1音も妥協できない、FABLED NUMBER 新作への想いとこだわり
INTERVIEW

1音も妥協できない、FABLED NUMBER 新作への想いとこだわり


記者:村上順一

撮影:

掲載:17年11月08日

読了時間:約12分

 大阪で結成された、“エレクトロダンスロック”を提唱する6人組バンドのFABLED NUMBER(フェイブルドナンバー)が11月8日に、アルバム『THUNDER』をリリースする。1stアルバム『ILLUMINATE』から約9カ月という早さでのリリース。メジャーデビュー後初となる全国ツアー『ILLUMINATE Tour 2017』で、バンドの本質を見つめ直したという。今作でさらに音楽性を研ぎ澄ませ、ダンスミュージックとロックの融合に挑んだ作品。特にリード曲の「Like a Thunder」は、トラック制作の時点で「これがリードだ」と確信し、1音の妥協もできないという気持ちで進めたという。2人が考えるダンスミュージックの肝とはどこなのか、兄弟であるN'Taichi(Ba、Cho)とN'Eita(Gt、Vo)に話を聞いた。

自分達の内面を見つめ直した『ILLUMINATE Tour 2017』

N'Eita

――メジャーでの初ツアー『ILLUMINATE Tour 2017』はどんな感触でしたか?

N'Taichi セットリストやパフォーマンス面など、色々と考えながらやりました。今、僕達のライブに来てくれるお客さんの層を考えたんですけど、アルバムの世界観も出したいし、ちょっとしたズレなんかも感じたりしました。

――「ズレ」と言いますと?

N'Taichi ノリ方とか、聴き方などもそうですけど、正解みたいなものを見いだすのに時間がかかりました。正解というのは、オーディエンスに向けるパフォーマンスや「こうあって欲しい」と思っていることが、ちょっと違っていたり。そういうのはあって当然なんですけど、激しい方向性でいくのか? など、今までで一番考えました。でも、アルバムだけ切り取ってみたら全然ラウドでもないしなと…。

 ツアー中で1回、それをみんなで話し合う場があったのですが、「変に寄せないで、やりたいようにライブはしよう」ということでまとまって。対バンや、どういう所でどういうシーンの人間に当てていくのが良いのか、と。でも今思えば、どことやってどう、という話ではなかった。シーンで僕らと同じようなジャンルの人はいませんでしたし。それで、ライブスタイルはやりたいように貫いていこうと。

――N'Eitaさんはツアーどうでしたか?

N'Eita ツアーでは毎回のライブを良いものにしようと心から思ってきたし、サウンドに深みが出てきた分、歌い方を変えたりして表現を上げていかないといけないな、という思いもある中で、お客さんの層もまちまちになってきて、どこに向けてやっていくべきかという点がやっぱり難しくなってきていました。

 「The Lights」を聴いてきている人もいれば、「Yes」を聴いてきている人もいるし、その辺は何も気にしていない人もいっぱいいると思うんです。名前はしっかり出てきたので、「これがFABLED NUMBERだ」という感じでやったら、反応が良かったりしたので、俺らはこれをやるべきなんじゃないのか? というのが固まったというツアーでもあります。

――自分たちを見つめ直せたツアーだったわけですね。

N'Eita はい。『サマーソニック』に出たときは、とにかく曲をできる限り並べるしかないと思いました。フェスでMCに時間を割いてもしょうがないというか、サマソニに出る海外アーティストも言葉が通じないのわかっているから、あまりMCはしないので、僕らも同じスタイルにしたらけっこう受けが良くて。

 出したいCDをまず出さないと、やる曲をコントロールしなければならないので、求めていった結果、今までの活動歴と一番合う曲が今作のリードトラックでもある「Like a Thunder」なんだという気がします。

――ツアーやフェスの経験が今回のアルバムにはかなり活きていると。

N'Taichi そうです。自分達の内面を見つめ直したというか、そこが固まっていないと、常に葛藤しているような感じになってしまうので。

――1stアルバムの『ILLUMINATE』は楽曲のバリエーションが豊かで。

N'Taichi 確かにそうですね…あれは全方位型といいますか(笑)。前作の反省点として、今の段階で的を広くし過ぎるのも良くないなと思ったところもあります。今回は「Like a Thunder」という1曲にとにかく全てを込めようと思いました。MVからアーティスト写真、撮影しているときの色合いなど。様々なものをこの1曲に集中させようというのが、この「Like a Thunder」です。まずはつべこべ言わずにこの曲聴いてくれという感じです。

――名刺代わり的な。

N'Taichi そうです。これ聴いてもらったら、俺らがどんなことを推しているのかがわかると思います。『ILLUMINATE』のときは「The Lights」や「夜の鼓動」の2曲がリードとしてあって、各々タイプが全然違うというのも良かったのですが、今作は広がったものを研ぎすまして一点集中してやろうと。「それだったら俺らのやることはこれだけや」と、今作はEDMの割合が強いアルバムになりました。ミドルテンポの曲も、Lowの出し方など、ダンスミュージック持ち前の本格的な煮詰め方をしたんです。それを絶対にリードトラックにするという意思で作りました。

――その今のバンドの全てが詰まっている「Like a Thunder」は、ツアー中に出来た曲でしょうか?

