<記者コラム:オトゴト>
 5人組ロックバンド・BIGMAMAが15日、東京・日本武道館でワンマンライブ『BIGMAMA IN BUDOKAN』をおこなった。彼らにとって活動10年という節目にして、ようやく辿り着いた夢のステージ。私もBIGMAMAの音楽を好んでおり、彼らの勇姿を見たいという気持ちからこの公演に足を運んでいた。今回はその時に感じた想いをここに記したい。

 武道館のチケットはソールドアウトという、嬉しい結果を迎えた。それは、多くのファンが彼らの記念すべき日を祝福しに来た証拠だろう。
 
 この日、ストリングス8人がステージ中央に現れると、繊細で壮大な音を奏で始めた。その音はまるで、オーケストラを観覧しに来ているような感覚に陥る程だ。するとメンバーがステージに登場し、ストリングスに重ねるようにそれぞれの音を鳴らしていく。体中に響き渡る音を堪能していると、煌びやかな照明が場内を照らす。光とストリングスが合わさった景色は、なんと美しいことか。言葉を失う程、ステージに釘付けになる程だった。大きく息を吸い込むと、金井政人(Vo/Gt)は「No.9」を歌い出す。その瞬間は、BIGMAMAが生み出す音楽の楽園へと誘ってくれるようだった。こんな美しい光景を見せる事が出来るのも、ロックとクラシカルな要素を組み込む彼らだからだと感じた。
 
 その後も、この日の為に用意した素敵なセットリストを奏でていったが、私が一番胸を打たれたのは、アンコールに金井が語ったMCだ。「ここにいる全員を幸せにすることは出来ないけど、不幸を遠ざけることは自分たちでも出来ると思う」と。その答えとして「この5人で信じた音楽を鳴らすこと」と「失敗だらけ、後悔だらけ、欠陥だらけだった自分の人生と同じ失敗をしないように、曲の歌詞に散りばめることだった」という想いだ。

 幸せにしたいと言う言葉は、誰にでも言えることかもしれないが、不幸を遠ざける事が出来るという発想はそう簡単に思いつくことだろうか。金井が発言したこの瞬間私は、BIGMAMAというバンドが人々の心の中にある闇を、振り払ってくれる事を示してくれていると感じた。改めて彼らの良さは、一方的に頑張れと背中を押す訳ではなく、何処か陰ながら見守ってくれる優しい光のような音楽なのだと思った。儚く脆い部分と、柔らかな陽だまりのような愛、そんな部分を与えてくれた美しくて優しい一夜だった。【橋本美波】

この記事の写真

ありません

記事タグ 


コメントを書く(ユーザー登録不要)