<写真>長渕剛 5月にリリースしたアルバム「Stay Alive」を引っさげて全国ツアー中の音楽家・長渕剛さんが、7月22日に行なわれた神奈川県民ホールでの公演中に左膝を負傷、“左膝内側側副靭帯損傷”で全治6週間の診断を受けていたことが分かった。これにより、7月26日に予定されていたニトリ文化ホールでの札幌公演は延期されることとなり、振替公演が9月3日に行なわれることも発表された。
 公演23日目となった神奈川県民ホールは、いつもにも増して異様な盛り上がりとなった。オープニングの「日本に生まれた」では、客席中で日本国旗が打ち振られる。そのさまは、ステージから見た長渕さんに「日の丸がこんなに美しいなんて初めて知ったよ」と言わしめたほどだ。
 そして、エンディングまで、客席は汗だくになって歌い、叫び、拳を突き上げ、体を左右に揺らし、跳びはねる。それはもはやコンサートというよりも、格闘技のような熱量を放出している。長渕さんと客席のテンションが激しくぶつかり合い、お互いに一歩も譲らないせめぎ合いとなったこの日は、後半に至ると長渕さんも観客もブチ切れていた。リミッターが外れてしまった状態とでもいうか、自分が何者であるのかさえ忘れてしまうような、無の境地に向かっていく感覚だ。昇りつめていく瞬間、そのなかで、すでに重傷を負っていたのだった。
 アクシデントが起こったのは、後半にさしかかる14曲目「明日へ向かって」を歌っていた時だ。ステージ・センターでギター・ソロを弾くichiroさんのもとに、長渕さんがステージの端から勢いよくスライディングで飛び込んだ。その時、左足のつま先が床に引っ掛かり、内側に曲がった状態のまま突っ込んでしまったのだ。
 「ギクッ、グッって感じ。あっ、やばいって思った」という。しかし長渕はライブをそのまま続行した。それどころか、この日の公演は、ツアーで最長時間を記録する3時間を超えるものになった。終演後、パーソナルトレーナーとしてツアーに同行する総合格闘家・三崎和雄さんが緊急のアイシングを行なった。夜中も20分おきにずっとアイシングを続け、翌日寝ずに病院に直行した。がしかし、まともに歩けないほどに、左膝は壊れていたのだった。
 病院から出てきた長渕さんの左足は、痛々しいまでにギブスで固められていた。「名誉の負傷」と苦笑しながら言ったという。 「札幌にはとにかく借りを返さないといけない、ファンのみんなに迷惑をかけてしまった。まずは、東北三県に向け、集中して完治するように努める」とメッセージを送った。次の福島公演まで、2週間少々しかない。さらに岩手、宮城へと続く日程が組まれている。
 最後に、二つの大切な想いが届いた。 この1年、震災が起きて、ラジオを始めて、仙台、釜石、陸前高田、そして福島の浪江に幾度か行った。復興支援活動のなかで、次は自分の音楽だ!とはっきりした使命感を抱き、今を生きている。俺たちの心の中にあるこの国への怒りや不安、悔しさを音楽で払拭せねばならない。そのために、このステージはあるんだ。」さらにこう語った。
 「この一瞬は永遠ではない。だからこそ“今”に命を捧げて生きる!!これは、今までも一貫したテーマではあったが、震災後さらに、それを強く願う。今まで以上に、ステージに駆け上がる時の覚悟が尋常じゃないことも事実だし、みんなの期待感も半端じゃないのも理解している。この国から失われようとしている自尊を音楽と肉体とライブによって表現し人々の心に、それでも『生きるぞ!!』を突き刺さなければならない。俺がやらなきゃ、誰がやるんだ?いつも、そう想い、腹をくくってステージに駆け上がっている。だから俺も客も壮絶になるのは当たり前なんだ」。

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