布袋寅泰、“混迷の時代”を魅せつけた全国ホールツアー初日公演
(撮影=山本倫子)
ロックミュージシャン・布袋寅泰が26日に、ベイシア文化ホール(群馬県民会館)で全国ホールツアー『HOTEI Live In Japan 2017 ~Paradox Tour~』の初日公演をおこなった。10月25日にリリースした最新アルバム『Paradox』を軸にしながらも、BOOWYやCOMPLEX時代のナンバーも織り交ぜ、テーマとされた“混迷の時代”のリアリティを持って圧巻のステージを見せ付けた。
会場は地元群馬であることもあり、開演前から大きな声援が飛び交うなか、オープニング・ナンバー「Amplifire」で幕は開けた。最新作のリードチューンである硬質なビートを持つロックンロールだ。「Amplifire」とは造語でAmplifier(増幅)とfire(炎)がかかっている。歌詞における<絶望がないから 欲望もない世界>などスリリングなパワーワードに心奪われた。
布袋は、自身の活動を世界へとよりリンクさせるために現在イギリスに移住している。直接的に感じたであろうイギリスのEU離脱や、テロなどの社会問題に揺れる混迷の時代という空気感。日本でも突然の解散総選挙が先日おこなわれたばかりであり、最新アルバム収録曲「Pandemoniac Frustration」で描かれた<銃を規制できないAmerikaの議員 失業者で溢れるEurope 不穏な空気が澱むAsia>という描写のヒリヒリとしたリアル。そして<混迷の時代に神は今何を語るのか>という問いが胸に響く。
今の時代だからこそリアルを感じる、破壊力高い近未来デストピア感あるCOMPLEXの「Crash Complexion」(1989年リリース)や、ロマンティシズムな決意表明を感じられた傑作アルバム『GUITARHYTHM III』(1992年リリース)に収録された「DIRTY STAR」の衝撃。そして、イギリスで生まれた音楽に影響を受けた布袋ならではの七色に輝くギターや多彩なビート展開がたまらない新曲「London Bridge」など、アートを感じるポップロック・ナンバーが続く。
布袋は、本編ラストのMCで「『Paradox』の世界を楽しんでもらえましたか? 重厚でヘヴィでロックンロール。だけどどこか切なくてロマンティック。今、世界は揺れています。混迷しています。そして迷っています。そんな時代に生きている自分たちは何を考え、何を見つめて未来に向けてどんな思いを確かめながら生きていくのか。そんな問題提起も含めたちょっとビターでシリアスだけど、メチャクチャ踊れるアルバムに仕上がったと思います。今夜、帰り道に聴くとまた違う風景が広がると思います。是非、長く愛して欲しいアルバムです。いろんな思いが詰まってるけど、それは僕だけの思いじゃないと思うんだよね。きっと何かが必ず見つかるはず。宝探しのように、サウンドの波の中に散りばめたダイヤモンドを探してください」と熱く語った。
まるで映画のハイライト・シーンのごとく、矢継ぎ早に繰り広げられていくスペシャルなセットリストが続くなか、布袋曰く“俺たちの新しいテーマソング”という新曲「Dreamers Are Lonely」に魂を揺さぶられた。名曲「LONELY★WILD」の第二章ともいえる、心に染み渡る優しさを感じられたポップナンバーだ。
ツアー初日とは思えない完成度の高いステージを魅せる布袋バンドと、それに答える超満員のハイテンションなオーディエンスたち。今回のツアー・メンバーは盟友であるザ・ルースターズのベーシスト井上富雄、デヴィッド・ボウイ・バンドでドラムを叩いていたザッカリー・アルフォード、ソウル・フラワー・ユニオンのキーボーディスト奥野真哉、サイドギターには布袋を敬愛する黒田晃年、プログラミングには岸利至らが参加するなど、日本が誇る鉄壁のメンバーが集結している。
ツアーは、10月26日のベイシア文化ホール(群馬県民会館)公演を皮切りに、12月22日の名古屋国際会議場 センチュリーホールまで、全17公演が続いていく。
さらに、12月25日のクリスマスには『HOTEI Paradox Tour 2017 The FINAL ~Rock’n Roll Circus~』と題し、横浜アリーナで盛大なロック・パーティーも繰り広げられる。【文=ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)】
※BOOWYのOはストローク付き