全国ツアー『和楽器バンド HALL TOUR 2017 四季ノ彩 -Shiki no Irodori-』のファイナル公演

 8人組ロックバンドの和楽器バンドが7月21日、東京国際フォーラム ホールAで、全国ツアー『和楽器バンド HALL TOUR 2017 四季ノ彩 -Shiki no Irodori-』のファイナル公演をおこなった。自身初のホールツアーで、3月22日に発売した3rdアルバム『四季彩-shikisai-』を引っ提げ、全18公演をまわる。この日は、アルバム収録曲を中心に「雪よ舞い散れ其方に向けて」や「ワタシ・至上主義」など全22曲をパフォーマンス。アンコールでは、鈴華ゆう子(Vo)が作詞・作曲した新曲「雨のち感情論」(9月6日発売)を初披露した。来年1月27日には『和楽器バンド 大新年会2018』を横浜アリーナで開催することも発表した。

ツアーファイナルは「鳥のように」で幕開け

ライブのもよう

 開演前の会場は多くの観客が、和をモチーフにした和楽器バンドのグッズを身に着け、今から始まるライブを楽しみに待っているようだった。ステージには、桜の模様が映し出された淡い紫色の紗幕。開演時間である午後7時を過ぎると、その紗幕に8人のシルエットが浮かび上がる。間もなくして、いぶくろ聖志(箏)の繊細な箏の音が鳴りだす。情緒的な演奏でツアーファイナルは「鳥のように」で幕を開けた。

 ステージのバックには、鳥が飛び立つ模様が描かれており、その鳥が今にも羽ばたくかのように、鈴華は伸びやかで美しい歌声を観客に届けていく。1曲目が終わると、会場からは盛大な拍手が送られ、黒流(和太鼓)の「ツアーファイナルいくぞ」という掛け声から「浮世heavy life」を演奏、続けて町屋が作詞作曲を担当した「Howling」へと流れる。

 疾走感溢れる音に乗せるように、鈴華と町屋(Gt&SideVo)は見事なハーモニーを披露し、観客もリズムに合わせ、手にしている色とりどりのケミカルライトを揺らした。

 鈴華は「ツアーファイナル来てくれてありがとう! 今日は5000人近いお客様が来てくださっています。ここから見える景色は圧巻です。今日という特別な日を、どんな仲間たちと過ごしていけるか、みんなで感じ合いたいと思います!」と言葉を告げた。
 
 一方の黒流は「東京に集まった野郎ども、思い切り声を出すときがきたぜ! 野郎ども―!」と威勢よく声をあげると、呼応するように男性客が叫び声を挙げた。一方、鈴華は女性観客に向けて「大声でまっちーに向けて声をぶつけてください!」と投げかけると、町屋に向けて黄色い歓声が送られた。今回のツアーでは町屋が、女性観客の声を浴びるということも一つのテーマになっているようで「会場が広いっていうこともありますけど、東京元気良いですね! ありがとうございます!」と町屋は嬉しそうに語った。蜷川べに(津軽三味線)も女性観客の歓声を浴び、「快感。幸せ」と喜んだ。

 MCが終わると、亜沙(Ba)が作詞作曲を担当した刹那と冬の情景が浮かぶ「雪よ舞い散れ其方に向けて」、町屋が作詞作曲を担当した「蛍火」を次々と披露。楽器一つ一つを丁寧に奏で、そして、歌いあげて、日本伝統の和の世界を見せた。

ライブのもよう

 中盤では、町屋の鋭利なギターと聖志の優しい箏の音が混ざり合うなか、鈴華は剣舞と詩舞を披露。そのなかで鈴華は華麗に艶やかに、舞い踊り、その姿に観客は釘付けになっていた。
 
 その後、山葵(Dr)、亜沙、町屋がお面をつけて登場し、3人それぞれ打楽器、弦楽器の音によるインストパフォーマンスを展開。続けて、黒流の轟く和太鼓と神永大輔(尺八)の透る尺八、蜷川の跳ねるような津軽三味線によるインストで、美しき和の音でファンを魅了した。
 
 後半に突入する前のMCでは、和楽器バンドによる「一門八答」のコーナーへ。ファンクラブ「八重流 -YAERYU-」から事前に質問内容を募集し、その中から一つ答えた。今回選ばれた質問は、「メンバーの中で、バンド結成時の第一印象と全然違う人はいたか?」というもの。鈴華は、「町屋」と「蜷川」を挙げた。その理由は「タトゥーがめっちゃ入っているから、話かけちゃいけない人だと思った(笑)」。対して蜷川は「こわーって思った」と初対面のときと違う印象を明らかにした。町屋は、「大輔」、蜷川は、「亜沙」と「町屋」、山葵は、「大輔」と「べに」、聖志は、「神永」、黒流は「山葵」、亜沙は「黒流」と「町屋」、大輔は「山葵」だとそれぞれ回答。結果をみた鈴華は、「聖志と私は良いってことだねっ!(笑)」と喜んだ。
 

