sads加入のYUTAROがシーンを斬る、開拓者・清春が与えた影響とは
INTERVIEW

sads加入のYUTAROがシーンを斬る、開拓者・清春が与えた影響とは


記者:木村武雄

撮影:

掲載:17年06月12日

読了時間:約16分

異端児、ユータロー

――同じ事をしようと思った事はありますか?

 唾を吐いた事はないですけど、ある番組に出た時、“当て振り”(実際は楽器等の音を出さずに演奏する振りをする事)だったんですよ。でも機材はダミーを置くですよ。僕らは「機材を持ち込むからいらないです」と言って。それで持ち込んだのは凄く小さいマーシャルアンプ。カメラが回っている中でそのちっちゃいアンプでやりました。大音量なのに、小さなアンプという(笑)。最後は客席にそのアンプを蹴飛ばしたんですけど、メチャクチャ怒られましたね。“出禁”ですよ。でも、ちゃんと放送されたと思います。同番組でDragon Ashは、曲の途中でマイク逆さまに持って“口パクをあえてアピールして”問題になってましたね。ああいう「えっ!?」ってのは最近ないですよね。

――今のsadsで再現も?

 色々やり方は変わってくると思うんですけど、いま清春さんに呼ばれたという事は「何かやれ」という事だと思うんですよね。ライブで○○を出せとかはたぶん違うと思うけど(笑)。ライブハウスも“ゲス”もそうですけど「マナーを良くしよう」みたいな風潮はありますね。今はダークヒーローがいないんですよね。あれは“不倫ヒーロー”ですね。

――川谷さんはダークヒーローでしょうか?

 いや。でもそうかもしれない。

今のロックはきれいすぎる

――ロックは無秩序であるというところがあると思いますが。

 去年あたりに、ある音楽番組で、今をときめく色んなロックバンドが出ていたんです。みんなが、今だから「TVに出てロックを盛り上げたい」というようなことを言っていたんですけど、清春さんがTVに出始めた頃なんかは、TVに出るバンドは叩かれていました、「TVに出る奴はロックじゃない」と。でも今はみんなTVに出ている。昔、否定していた人達って結局なんだったのだろうと思いますが。でも考えると、そもそもTVに出るという本質的な理由が違っていて、清春さんがやっていたことは秩序のある民放番組で無秩序の瞬間をみせる手段でもあった気がしていて、そこが魅力でしたよね。TVとうまく付き合っていくのではなく、うまく利用していくというか。究極なところ、自然とそうなるべくしてなっていってる感じすらあります。

――ゼリ→時代は世間からの批難はありましたか?

 メチャクチャありましたよ。パンクバンドって「潰す」とかよく言われますし。ライブハウスをまわっていると、地元の色んなバンドから言われるものだから、念のためバットをもってツアーをまわっていましたよ。色々大変なんで(笑)

――当時はそういう話をよく聞きましたね。バンドマンには伝説がつきものというのもありました。

 確かに。世代的にそうかもしれないですね。先輩の世代には武闘派の人がいたりして。

――今、ロックはきれいになっていますか?

 きれいになっていますね。黒夢の「Spray」という曲は音が割れているんですよ。わざと音のレベルを突っ込みまくってそうしているんらしいんですけど。要は、コンビニとかで曲がかかった時に他の曲よりも音が割れているからその方が迫力もあって格好が良いという。聴くと実際に「おお!」ってなるんですよ。なによりもその企んでる感じのプロセスがいいですよね。今は色々規制もあるようで音量も制御されてるようなので、どの曲も均等に音量が定められているので当時ならではのことですが。

――普通でしたら音が割れたらアウトという感覚ですからね。

 あの頃はsadsと椎名林檎が音が大きかったですよね。ゼリ→も音を大きくしたくて、当時マスタリングエンジニアに「俺達も音を歪ませたいんですけど」って言ったら「歪んで格好が良い音楽と、悪い音楽があるんだよ」と言って俺達のは歪ませてくれなかったので、泣。なんてこともありました。

――結局マスタリングでは歪ませずに?

 それでも音はでかかったですけどね。

――“音圧戦争”の始まりの頃だったんですね。

 そうですね。音のレベルを上げまくったりして。今度は逆に極端にレベルが小さいのを出すとかね。どんだけボリュームを上げても聴こえないという(笑)。

――清春さんは「いつも時代の先を考えている」方ですか? ミュージシャンというよりも「芸術家」という肌なのでしょうか?

 読めないんですよね。「人間国宝」的な。これ、逆にディスってるみたいになっちゃうかな(笑)。清春さんにはいつも「カリスマ」という言葉はよく付いて回りますよね。手が届かない存在というか、次元が違う、影響力がある、といったところでしょうか。清春さんは日本の方ではないような印象すらあるんです。包み隠さずに思った事を発信して、普通では到底できない事を発言したり。

 レッチリ(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)のメンバーにいそうな感じですよね。ギタリストのジョン・フルシアンテはバンドを行ったり来たりしていた頃に「俺は◯◯を買うためにソロアルバムを出したんだ」と語った伝説もあったとか(笑)。またそれが普通に載っちゃうっていう、すごい事ですよね。角度は違えど、書く側も語る側も今は暗黙の境界線があって、そこを踏まえてメディアに出ている気がしているなかで、清春さんは気にしていないと思うので、リスクを厭わない芸術家なイメージですね。絶対に迎合しないし。さっきの話にも繋がりますが、スポットライトが当たっているところに「正義の味方ですよー!」な感じで現れないというか(笑)そこがいいですよね。

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