音楽、歌声は清春の生き様を映し出していた

第二部、解き放たれる魂そして色気

 『MONTHLY PLUGLESS 2017 KIYOHARU LIVIN’ IN Mt.RAINIER HALL「elegy」』第二部の模様を以下にレポートする。

 午後9時を少々過ぎ、ゆっくりと照明が暗転。SEが流れるなか、エレクトリックギターの中村佳嗣とアコースティックギターの大橋英之がステージに。ほどなくして清春がゆっくりとステージのセンターへ。清春が椅子に腰を下ろすと、アコギの乾いたサウンドがホールに鳴り響く。その上を語りかけるように言葉を放つ清春。第2部のオープニングナンバーは「白と黒」。ギター2本でクロストークをするかのように奏で、その上を、憂いを帯びた清春のポエトリーリーディングと歌声が楽曲を彩る。生々しいプラグレスならではの、色気がホールを包み込む。

 圧巻の世界観を見せつけた「情熱の影」。観客の誰もが固唾を呑み、ステージ上から発せられるサウンドに引き寄せられ、妖艶さと緊張感が漂う空間に酔いしれていく。清春は、時にジャズシンガーのように自由に旋律を操り、時にブルーズシンガーのようにメッセージをメロディにのせ迫真の歌声を放っていく。清春の横に設置されたスタンドライトは曲が終わると暗転。そして、楽曲が始まると点灯するその様は、命の灯火のようにも感じられた。

 力強いアコギのストロークが印象的で、ドライブ感溢れる「spider's web」に続き、MCでは2部の終演時間が「終電に間に合わない」という問題定義を清春が語るが答えは出ず。その後もジョークを交えながら楽しませる。

清春

 続いては高橋真梨子のヒットソング「桃色吐息」をカバー。清春の持つオリジナリティあふれるグルーヴと節回しで展開。楽曲の持つ魅力を最大限に活かしながら、自身の曲へと昇華していく。キャリアが成せる恍惚の瞬間を味わせてくれた。

 ステージ上には3人しか存在しない。そこから繰り出されるサウンドと歌は、複雑に絡み合い、音という筆で何もない空間に絵を描いていく。それを強く感じさせたのが「堕落」だった。サウンドで言えば大橋のアコギのストロークサウンドの上を、中村のハイフレット上で奏でられるベルサウンドが美しく響き、そこに清春の声が鮮やかに色彩をつけていく。

 まだまだ至高の時間は続く。ゆらゆらと揺れるような心地よい空間に、それを切り裂くように清春の全身全霊の叫びが、観客の感情を揺さぶった12枚目のシングル「輪廻」。ステージとフロアの緊張感がどんどん高まっていくのを感じる。そして、その高揚感を維持したまま「空白ノ世界」へと流れる。全てを忘れさせてくれそうな熱演。両手でしっかりとマイクを包み込むように握り体全身で歌い上げていく。3人の生き様を見せつけられているような、鬼気迫る演奏で本編を終了した。

清春

 アンコールの声に応え、再びステージに3人がステージに。戻って来た清春は「グッドプレイ。楽屋が今年で一番盛り上がった」とこのステージの演奏に満足気な表情見せる。さらに続けて「歌や曲など新しい進化を。やって来ていないことに未だにチャレンジしていけたら...是非見ていてください」とこの先の展望を覗かせた。

 ラストは4枚目のアルバム『VINNYBEACH 〜架空の海岸〜』から「この孤独な景色を与えたまえ」を届けた。叙情的な中村のアルペジオに、大橋のトレモロ奏法がどこか地中海の風を運んでくる。このライブのエピローグのように歌い紡ぐ清春。ホールは静寂に包まれていく。ゆっくりと時が進むような感覚を与えていく。後半は徐々に歌が熱を帯び、魂の叫びとも言える咆哮が響き渡った。鮮烈な印象を残しながらステージを去る清春に大きな拍手と歓声が送られた。

 改めて清春というシンガーの姿勢を味わえたステージ。その姿からは彼の真髄を見せてもらえた気がする。12月まで続くマウントレーニアでのプラグレス公演。この先どのような進化を見せてくれるのか非常に楽しみさせてくれたステージであった。

【取材=村上順一】

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