい趣里演じる寧子は、自分にも他人にも嘘がつけず、真っ直ぐすぎるためにエキセントリックな言動に走ってしまう女性だ。ともすれば観客に嫌われてしまうかもしれない難役だが、物憂げだが圧倒的なオーラで役柄を演じ上げ、自身のキャリアの代名詞になるであろうキャラクターを、優しくもパワフルに表現した趣里。しかし、そこに至るまで彼女にも似た葛藤や、多大な影響を受けるという音楽の力があったと本人は語る。【取材・撮影=鴇田崇】
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○作品を通して誰かの心に少しでも寄り添えたら
○音楽の力ってほかの何も敵わないのではないか