N'Taichi そうですね。『ILLUMINATE』を作っているときにあった1フレーズだけのネタをいくつかチェックしているときに、「この感じはいけそうだな」と思ったのが「Like a Thunder」で。これをリードにしようと思って、フレーズを頭の中で整理していきました。メインの印象的なフレーズは声でやろうと決まって、ああいった他にはない声のエフェクトアプローチでバンドの独自性を打ち出したかったんです。

――声のパートは確かに耳に残ります。

N'Taichi それで、アッパーである、ダンスミュージックである、と全てを踏襲しているのがこの曲だということで、サウンド的にはこれがリードトラックでしょうということで仕上げました。ちょっと乱暴な言い方ですが、この曲だけ当たってくれれば、他の曲もわかってもらえるだろうというくらいの自信でいこうと、この曲は1音の妥協もできないという気持ちで進めたんです。

――作曲方法は前作同様にN'Taichiが作曲で、N'Eitaさんが作詞を?

N'Eita そうです。今までも全部そうなんですけど、まずオケが先です。オケが出来たところに歌が付くので「Like a Thunder」もそのパターンです。でも、いつもと違うところは、最初から「これがリード曲になります」という勢いで作ったことです。でも、今回に関してはそこまで気合いを入れるべきでした。次作では3曲くらいリード曲候補を作って持って行って、そこから選ぶかもしれないのですが、今回に関しては「Like a Thunder」をリードトラックにするという、大前提で取り組むことが大事でした。

――それでは「Like a Thunder」を仕上げるには相当な時間がかかったのでは?

N'Taichi 苦労しましたね。

――今回はサウンドプロデューサーに入ってもらったのでしょうか? 前作では「The Lights」に大島こうすけさんでしたが。

N'Taichi いえ、今作にサウンドプロデューサーは入っていないんですけど、8年くらいの付き合いになる京都のエンジニアさんと一緒に制作していきました。初めて自分が人と曲を一緒にアイディアも出し合いました。第三者が入ってくるということは今までなかったのですが、お互いに「それいいな」と言いながら作業をしていきました。

バンド楽器では本来鳴らない超低音を抽出

N'Taichi

――ダンスミュージックだとやはり、リズムトラックは重要かと思いますが、トラックで重要な順位を付けるとしたら?

N'Taichi 個人的にはキックとシンセの音色でしょうか。あとは音の配置とか。

N'Eita キックだと僕は思います。それによってシンセにしろベースにしろ各パートのサウンドも活きてきますし。ベースはスラッピングも入っているんですけど、実際低音はそこまで出ていなくて、そこはやはりキックなんです。

――低音という土台が最も重要になってくるわけですね。

N'Taichi これほど重要と思われる割合というのは、今までなかったんです。ドラムの録りの時点の音と、ミックスエンジニアの腕と、俺らへの理解力、その辺りが全て噛み合った形なんです。

――そこは前作よりもブラッシュアップされたのは確実ですね。2曲目の「Good-Bye」はテンポ感が割とゆっくりのナンバーですが、ダンスナンバーとしてのテンポ感をどのように捉えていますか。

N'Taichi 今作では「RED」や「Encounter」と疾走感のある曲もありますけど、それ以外の6曲は全部ミドルテンポで、「Good-Bye」はBPMが100くらいなんです。インディーズ時代のアルバム『A Revolutionary』に収録された「AAO」も同じくらいでした。「AAO」は、個人的にいまだにめちゃくちゃいいなと思っていて。

 それくらいのテンポの曲で、ちょっとニュアンスを変えて、更にMelodyneという声を加工するツールでフレーズを作って、FABLED NUMBERらしく、「お、またこのサウンドだ!」というところを主張したかったんです。リズムを大きく持たせて乗れるというか、その中での上モノの遊び方ですね。CDで聴くとキックなどサウンド自体に勢いがあるので、これくらいのミドルテンポなのに、凄くパワーがあるように聴こえると思います。

――今作『THUNDER』収録曲で他に思い入れのある楽曲は?

