本質は“心のベストテン”にある、忘れらんねえよ 伝え方で冒険
INTERVIEW

本質は“心のベストテン”にある、忘れらんねえよ 伝え方で冒険


記者:榑林史章

撮影:

掲載:17年06月14日

読了時間:約10分

新曲への想いを語った忘れらんねえよ・柴田隆浩

 ロックバンドの忘れらんねえよが21日に、初の両A面シングル「いいひとどまり/スマートなんかなりたくない」をリリースする。2008年に結成、不器用を絵に描いたような歌詞で人気を集め、俳優の菅田将暉や女優・松井玲奈など芸能人のファンも多い。新曲「いいひとどまり」は、新たなアプローチにチャレンジした、バンドとしての新展開を感じさせる楽曲。「ロックミュージックの本質は“心のベストテン”にある」と語る、柴田隆浩(Vo、Gt)が今作に込めた想いを語った。「うまくいってないことが自分らしさ」と言う、柴田が今癒されているものは漫画と酒。最近ハマっている漫画についても聞いた。

本質は変わらないけど、伝え方で冒険

柴田隆浩

――「いいひとどまり」は、いつになく胸に響く骨太のロックになりましたね。

 これからの忘れらんねえよのモードとしては、胸にズンとくる「いいひとどまり」の方です。「スマートなんかなりたくない」は、今まで大切にして来たものの最新形で、「いいひとどまり」は、今まで行かなかったところまで、大きくジャンプして飛び込んだ感覚です。

――ライブでは「スマートなんかなりたくない」のほうが、確実に盛り上がりそうですが、お客さんが「いいひとどまり」を聴いてどういう反応をするか不安は?

 速い曲はいっぱい持っているし、それだけで行ける限界も正直感じていましたし。たぶん、速い曲を今後量産しも、新しい景色は見ることができないのではないかと思います。

 それに、やっぱり新しいことにトライしたいじゃないですか。同じことをやっていたって面白くないし。それに、そもそも「人とは違うことをしたい」とか、「みんなは良いと言ってるけど俺は絶対違うと思う」と言いたいから、バンドを始めたところもあるので。

 そういう中で、今の邦楽ロックのシーンでは、こういう聴かせるタイプの曲がなかなか聴こえて来なくて、でも自分自身は聴きたいと思っているから、それで作ったところもあります。

――昨年Zepp Tokyoでおこなった忘れらんねえよのライブでは、中盤で手紙を読んで最終的にみんなでしっとりした気分になるという演出がありましたね。面白さを感じつつも、ホロリとさせられた感じがあったので、きっとああいう役割りの曲になるのかも。

 そうですね。だから本質は、何も変わりません。たとえば速い曲でも、ただ速くて楽しいだけの曲はなくて。楽しいと仮に歌っていたとしても、本当はそうじゃなくて、その奥には寂しさや悲しみがある。俺の曲は、そういう曲ばかりだと思っています。

 「スマートなんかなりたくない」も速くて楽しい曲だけど、「楽しい」なんて歌ってなくて、世間一般に認められていない主人公が、高速の爆音に乗せて思いの丈を瞬発力で言いまくる歌ですよ。それと同じ主人公が、とりあえず立ち止まったとき、うまくいかないけどそれでも頑張りたいと思う気持ちが、にじみ溢れているのが「いいひとどまり」です。だから本質は変えずに、伝え方の部分で大冒険した曲ということだと思います。

――「いいひとどまり」も、結局はモテなくて愚痴っている歌だったりするし。

 それって要は俺自身のことで(笑)。愚痴るけど頑張りたいじゃないですか。好きな相手には、やっぱりかっこいいところを見せたいし、「俺がいるから大丈夫だよ」みたいな、とても怖くて言えない言葉を超ムリしてでも言いたい。そういう気持ちも、ちゃんと歌詞で表現したいと思いました。

――そういう気持ちを素直に表現した結果、こういうサウンドになったのですね。

 これまでは、爆音でBPM(テンポ)が速い曲で、「ウワ〜」という勢いで表現していました。でも今回は、言いたいことがあったし、やけくそじゃないから当然音も変わるし。言葉とメロディから“ずれたアレンジ”にはしたくなかったから、そこは意識しました。

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