過去との挑戦、角松敏生 30年後の“今”に掲示するセルフカバー
INTERVIEW

角松敏生

過去との挑戦、30年後の“今”に掲示するセルフカバー


記者:村上順一

撮影:

掲載:17年06月12日

読了時間:約19分

ハイレゾだとリバーブの広がり方が違う

角松敏生

――音像面で、エコーのかかり具合に大きな変化を感じました。当時80年代というのは、なぜエコーを深くかける音像が流行ったのでしょうか?

 ボロを隠す意味や、ゴージャス感や厚さを出すという意味もあったと思います。でも、かけ過ぎだなと思いますけどね(笑)。自分のギターも今聴くと昔のは原音が小さいです。当時はライン録音でBOSSのオーバードライブとディメンションのエフェクターをかけてそのまま録ってました。

――当時のギター録音はアンプからのマイク録音ではなくライン録音が主流だったのでしょうか?

 そうですね。何でこんなに細い音なのかなと思ったら、この頃はラインで録っていたなと思い出しました。

――その時の録音は、やはりアナログマルチトラックだったのですか?

 そうです。その次の『LEGACY OF YOU』くらいから確かデジタルでした。

――当時のデジタルは現在のそれとは違いますか?

 そんなに良い音はしてなかったと思います。『SEA IS A LADY』の温かみはアナログテープのものかなと思います。

――それに加えて当時はアナログレコードでリリースしていたわけですよね?

 メインはアナログレコードでしたね。この頃はまだCDは信用されていませんでしたからね(笑)。次の『LEGACY OF YOU』くらいからCDをちゃんと作るようになったんです。マスタリング技術が向上していって、1998年くらいから本格的にCDを真面目に作るという傾向になっていきました。1989年に出した『REASONS FOR THOUSAND LOVERS』が僕のアナログ盤の最後なんです。その頃はまだCDとアナログと半々でしたね。

――前回インタビューのアナログレコードなどのお話もとても興味深かったです。

 レーザーターンテーブルとか値段が高いと思ったでしょ。

――今は、アナログレコードは普通のターンテーブルで聞かれているのですか?

 実はまだレーザーターンテーブルを買っていなくて(笑)。

――オーディオ機材は今、凄く値段が高いものがたくさんありますよね。

 高ければ良いって訳じゃなくて、「俺はこの音が好きなんだ」というのがいいんだよね。音って慣れだなと思います。こんな話があって、若手のバンドをあるエンジニアが手がけて、キッチリと仕上げたのにそのバンドのメンバーは「何か違う」と言っていたみたいで。

 それでなかなか答えが出なかったらしいんですけど、mp3に落としてみたら「これです、これ!」とバンドは言ったみたいで(笑)。バンドの子達はmp3音源が日頃親しんでいる音だから、96kHz/24bitの音を聴くと違和感を感じるんでしょうね。

――音が綺麗過ぎて。

 確かなことはわからないですけど(笑)。だから音は好みだなと思いました。

――私はハイレゾ音源でロックを聴いたりすることもありますが、ロックに関してはCD音源の音の方が好きだったりします。

 それこそアナログの方が好きだったり、ね。ものによりますよね。96kHz/24bitでレコーディングしているから48kHzとかダウンコンバートされると悪い音に聴こえます。最初にどういうスペックで作っているかによると思います。

――今回のレコーディングでは全て96kHz/24bitのレートで録音されたのですか?

 マスターは全部そうですね。ハイレゾやBlu-ray AUDIOに対応出来るようにという点もあります。レートを落とす事はいくらでも出来るけど、上げる事は出来ないですから。ここ数年はそうですね。

――ハイレゾで聴いてもらいたいという思いはありますか?

 自分が録音している音質で聴いてもらいたい、という思いはやっぱりあります。ダウンコンバートされることを想定して、マスタリングの時は16bitで聴いているし、その音質でOKを出していますから。でもハイレゾで聴くと腑に落ちますよね「これこれ!」って。「まあ、この音質で聴く人は少ないんだけどね」とか言ったりして(笑)。やっぱりハイレゾだとリバーブの広がり方が違います。音の解像度が違うからね。

――音源を様々な環境で聴かせて頂きましたが、どの再生環境であっても音が崩れないという印象がありました。やはりそこはかなり気をつかっている点なのでしょうか?

 そうですね。僕も様々な再生環境は試します。安物のイヤホンでモニタリングしたりね。

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