N'Taichi 「Ride the Sound」「Rolling」ですね。特に「Ride the Sound」は全てDTMで、ドラムンベース的な疾走感をFABLED NUMBER流でやってみたかった。これは最初アコースティックギターしか入っていなくて、その状態でN'Eitaに振ってメロディを書いてもらって、いかにスネアとキックとハットとかの音を最強なものに出来るかにかかっていました。

 制作中ちょっと見えない部分があって、チープな仕上がりになったらどうしよう、という不安がありました。でも、出来上がったら音の鳴り方など想像以上なものになったんで、気に入っている曲の一つです。

N'Eita パートや構成の折り合いの難しさから、この曲はたいちゃんがチャレンジしているということが凄く伝わってきました。この曲が出来たということを、音楽をやっている人に聴いて欲しいです。

N'Taichi タイミングが違ったらこの曲をリードトラックにしていました(笑)。

サウンドの本質を突き詰めていきたい

『THUNDER』ジャケット

――全体の話なのですが、前作より音の押し出し感が変わった感じに聞こえました。

N'Eita そうなんです。『ILLUMINATE』はマスタリングでけっこう音をパツパツに突っ込んだので、低音が凄くうねっていたりするのですが、それは低音を削らないと全体の音圧が上がらなかったからで。今回はサブベースなどの、バンド楽器では本来鳴らない超低音を抽出して迫力を出しています。

N'Taichi なので、今作は前作に比べて立体的に聴こえると思います。

N'Eita iPodなど聴く環境によって、他の楽曲との平均で音量を合わせてくれる機能もあるじゃないですか? それによって結局は同じレベルになった時『THUNDER』の方が低音が残っているので、結果的に迫力が出ていると思います。

――そこまで考えてのマスタリングだったんですね。音圧を限界近くまでに高く処理すると、結局Lowを削らなければならないし。

N'Eita そうです。それによってダイナミズムも損なわれて、且つ音量も合わせられて踏んだり蹴ったりな結果になってしまうのですが、今回の『THUNDER』はそういったことがないんです。しっかり迫力が残っています。音圧がパツパツだろうと何だろうと、リスナーは音楽プレイヤーで音量を上げたり下げたりできるじゃないですか?

N'Taichi 自分の聴きたい音量で聴くから。ジャンルによりますよね。俺らみたいにベースとかキックだけで出るものじゃないレンジの低音を足しているから。そこを活かさないと、やってきたことが何だったんだというね。

――今回は歌詞に関西弁を以前よりも多めに混ぜていますよね。

N'Eita 自分達を示しやすいし、独自性も出せるし、歌詞を書いていて書きやすいというのもあります。

N'Taichi ひたすら大真面目にカッコいい曲をやるなかで、織り交ぜる関西弁自体が面白いかと。そこを入り口としてもいいかなと思いました。関西弁だと標準語の「だ」を「や」に変えるんですよ。

N'Eita こだわりですね。コテコテにならないようにどうやって入れればいいのか考えれば大丈夫でしょうね。ダンスポップとバンドサウンドを組み合わせているように、英語と関西弁を入れている。そういうイメージです。

――今作のアー写やMVは銭湯で撮影されていますが、なぜ銭湯で?

N'Taichi 単純に俺ら銭湯が好きなんです(笑)。銭湯に行きまくってるんです。

N'Eita ツアー先でも銭湯に行きますから。広島には股間が痛くなるくらいの薬草湯があったり、あと富山の銭湯は信じられないくらい熱くて。代官山の銭湯はめちゃくちゃ綺麗なんですけど、東京の銭湯は人が多すぎて“銭湯渋滞”が起きる(笑)。

N'Taichi やっぱり、今までにないMVにしたかったというのがあって、目で楽しむものとしてスタンダードに行くだけではなく、自分たちにあったシュールさが欲しいなという。好きなものとリンクさせて、リアリティを持たせたかったんです。

――今後バンドで追求していきたい部分は?

N'Eita FABLED NUMBERのサウンドの本質を突き詰めていきたいと思います。ダンスミュージックのシーンの最先端を走っているDJなどと遜色ないくらいのグッドメロディと、ボーカル加工に合うような歌い方やメロディを追求したいです。

 maroon 5(米ロックバンド)やColdplay(英ロックバンド)など、バンドサウンドはしっかり残っているけど、やっていることは新しくなっているような、バンドサウンドとダンスミュージックをどこまで組み合わせて、どこまで本格的にやってブレイクすることができるのかという戦いです。今作の反応もありますけど、良いCDを何枚出せるかを更新できるかというところでもあると思います。

N'Taichi まずは求められているものを提示したいですね。

【取材=村上順一】

FABLED NUMBER「THUNDER」アルバム試聴トレーラー映像

FABLED NUMBER「Like a Tunder」MV

作品情報

FABLED NUMBER
2ndアルバム『THUNDER』
11月8日 Release
CRCP-40529 1852円+税

1. Like a Thunder
2. Good-Bye
3. Keep on Killing me
4. RED
5. ザ・クロスレインボー
6. Ride the Sound
7. Encounter
8. Rolling

ライブ情報

『2nd album”THUNDER”release tour 2017-2018』

12月2日 神戸太陽と虎 ※ワンマン
12月21日 広島CAVE-BE
1月6日 高松DIME
1月20日 富山Soul Power
2月10日 梅田CLUB QUATTRO ※ワンマン
2月17日 福岡Queblick
3月16日 名古屋CLUB QUATTRO ※ワンマン
3月20日 代官山UNIT ※ワンマン

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