清春が誕生日前日のとなる10月29日、東京・恵比寿The Garden Hallで52歳最後の夜をファンと過ごしたライブイベント『The Birthday』を開催した。本ライブでは、DURAN(Gt)とcoldrainのKatsuma(Dr)をサポートメンバーとして招集し、清春初の試みとして、デジタルシングル3作連続配信リリースの第一弾の新曲「ガイア」や、配信第2弾としてリリースされる予定の新曲「リグレット」をライブ初披露するなど、52歳最後の夜を祝うのにふさわしい、清春の歴史を詰め込んだ全18曲を届けた。このライブの模様を以下にレポートする。【取材=村上順一】

極限まで削ぎ落としたロックサウンドを展開

清春

 記念すべき52歳バースデー前夜となったライブのオープニングナンバーは昨年リリースされたアルバム『JAPANESE MENU/DISTORTION 10』から「下劣」で幕は開けた。ギターとドラムのみ、ベースレスというバンド編成だが、ダイナミックでソリッドなサウンドがホールに響き渡る。そのサウンドはブルージーでハード、様々な表現方法で魅了する清春のエッジの効いた歌声で、序盤からアクセル全開で早くもクライマックスのような空間を作り上げていた。

 「今日はやる気できました」と意気込みを述べる清春。淡々とした口調ながらもオーディエンスを楽しませる気力にみなぎっていた。それは歌唱している姿をみれば一目瞭然で、圧巻のエネルギーで会場は満たされていた。

 清春節全開のロングMCに続いて、ギターと会話しているかのようなイントロからスタートした「洗礼」。コバルトブルーのライティングが、楽曲の情景をより鮮明にし、その中で歌う清春はストーリーテラーのようだ。楽曲の世界観を存分に引き出すような歌唱だった。

 この日のために用意したお気に入りのジャケットを脱ぎ、今回の目玉の一つである新曲「ガイア」を初披露。DURAN(Gt)の深みのあるアルペジオ、Katsuma(Dr)の大陸を感じさせる幽玄なビート、そこに乗る清春のオリジナリティ溢れる歌声と、まさに三味一体と呼べるサウンドが響きわたる。エンディングではテンポアップし、エキサイティングな空間を作り出した。そして、「ガイア」のカップリング曲「HEAVY LOSS」へと突入。クールなリフにパワフルなドラム、アグレッシブな歌とライブならではの高揚感を感じさせた。

 ここからは清春とDURANの2人で「ロマンティック」「夢追い」「美学」の3曲を届けた。よりミニマムな編成で歌が際立つアレンジで新たな楽曲の一面を見せてくれた。アコースティックともまた違う、誤魔化しの効かない、今の清春のアティテュードが表れていたかのようなセクションで、オーディエンスも清春の魂の歌声を浴びるように聴き入っていた。

 そして、清春が一旦ステージを後にすると、DURANとKatsumaによるセッションが展開。この2人の極上のグルーヴに身体が自然と反応してまうかのように、オーディエンスもそのビートに身体を揺らし音を楽しんでいる様子が伝わってきた。清春もMCでこの2人の実力を高く評価していたのも頷けるスリリングな演奏を挟んで、ライブは後半戦へ突入。

シンガーとしての時間を皆さんと一緒に過ごしたい

清春

 再びステージに登場した清春は裸足で登場。7枚目のアルバム『UNDER THE SUN』に収録されている「JUDIE」、配信第2弾シングルとしてリリース予定の新曲「リグレット」と、よりロック度の高いステージで畳み掛けていく。さらにエンジンがかかってきたのか、けたたましく鳴り響く轟音の中、その音を受けてよりエナジーみなぎる歌声を発する清春の歌声。ライブが進んでいくたびにエモーショナルさが増していくよう。

 そして、イントロでの清春の歌声がゾクっとさせるものを感じさせた「SURVIVE OF VISION」は、この場にいるオーディエンスに生きている意味を問いかけるような、ここまでの楽曲とはまた違った表現を見せた。続いて「みんな楽しんで」と投げかけ、バウンスしたリズムが心地よい「グレージュ」、本編ラストは「眠れる天使」を全身全霊で歌い上げ、清春はステージを後にした。

 アンコールに応え再びステージに登場したサポートメンバーが、バースデーソング定番曲の「Happy Birthday to You」を奏でる中、清春がステージに。ここで、VTRを使用したサプライズが! VTRにはこのライブ開場前に訪れていたファンからの清春のバースデーを祝うメッセージから、お笑いコンビ野性爆弾のくっきー!、かまいたちの山内健司と濱家隆一の2人が登場し、お祝いの言葉を贈った。そのサプライズに喜ぶ清春。何度も「今年はやったね」と興奮気味に話す。そして、薔薇の花束と巨大なケーキも贈られ、清春のバースデーを大いに盛り上げた。

清春

 テンションが高まるなか、清春はエレキギターを手に取り「wednesday」を演奏。ギターを奏でながらも色気のある歌声を届け、リズミックでノリノリの『club「HELL」』を投下し、ボルテージは最高潮。清春は最後の曲に行く前に「皆さんのおかげで嫌いなことをやらなくてもいい人生を手にいれました。これから先も悔いが残らないようなミュージシャンライフ、シンガーとしての時間を皆さんと一緒に過ごしたい。まだ僕にも伸び代があるかもしれないから、それを見ておいてほしい」と話し、最後にソロ1stシングル「EMILY」で最高な一体感を作り上げた。「美しい時間をありがとう。幸せです」と感謝を伝え、『The Birthday』を締めくくった。

 清春はMCの中で「55歳ぐらいになったら日本を離れるかも」と、今後の展望を語っていた。それはシンプルに海外で暮らしてみたいとのことだが、その裏には先ほど話していた伸びしろ、新しい感性を取り入れたいと思っているのではないか、と推測。今回のライブ全体を通して、もっとスケールの大きなものを届けたい、そんなスタンスが終始パフォーマンスからも表れているようだった。バースデーライブというお祭り要素があった中にも音楽の本質、深淵に迫るものがあった。

セットリスト

『The Birthday』

10月29日@東京・恵比寿The Garden Hall

01.下劣
02.錯覚リフレイン
03.凌辱
04.洗礼
05.ガイア
06.HEAVY LOSS
07.ロマンティック
08.夢追い
09.美学
10.JUDIE
11.リグレット
12.妖艶
13.SURVIVE OF VISION
14.グレージュ
15.眠れる天使

ENCORE

EN1.wednesday
EN2.club「HELL」
EN3.EMILY

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