マンガほど美しい片想いはない
――「スマートなんかなりたくない」の最後では<まだ僕の心は折れてない>と歌っていて、そこが全てですね。
折れまくっていますけどね(笑)。要は自分の気の持ちようで、何かを勝ち取りたいけど、自分の努力が足りなくて、クッソーみたいな。
――欲がないわけじゃないし、サボっているわけじゃないのに?
そのつもりですが、どうしてでしょうね(笑)? 分からないから、足りないところを考えてトライして、やり続けるしかない。その繰り返しを、どうせなら元気にやりたいわけで。「そろそろ上手く行っても良くないですか? 神様」と思うけど、でもそんな甘いものじゃないですよね。
でもそういうことって、決して俺だけのことじゃなくて、みんなもやっていることで、会社で働いている人もそうだろうし。それに、たとえ何か救いがあって、新しい世界に行けたとしても、行ったら行ったで、そこでもまた似たような悩みが待っていると思う。
――この2曲は、柴田さんの心の在りようが、すごく表れている曲ですね。そんな柴田さんにとって、今癒やしになっているものは?
マンガと酒です(笑)。一人で酒を飲みながらマンガを読んでいるときが最高です。
――家で?
マンガの新刊を買って、ささやかな居酒屋に行って、ビールを飲みながら読むという。
マンガは、最近は週刊ヤングマガジン(講談社)で連載している『ザ・ファブル』が最高です。あと、押切蓮介先生の、押切版『まんが道』みたいなやつで、『狭い世界のアイデンティティー』かな。腐った漫画界を打ち砕くみたいな、デフォルメされた世界ですが、それがズレていて超面白いです。
――マンガをよく買う?
毎週買っています。1日1冊は必ず買います。週刊漫画雑誌も買うし、よくコンビニで売っている、『食キング』とかの合本と言う分厚いやつも買うし。あと「芸能界のタブーを明かす!」みたいな、オムニバス形式の四コママンガのやつも大好きです(笑)。
――コンビニの雑誌コーナーの隅にある本ですね。
そうそう。すべての先生は、みなさんプライドを持って、読者のためを思って描いてるので、漫画家の先生はすべからく尊いです。
だって、俺みたいな飲み友だちも恋人もいないヤツの、一人飲みを支えてくれているわけですから。マンガは、誘っても断られることがないし。マンガは、ただひたすらに読んでいる俺を楽しませようとしてくれる。「何て美しい!」と思います。癒やしと言うより、もはや救いです!
――マンガにあたかも意志があるような口ぶりですが。
ありますよ。マンガ家の先生の意志が。それにマンガほど美しい片想いはありません。だって、描いている時点では、読者に対しては片想いですからね。
(取材・撮影=榑林史章)
◆忘れらんねえよとは 2008年に結成、2011年にアニメ『逆境無頼カイジ 破戒録篇』エンディングテーマ「CからはじまるABC」でCDデビュー。メンバーの脱退により、2016年から柴田隆浩(Vo、G)と梅津拓也(Ba)の2人で活動。ライブでは爆弾ジョニーのタイチ(Dr)などがサポートメンバーで参加する。柴田の不器用さやピュアさが、パンクロックを主体とした爽快なサウンドとマッチして若者を中心に人気を集め、ロックフェスなどでは欠かせない存在になっている。菅田将暉、二階堂ふみ、松井玲奈など、「忘れらんねえよファン」を公言する芸能人も多い。
撮り下ろし写真
作品情報
忘れらんねえよ Double A Sideシングル「いいひとどまり/スマートなんかなりたくない」 発売日:6月21日 初回限定盤(CD+DVD)1800円(税抜)UMCA-59052 ▽CD収録内容 ▽初回盤DVD収録内容 |
ライブ情報
▽「ツレ伝ツアー2017」
9月26日 東京・下北沢近松 w/THEラブ人間 |