マレーシア出身のシンガーのIris(アイリス)が18日に、通算4枚目となるシングル「赤だけが足りない」をリリース。今作は10月21日に公開されるアニメ映画、コードギアス劇場3部作『コードギアス 反逆のルルーシュI 興道』のエンディングテーマ。accessの浅倉大介が新たに楽曲を書き下ろし、Iris(アイリス)をプロデュース。作詞には井上秋緒氏を起用し、T.M.Revolutionでもおなじみの黄金コンビでの作品となった。シリアスで力強い楽曲は、彼女にとっても新しいチャレンジ。制作背景についてや、カップリングの「月と兎」にまつわるマレーシアでの神話についてなど話を聞いた。
赤は“強さ”、“情熱”、“鮮やか”、“勇気”
――日本に来てから2年7カ月経ちますね。最近どんな日本語を覚えましたか?
最近覚えた言葉は“病み付き”です。“病み付き焼き肉”とか“病み付きギョウザ”などのメニューを外食の際、見て。「手が止まらないほど美味しい」という意味ということで覚えたんです。普段使うことはあまりないんですけど(笑)。
――けっこう使いこなすのが難しい言葉ではありますね(笑)。そういえばヨガをやられていると聞きました。ヨガを始めたきっかけは?
はい。実はマレーシアにいた頃に始めました。ダイエットをしたかったのが始まりだったのですが、やってみたらヨガ自体が好きになってしまって。ヨガは身体に良いし健康になりますよ! ヘルシーなのでオススメです。
――ヨガをやっていると身体も柔らかくなりますよね。それによって得したことはありますか?
得なのかわからないですけど、変な恰好の写真を撮られて、Twitterやインスタグラムにアップされたり(笑)。
――それは、インスタ映えが良さそうですね(笑)。今作のシングル「赤だけが足りない」ですが、なかなか哲学的なタイトルです。
本当に難しいです。私はまだ難しい日本語はわからないんですけど、作詞の井上秋緒さんとディスカッションして、スタッフの方とも一緒に勉強しました。その内容を理解するためにアニメ『コードギアス 反逆のルルーシュ』を観まして。
――いかがでしたか?
これも私にはけっこう難しいお話でした。戦争、侵略など、重い内容ですから。でも、面白いと感じました。ちゃんと理解したいと思ったので、英語の字幕が入っているものを観たんです。
――もしIris(アイリス)さんの住んでいる国が『コードギアス』の世界のように、侵略されてしまったらどうされますか?
私は戦うと思います。自由を勝ち取ります。
――ジャンヌダルクみたいですね! 先ほど英語の字幕で観られたと言っていましたが、マレーシアは様々な言語で皆さん話すのですよね? Iris(アイリス)さんの得意な言語はマレー語ですか?
私は華僑なので、中国語が一番得意です。英語もマレー語も一応話せます。今は日本語を勉強中です。(編注=華僑とは中国本土から海外に移住した中国人およびその子孫)
――マルチリンガルで凄いですよね。私など日本語しか話せないもので…。
でも、日本の人は幸せだと思います。国内1カ国語で全部通じますから。マレーシアは色々な民族が集まっているので、いつも「何の言葉で話した方がいいかな?」と悩みます。
――色々話せると日本語と英語が混じっているような歌詞に違和感を感じたりしませんか?
読み方が日本語寄りの英語になっているので、たまにわかりにくかったりします。でも、特に違和感は感じません。
――「赤だけが足りない」は今までのIris(アイリス)さんの雰囲気とは趣を変えて来ましたね。初めて聴いたときはどう思いましたか?
凄く良い曲だし、アニメの世界観にピッタリだと思いました。でも、自分に歌えるかとちょっと心配だったんです。自分はこういった強い曲はあまり歌ったことがなくて…。でも、レコーディングは順調でした。歌の重要な部分のことなど、浅倉さんは全部丁寧にお話ししてくださいました。
でも、今回のレコーディングと比べると、昔は地獄だったなと思い返したり(笑)。難しくて泣いちゃったりしていましたから。その頃に比べたらですけど、楽しく出来ました。浅倉さんが凄く丁寧でわかりやすかったからだと思います。すごくスムーズだったんですけど、やっぱり言葉は難しい部分がありました。最初は漢字も読めませんでしたし…。中国語の漢字とは読み方も違うので。
――浅倉さんからはどういったアドバイスを受けましたか?
例えば「ここはクレッシェンドで」「この部分は息を出した方がセクシーで、アニメのシーンと合うよ」など、細かく指示を出してもらえて、アニメとIris(アイリス)のミックスという部分を凄く考えてくださったんです。
――浅倉さんはIris(アイリス)さんにどのような印象を持っていたのでしょうか?
私の曲の中で一番好きなのはデビュー曲の「I love me」だと話してくれました。私の声に一番ピッタリだと。今作も「I love me」を聴いて、私の歌っている所や声を想像して作ってくれたみたいで、凄く考えて作ってくださったようなんです。
――そうなんですね。「赤だけが足りない」の「赤」というのは何を意味していると思いますか?
“強さ”、“情熱”、“鮮やか”、“勇気”だと思います。でも、みなさんそれぞれで感じる「赤」があると思います。アニメ『コードギアス 反逆のルルーシュ』を観て想像をした方がいいかもしれません。
――Iris(アイリス)さんは「赤」から情熱や強さを感じたんですね。今日のファッションも赤ですね。
赤、足りてますね(笑)。
――得意なのはバラード系でしょうか?
はい、ソフトなものは得意ですね。なので、前作の「ファンタスティック ジャパン」みたいなアップテンポの曲は妖怪です!