言葉では伝えきれない程の感謝

ライブのもよう

 「後半戦盛り上がっていけるかー!」と煽ると、カバー曲「千本桜」を披露。同曲の<わんっつーさんしっ>のフレーズの部分では、鈴華、亜沙、神永、町屋、蜷川がステージ中央のお立ち台に集結し、仲睦まじい姿を見せた。
 
 その後、蜷川が作詞・作曲を担当した「ワタシ・至上主義」を鈴華が可愛らしい声と、振付けで女心を歌い、テレビ東京・リオ五輪中継応援ソングとなった「ミ・ラ・イ」を届け、会場を更にヒートアップさせていった。

 続くMCで黒流は、和楽器とロックという異色の組み合わせで活動していることに関して、以下の通りに語った。

 「私たちは和楽器とバンドの珍しい形態で、バンドを活動しています。伝統的な世界の楽器であるので、良い意見ばかりだけではないんです。邦楽の世界は今、日本の音楽というものを見つめ直していて拡大していますが、まだまだ狭い世界です。その中で、私たちが和楽器とバンドを組み合わせたものをやるということは、とても責任があると思っています。僕たちが和楽器とバンドというものをやって、良くないものを生み出してしまったらこれから生まれる次世代の邦楽奏者、そしてバンドマンに悪い影響が出てしまうし、道を閉ざしてしまう。今これから、世界を見ていって僕達がどう見られるか? その信念を心にして、私たち8人の力を一つにして活動していきます」

 決意表明ともいえるメッセージを送り、更に、渡り鳥の視点で人生感を描いた和のバラード曲「オキノタユウ」でその想いを伝えた。山葵と黒流によるドラムと和太鼓のパフォーマンスはまさに圧巻だった。
 
 ラストは、鈴華が「手をあげて一つになるよ!」とあおり、『四季彩-shikisai-』の最後を飾る「流星」へ。ファンは煌びやかなケミカルライトをユラユラと揺らした。その光景は流れ星のようだった。
 
 本編は終わるも、観客から<我等謳う空の彼方へ 遥か流る雲の向こうへ 海を越えて虹を渡って君に届く様に♪>と「暁ノ糸」のシンガロングでアンコール。それに応えるようにメンバーは再びステージに登場。その後、亜沙の私物カメラによる4Kの亜沙カメラで会場全体を撮影。「亜沙カメラ~! ですけど~!!」と掛け声を決めながらウエーブをするといった動画も収めた。

ライブのもよう

 鈴華は「私は田舎育ちの普通の一般的な女の子だったんですが、それがこんなに沢山の人の前で、大好きなメンバーに囲まれて、この真ん中のステージに立たせてもらっていること、本当に夢物語のようです。これからもちゃんと真ん中に立てるような、ふさわしい人間であり続けなければいけないなと、それをずっと考えていました。この中で歌わせてくださること、言葉では伝えきれない程の感謝があります」と想いを打ち明けた。
 
 その後、伝説を夢見て和楽器バンドのボーカリストとして、ステージに立てた想いを綴ったという、鈴華が作詞・作曲を担当した新曲「雨のち感情論」を初披露。このサプライズにファンも感激の様子。

 ファンとともに歌う定番曲「暁ノ糸」や、ありったけの感謝の気持ちを込めた美しい旋律「CLEAN」で涙を誘い、放れた銀テープが煌びやかに宙を舞う中、ツアーファイナルは幕を閉じた。

(取材=橋本美波)

セットリスト

 
『和楽器バンド HALL TOUR 2017 四季ノ彩 -Shiki no Irodori-』

1.鳥のように
2.浮世heavy life
3.Howling
4.雪よ舞い散れ其方に向けて
5.蛍火
6.遠野物語五五
7.知恵の果実
8.什麼生説破
9.MOON SHINE
10.戦―ikusa―
11.望月
12.千本桜
13.ワタシ・至上主義
14.ミ・ラ・イ
15.オキノタユウ
16.打撃叫宴
17.起死回生
18.空の極みへ
19.流星
 
アンコール
1.雨のち感情論
2.暁ノ糸
3.CLEAN

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