ワンマンツアー『大森靖子 2017 LIVE TOUR "kitixxxgaia"』のファイナル公演をおこなった大森靖子(撮影=Masayo)

 シンガーソングライターの大森靖子が7月20日に、東京・Zepp DiverCity Tokyoでワンマンツアー『大森靖子 2017 LIVE TOUR "kitixxxgaia"』のファイナル公演をおこなった。3月にリリースされたメジャー3枚目となるアルバム『kitixxxgaia』を引っさげて、6月2日の宮城・仙台Rensaを皮切りに全国6公演をおこなうというもの。アルバム曲「ドグマ・マグマ」や新曲「draw (A) drow」などアンコール含め全21曲を披露し、まさに“感情のステージ”と呼ぶに相応しい大森の世界観で会場を満たした。この日、11月から『超歌手 大森靖子MUTEKI弾語りツアー』の開催も発表した。

感情のステージに上がってこい

(撮影=Masayo)

 ステージ後方には『kitixxxgaia』ジャケットのバックドロップ、ステージ中央にピンク色の十字架、そして、打楽器のドラがスタンバイされていた。開演を待つBGMには大森の楽曲が流れ、続々と観客がフロアに集結。定刻を少々過ぎたところで会場は暗転。「カルミナ・ブラーナ」をSEに、バンドメンバーがステージに。最後に、白いドレス風の衣装を身に纏った大森靖子がステージに登場。

 大森は観客に向かって一礼し、ステージ上の十字架を抱え、「感情のステージに上がってこい」と投げかけドラを強打していく。オープニングナンバーは『kitixxxgaia』でも1曲目を飾る「ドグマ・マグマ」。一筋縄ではいかない展開を見せる楽曲は、感情を解放させていくかのような爽快感を与えていく。ライブは「非国民的ヒーロー」、「イミテーションガール」、高揚感を煽るシャウトから「きゅるきゅる」と流れ、アッパーチューンで観客を扇情していった。

 「楽しいことも嫌なことも全部音にして、美しいステージにしたいと思います」と語り「ピンクメトセラ」へ。イントロでのハープような美しいサウンドが印象的に響き、そこから変拍子のキメが緊張感を生んでいく。フロアは観客の持つピンクのペンライトがより一層光り輝く。ダンサー・私。もステージに登場し、楽曲の世界観を流れるような動きで表現していった。

 大森はアコギを手に取り「マジックミラー」へ。縦横無尽に紡がれていく音は良い意味で予想を裏切っていく斬新さを与えていく。F・ショパンの「幻想即興曲」のようなダイナミックなピアノの旋律の上で、アップアップガールズ(仮)とともに大森もシンクロ率の高い踊りを魅せた「夢幻クライマックス かもめ教室編」では椅子の上に乗り歌い上げるその姿は、メシアのような雰囲気を感じさせた。

(撮影=Masayo)

 そして、その椅子に少し気だるそうに腰を掛け歌い上げた「M」へ。sugarbeans(Key)のピアノの伴奏で、今にも感情が崩壊しそうな歌声が会場に吹き荒れる。続いての「オリオン座」はバンドメンバーも歌い上げ、会場全体で美しいシンガロングの光景が広がった。大森はステージを動き回り、観客とコミュニケーションをとるようにパフォーマンス。

 「君に届くな」では放射線状に伸びた照明が大森を照らしながらの歌唱。激情的なミディアムナンバーは会場に音という感情を浴びせていく。続けて、ピエール中野(Dr)による腹に響いてくるようなビートから「最終公演」、豪雨のSEから「あまい」。ドメスティックなサウンドは会場に緊張感を走らせていく。大森の叫びにも似た声は、汚れたものを浄化していくようだった。

全員圧倒的に最高でした!

(撮影=Masayo)

 「TOKYO BLACK HOLE」に続き、<音楽は魔法ではない>と訴えかけていくナンバー「音楽を捨てよ、そして音楽へ」に突入。大森もハンドマイクで感情を注入していく。ステージ上は無地のキャンパスに絵の具を自由にぶつけていくようなサウンドスケープを魅せる。上り詰めるような感覚を共有していくなか、「アナログシンコペーション」で美しい感情を放出しながら本編を終了した。

 大森は「時間や愛情や人生を分けてくれて、今日の音楽がこうして出来ました。同じ景色でも違う美学と捉え方で、たとえ掴んだ瞬間に離れてしまったとしても、それこそが私の生きる糧、音楽となりました。音楽があれば私は生きられるということで、皆さんのおかげで私は生きています。愛情をもらったぶんは愛情と音楽で返していきますので、これからも愛させて下さい」と涙ぐみながら観客に感謝を告げステージを後にした。

 アンコールに応え、再びステージに大森とバンドメンバーが登場。ここで「嫌なこと選手権」と題し、オーディエンスから嫌なことを聞いていくコーナーへ。多くの人が手を挙げ、自身の体験談を話していく。その奇抜な発言に会場からは笑いから、驚きと様々な感情が飛び交っているようだった。ここで一番の体験談を話した人は、アンコールで披露された「絶対彼女」でソロパートを貰えるという特典も。

 アンコール1曲目はTK(凛として時雨)がプロデュースした8月30日にリリースされる新曲「draw (A) drow」を披露。初めて自身のことを歌詞に落とし込んだというこの楽曲は、激しいロックサウンドに乗って、凛として時雨と大森靖子の見事なコラボレーションを発揮した熱いナンバー。続いて、「ミッドナイト清純異性交遊」、「IDOL SONG」とキラーチューンで一体感を作り上げていった。

 ラストは「絶対彼女」を披露。サビのメロディに合わせ、印象的な手の振り付けを会場全体で。「嫌なこと選手権」で優勝した観客がソロで歌い上げ、そのあとは“女子”、“おっさん”などジャンルわけによるシンガロングで楽しませた。最後大森はオフマイクで「あなたがあなたのことを醜いと思っても、今日私が見たひとり一人は全員圧倒的に最高でした!」と強く投げかけ、『大森靖子 2017 LIVE TOUR "kitixxxgaia"』の幕は閉じた。

(取材=村上順一)

セットリスト

『大森靖子 2017 LIVE TOUR "kitixxxgaia"』

7月20日 東京・Zepp DiverCity Tokyo

01.ドグマ・マグマ
02.非国民的ヒーロー
03.イミテーションガール
04.きゅるきゅる
05.地球最後のふたり
06.ピンクメトセラ
07.LADY BABY BLUE
08.マジックミラー
09.夢幻クライマックス かもめ教室編
10.M
11.オリオン座
12.君に届くな
13.最終公演
14.あまい
15.TOKYO BLACK HOLE
16.音楽を捨てよ、そして音楽へ
17.アナログシンコペーション

ENCORE

EN1.draw (A) drow
EN2.ミッドナイト清純異性交遊
EN3.IDOL SONG
EN4.絶対彼女

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