ファゴットの様な人間になりたい、女優・間宮夕貴が語る音楽
INTERVIEW

ファゴットの様な人間になりたい、女優・間宮夕貴が語る音楽


記者:桂 伸也

撮影:

掲載:17年12月06日

読了時間:約14分

自分にピッタリ、「サオリ」はまさしく「ファゴットのような人間」

――さて劇中で間宮さんが演じているサオリという役ですが、これはもともとどういう話でオファーを受けられたのでしょうか? 脚本を読んだり、あるいは入江監督から「こういうキャラクターなんだけど」というお話があったり、というところかと思いますが…。

間宮夕貴(撮影=大西 基)

間宮夕貴(撮影=大西 基)

 オーディションで最初に本を読ませていただいたんです。サオリとまた別の役があって、それでオーディションを受けてもらいますという話をもらい、読んだんですけど。でも私はその時に私自身を「サオリだ!」と思いました。もう一つの役もあったけど、私は多分その子より「サオリをやりたい」という気持ちがあって。

――人物のイメージが、自分に近いということを感じたと?

 感じましたね。それと、なんかちょっと共感するな、という感じで。本を読んでいる中で「サオリという人間が、テンポを崩していく」という雰囲気を感じ取りました。ずっと緊張感が続いているようなところに、サオリが現れると一回落ち着かせるというか、一回そこまでの雰囲気をクールに変えるような、そういう役だと感じて面白いなと思いました。

――それは、脚本を全体的に読んだ時にそう感じられたのでしょうか? 確かに劇中では、大森さん、鈴木さん、桐谷さんが演じられた三兄弟の関係が、ストーリーの中で一番強い部分なのかなという印象がありましたが、そこにこのサオリが入ると、アクセントというか印象的な雰囲気が出てきていましたね。

 そうですね。例えば音楽にすると、まさにファゴットという楽器。ちょっと腑抜けというか力強い音質、音色ではないので、結構ジブリ映画でも、ふわっとした曲の時に使われたりしています。だから例えば『ビジランテ』がオーケストラとして、曲を演奏している中だと、サオリってまさしくファゴットみたいに「フニャっとさせる」という気がするんです。

 だからこそ、この子が好きだと思いました。演奏していると、そういう部分で使われることが多くて、緊張感がある時に、ファゴットはソロで吹いたりすると、平和なシーンになるというか、緊張感を緩和させる何かがあるんだろうなと。それを吹いていたからこそ、何かそういうい感じがしますね。

――人生、ファゴットですね(笑)。

 本当に、ファゴットみたいな人間になりたい(笑)。緊張感を緩和させる。嫌な緩和じゃなくて。

――ストーリー全体を俯瞰して見ると、そういう面も感じられますね。対して主観的に見てサオリという自身のキャラクターについてはいかがでしょうか? 劇中では大森さん演じる一郎というキャラクターに暴行を受けつつ逃げても、また戻ってきてと、ずっとついていくような印象というか。この人は、どんな人なんだろうと思いましたが…。

 私が大学で心理学を教わっていた時に習ったことがあるんですけど、DV(家庭内暴力)を受けている女性は依存気質というか、暴行をする人に対して、依存していることが多いんだそうです。一緒にいればいるほど、暴力を振るわれているけど「でも、普段はいい人なの」と言うし、暴力を振るわれても離れられない。「私がいないとこの彼は生きていない」と思うからこそ一緒にいるというというか。

 多分一郎は薬をやっていて、やめろと言ってもやめない。喧嘩して逃げちゃったけど、やっぱり一郎は私がいないとダメかもしれないない、心配になって帰ってきちゃう。そういう様子は、DVを受けている女性の性質がはっきり見えていました。

――それはかなり典型的な例を踏襲している感じだったのですね。最後に何もかも失って、フラフラと歩きだす部分もありますが、それもそういう症状に流れていくものなのでしょうか?

 といいますか、最後には精神的に崩壊しているので、何をするか、多分予想ができない状態だったんだと思います。女性によっては一緒に死んじゃう人とか、意外とケロッとしている人もいた利するかもしれないけど。その中で、多分まだ迷いを感じるというか、死ぬか生きるかを迷いを感じながら、気づいたら自分の周りには誰もいない、みたいな感じかなというので。

 でもあのシーンは、見た人によってどういう感じ方をするのか? と思わせるところがあると思うんです。だからご覧になった方に、あのシーンでどういう気持ちになられたかを教えてもらいたいですね。

――ではある意味、演じるという意味では典型的な形みたいなところにうまくはまる印象があり、それほど役的には難しい感じはなかったと?

 そうですね。サオリという女性自身が、あまり深く考えない、どちらかというと直感で生きている性格だと思うので、かえって役作りをあまり考えないようにはしようと思っていました。

この記事の写真
間宮夕貴(撮影=大西 基)
間宮夕貴(撮影=大西 基)
間宮夕貴(撮影=大西 基)

記事タグ 

コメントを書く(ユーザー登録不要)

関連する記事