――妖怪!? 面白い表現ですね(笑)。
そうですか?(笑)。「ファンタスティック ジャパン」は言葉も多いし、テンポが速くて追い付けないくらいで…。でも、最近は歌っていて慣れてきました。ライブでもその成長を感じてもらえると思います。
マレーシアでは月に木こりがいる
――2曲目のタイトルは「月と兎」ですね。日本では月に兎がいるというエピソードがありますが、マレーシアや中国にもそのようなお話はありますか?
あります。マレーシアでも中華圏ではそういった神話があるんです。色んなバージョンがあって、年に一度、月で男女が会うという話もあります。これはマレーシアの華僑の中にある神話です。
――日本だと七夕がその神話に近いですね。日本では月で兎がお餅をついているんです。
中国だと、月で木を切っている人がいます。色々あって面白いです。この「月と兎」はけっこう前にレコーディングした曲で、ソフトな印象の曲です。レコーディングしたときに歌詞の内容をネットでたくさん調べました。中国の神話と似ているけど、日本的な内容になっているなと感じました。
――日本の月に兎がいるというニュアンス、ちょっと変だと思ったりしませんでしたか?
いいえ。可愛らしいと思います! 親子で一緒に楽しめるストーリーだと思います。
――改めて考えると、何で月に兎なのかなと私が疑問に思ってしまいました。中国の神話に出てくる木を切る人も不思議ですね。月に木が生えているのが面白いです。その木こりはIris(アイリス)さんのイメージではどのような方ですか?
兎さんは可愛いけど、木を切る人はきっと可愛くないです。私のイメージではムチムチのおじさんですよ(笑)。
――そうなんですか?
いや、イケメンかも! 筋肉質な人が好みというのもあるかもしれないけど。そういえば私、昔、兎を飼っていました! 赤い眼をしていて赤い耳で可愛かったんです。今作とイメージが被ることがあって思い出しました。ずいぶん前に死んじゃったんですけど…。
人を癒すシンガーになりたい
――「ラララ■ミ」は言葉とメロディが耳に残ります。この作品は最近録られたのでしょうか?
この曲は「月と兎」よりも、もっと前に録りました。『なんでもワールドランキング ネプ&イモトの世界番付』のコーナー、ヒッチハイクで日本を回った「NIPPON 優しさ旅」でゴールしてからレコーディングをしました。
――ということは、今作は「月と兎」も含めると様々な時期のIris(アイリス)さんが聴けるんですね。
確かにそうですね。よく聴いたら声が違うんですよ。発声も変わってきているし、歌い方もちょっとずつ変わっています。
――そこも注目ポイントですね。ちなみに目標とするシンガーはいますか?
誰、というのはいないんですけど、人を癒すことが出来るシンガーになりたいです。
――いいですね。逆にIris(アイリス)さんが癒されるのはどんなときでしょうか?
やはり大自然が好きなので。大自然で横になって、明るい曲が流れたらピースな感じになります。私が人を癒すシンガーになれるまで、まだまだ難しいけど頑張ります!
――気合いが入ってますね。
“気合い”って何ですか? 「押忍!」ですか?
――そうです(笑)。「ラララ■ミ」の歌詞で <ねぇもし明日 明日死んじゃうとして> ありますが、もし、Iris(アイリス)さんが明日死んでしまうとしたらどうしますか?
一番食べたい美味しいものを食べて、家族と過ごしたいです。歌詞にあるような、朝までパーティーという過ごし方も良いのですが、私は家族と見た事がない所に一緒に行きたいです。死んじゃうとしたら、もう見る機会がないですから(笑)。
――マレーシアの人は家族を大事にするみたいですね。景色といえば、先日、富士山に登ったとお聞きました。
はい、登りました。御来光が綺麗でした!
――難しい日本語をご存知ですね!
そのときに覚えました(笑)。山登りはめっちゃ寒くて大変でした。風も強くて着るものが足りなかったくらいです。マスクも帽子もして、目しか出ていないという恰好なのに、それでも寒いんです。でも、よく富士山に登っているという人がそのときに言っていたんですけど、その日の御来光はメチャクチャ綺麗だったみたいで。一番観やすいし、クリアだったと話してくれました。
――それはラッキーでしたね。また富士山に登りたいですか?
…いや、今のところはいいです(笑)。今も膝が痛くて…。コンドロイチンを飲んでいます。
――そうなんですか(笑)。マレーシアにもキナバル山という、4000メートル級の高い山がありますが、登ったことは?
登ったことないんです。地元の山よりも、海外の山の方が登りたいという気持ちがあります。私にとっての初登山が富士山でした。でも、それを友達に言ったら「バカか!」って(笑)。まずは、もう少し小さめの山で慣らしてから富士山、という順序がいいということで。いきなり富士山登っちゃいました。
――初登山が富士山とはすごいですね。それでは最後に、読者のみなさんにメッセージをお願いします。
今作の「赤だけが足りない」は、アニメ劇場版『コードギアス 反逆のルルーシュI 興道』にピッタリの曲です。力強い曲で、いつもの私の曲とは違う感じなので、是非聴いて頂きたいです。今回歌わせて頂いたことは、凄く良い経験になりました。
いつもの私の曲とは違って、新しいチャレンジになりましたし、劇場版のアニメも凄く面白いので、映画館でもこの曲を聴いて欲しいです。あと、これからもどんどんライブをして行くので、TwitterやHPもチェックして、是非観に来てください!
【取材=村上順一/撮影=大西 基】
※■は黒色ハートマーク
※Iris(アイリス)衣装
エリザベス アンド ジェームス/ELIZABETH AND JAMES (お問い合わせ番号:03-5216-6516 (お問い合わせ先:コロネット/CORNET
■作品情報
Iris(アイリス) 初回生産限定盤(CD+DVD) SRCL-9544〜9545 1574円(税抜) ▽CD収録曲 1. 赤だけが足りない |